第10話 討伐と帰還
俺はドラゴンの注意を引くべくドラゴンを切りつけながら逆側へ移動する。
まずは祭理達の安全確保が優先だ。
ドラゴンが標的を俺に絞るが分かった。
祭理達が離れていくのが見えた。
「さぁ、始めようか」
ドラゴンが大きく口を開いたと思うと、青い炎を吐き出した。
回避するのは容易い。
そのままドラゴンの懐に潜り込み切りつける。
悲鳴をがあげたドラゴンが両翼を羽ばたかせ宙へ舞った。
「一度でも降りてきたのは失敗だったな」
俺はドラゴンに巻きつけておいた糸を使い、ドラゴンの腹綿を下から切り上げる。
血飛沫が舞い、もがくように身体をくねらせるドラゴンに、俺はさらに追撃を喰らわす。
今度は首元。
しかし硬い鱗に弾かれ、傷をつける事が出来なかった。
糸を使いさらに高く飛び上がると、宝石に覆われているかのような煌びやかな背中が見えた。
流石にちと硬いか……なら。
俺はやろうとしていた短刀での攻撃を諦め、地面へと帰還する。
ドラゴンが俺を睨みつけた。
明らかに怒っている。が、もう遅い。
張り巡らせた糸が、ドラゴンから自由を奪っている。
「終わりだ」
無数の糸がドラゴンに絡みつき、肉にくいこむ。
もがくほど深く切り刻まれる事に気づいたのか、もう動く体力が残っていないのか、ドラゴンは大人しくなり空中で静止した。
決着を察した祭理達が俺の方へ寄ってくる。
「おねぇちゃん! 大丈夫!?」
俺が頷くと、祭理はほっと胸を撫で下ろした。
その奥で柚花が苦笑いをしているのが見えた。
「あれって……一人で倒せるものなんだ……」
「ヤバすぎ」
羽生田姉妹にドン引きされてしまった。
コメント欄も大盛況である事は想像に難くない。
糸を操り、ドラゴンを地上に下ろす。
背中に生えている石は売ればかなりの金になるし、武器などの素材にもなる。
俺達はカバンに入る分の石を採取して、撤収する事にした。
帰り道、柚花のキラキラした視線を感じていたが、気にしないでおいた。
「と、言う事で! 色々あったけど何とか無事帰還できました! 花弁とA級モンスターの素材までゲットできて超ラッキー!」
〈姐御がヤバすぎた……〉
〈88888888888〉
〈神回でした〉
「祭理ちゃん、アイリスさん。今日はありがとう! またコラボしようねっ」
「こちらこそ! すっごい楽しかったです! ありがとうございました!」
みちるがカメラを俺に向けた。
俺はとりあえず手を振って挨拶。
みちるがカメラを戻すと、柚花と祭理も手を振った。
「それじゃみんなー。またね〜〜☆」
みちるが配信を切り、カメラを下ろした。
さぁ、後は帰るだけだ。
無事、柚花に俺の正体がバレなかった事に胸を撫で下ろす。
しかし、柚花からまさかの一言。
「じゃ! 打ち上げ行っちゃいますかー!」
「おー!」
「おー!」
祭理とみちるが拳を上げて賛同。
……まじかよ。
当然と言えば当然の流れなのだが、俺は気が滅入りそうになるのだった。
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