🍴第十五話🍴 一世一代の大勝負!
当日。
大きな会場に着いた。
今日はチョコレートボックスvsスリービージュの戦いなんだ!
お腹空いてきたぁ。
スタッフさんに控室へ案内された。
すると、ウチ達のテーブルに箱があった。
これはお菓子!?
チョコレートボックスの部屋にちょー有名高級店のちょー有名シェフが作った数量限定のお菓子をスタッフが運んでいるのを見た!
まさかウチ達にもくれる……!?
でもウチ達の控室のお菓子は、市販のお菓子!
まさかあれはチョコレートボックス用!?
ずるいぃ――――!
ウチも食べたいっ、グゥッ。
落差がひどすぎる!!
これは、区別では無く差別だっ!
ムキィィィ!
ウチはお菓子を全て口に放り込む。
こ、これはやけくそというものであり、決して!
食い意地では無いっ。
「時間だ……行くよっ!」
シャイニーの言葉を合図にウチ達は舞台袖に行く。
すごい……!
ウチは思わず目を細めた。
ステージがライトのせいで金ぴかぴかっ。
しかも、壁も派手な色だ。
ウチ達はここで踊るの!?
審査員席は、きれいな赤色の布がかけられている。
そして、触りたくなるフワフワッのイス。
ディス・イズ・ア・コウキュー!
すると、ゾロゾロと審査員が入って来た。
……あれ?
審査員の人達の目が赤い。
まるで、
「もしかして、審査員さん……魔法かけられてる?」
ハナの呟きにウチは、
「うん?」
と言った。
「あっ、いやっ……目が赤い妖精が最近多いから、魔法でもかけられてるのかなと思って……。ちょっとそう思っただけで……」
「でも、ありえるかもしれないわ」
そう言った後シャイニーは腕を組んで何やら考え始めた。
これは、話しかけたら怒られる~!
「これから対決を始めます」
司会者さんの声に、最後のチョコレートを口の中でなめ始めた。
「一回戦目はチョコレートボックスの”チョコレートクッキー”。二回戦目はスリービージュの”シエル”。三回戦目は各自自由です」
自由かぁ~。
三人で色々な曲を練習したけど、どの曲にするか後で考えないと。
ううううっ、チョコレートおいしい!
これが最後なんて、もったいない!
シャイニーにばれないように楽しもう!
「審査員七人中四人が手を上げた方がその回の勝者となります。それを三回行い、二回勝利した方が真の勝者となります」
えっ、ちょっと待って!
勝利とか勝者とかばっかりで、よく分からなかった。
ウチは、シャイニーの肩に手を置く。
「はぁー要は、審査員の票をたくさん集めれば良いのよ」
「ほっは、はりはほうっ(そっか、ありがとうっ)」
「絶対チョコレートなめてるでしょ!下品、やめなさいっ!!」
ば、ばれた――!
何でばれたんだ……。
シャイニー恐るべし!
「では一回戦目、先行スリービージュさん。よろしくお願いします」
「うっ~これで負けたら、ハナ達は……!」
ハナが青ざめて、震えている。
ウチは最後のチョコレートのかけらを飲み込んだ。
グッパイ、すいーとたいむ。
「大丈夫!たくさん練習したでしょ」
「そうだ、そうだ!チョコレートみたいに消えて無くなる訳じゃないんだからっ」
「まさかクラムお姉ちゃん…。さっきまでチョコレートなめてた?」
何で…………分かったんだ!
二人とも怖すぎる。
この二人は猛獣である、覚えておこう。
あっ、でもハナは天使!
「頑張るわよっ!」
「う、う、うんっ」
「行っくよ―――!」
ウチは声を張り上げながら、手を前に出す。
チョコレートみたいに甘―いすいーとな時間をお届けしちゃうぞ!
「スリー」
「「「ビージュッ!」」」
――♪♬
「♪チョコレートクッキーッ」
この曲は恋愛の曲でウチ達にはあまり向いていない。
でも、ウチ達は全力で歌って踊る。
「♪君とのスイートタイム」
ここで投げキスをするのがポイントッ!
シャイニーがひいていた記憶がどこかにあるけど、気にしないでおこうっ。
そして、決めポーズ!
