🍴第十四話🍴 そんなの無理!

 土曜日。


――ピーンポ――ンッ。


 聞きなれないチャイムが鳴った。

 ウチは反射的にドアを開ける。

 まさか、宅急便!?

 だけどそこにいたのは、久しぶりのラル君の姿が!

 

「あ……やっほー…」


 ラル君がはにかむ。