そして、ウチ達は、ステージから降りた。
――♪テレレレーン
次はチョコレートボックスの番だ。
曲が始まった瞬間、チョコレートボックスの雰囲気が変わる。
キラキラのアイドルオーラ。
楽しそうな笑顔に完璧な振り付け。
声も可愛い。
でも、そこに個性は残っている。
これが………スーパーアイドル…。
曲はどんどん進んでいくのは短く感じた。
「では、チョコレートボックスの方が優れていると思った妖精は赤い札を、スリービージュの方が優れていると思った妖精は青い札を上げてください」
――バッ
「赤い札七名で、一回戦は、チョコレートボックスの勝利です!」
うっ、く、悔しい!
でも、チョコレートボックスの方がとっても上手だったから、これは完敗だ。
「次だよっ」
「「うんっ」」
シャイニーの言葉に、ウチとハナは強くうなずく。
「では、二回戦目です。先行、チョコレートボックスさん。よろしくお願いします」
よし、相手のダンスをよ~く見るぞ!
「♪シエ~ル~♪」
歌いだしからきれい。
まるで人魚のような歌声。
どんどん歌が進んでいく。
何だかフワフワした感触。
これに勝てる気がしないという思いが出て来た。
でも、弱気になっちゃダメ!
これはウチ達の曲!
――ジャーン
次は…ウチ達の番。
これで負けたら、ウチ達のアイドル人生が終わってしまう。
初めて心が震えた。
これが…緊張なのかな?
マイナス思考になる。
本当に大丈夫?
「自分を信じようよっ」
ハナがめずらしくさけぶ。
「あの…ハナがさけんだ!?あのハナが前向きになった!?別人!?」
ウチがハナのことを茶化すと、ハナがおろおろする。
「ハナのこと…お姉ちゃん達はどう思ってるの…!?あ゙ぁぁえっとぉ…」
「「フフフフ…!」」
少し緊張がほぐれた。
ウチがハナを茶化したから…。
「ウチが緊張を無くした?天才!千年、いや、無限大数年に一人の存在!」
「「それはない!」と思うよ」
二人につっこまれる。
何で天使のハナまで、ウッ。
でも、いつものウチ達らしくなってきた。
「もう一回やるよ」
「「うんっ」」
「スリー」
「「「ビージュッ!!」」」
――テレレーン
舞台に上がるととたんに不安が消えた。
「♪シエ~ル~♪」
そういえば、ここ、『ピエ~ロ~』って替え歌して、シャイニーに「全然似てないっ!あとふざけない!」と叱られたよね。
自然と笑みがこぼれる。
「♪初めて光った才能 それはチカチカ点滅していた♪」
アイドルを目指したきっかけは文化祭。
素人すぎて、お客さんが来なかった。
でも、ミルキーちゃん達がバックダーンを仕掛けたという嘘をついてくれたおかげで成功したんだよね!
「♪光が他の誰かに負けた気がして 不安になりうずくまって一日中泣いた」
オーディション。
あの時ウチだけが落ちてしまって、シャイニーが助けてくれた。
「♪最初から光る訳じゃない 原石をみがいて宝石になる」
ビート先生のレッスン。
おかげで、ちょっぴり有名になれた……はずっ。
「♪大丈夫 そう言われて嬉しかったよ」
シャイニーとハナ、そしてウチが合わさってスリービージュ。
大切な姉妹、仲間。
そうだ…!
ウチ達は一人じゃない!
「「「♪シエル シエル シエルがすみわたる」」
二人がウチを見つめる。
ニコッ。
満面の笑みに、ウチも笑う。
「「「♪まるでペンキをぬったような鮮やかな青空」」」
審査員の妖精の目がピンク色に変わった、そんな気がした。
「「「♪シエル 空広い 宝石のように輝くスター 三つの星 三つの宝石 スリービージュ!」」」
今までやってきた中で…。
一番楽しかった!
――ジャーンッ
「ありがとうございました。では、審査員の皆さん札を上げてください」
心の中で太鼓が鳴る。
「赤」
「青」
「赤」
「赤」
「青」
「青」
ここまでは同率一位。
あと一票。
これが赤だったら…。
いや、青だ!青!青!
「赤」
「「「えっ」」」
終わった…!?
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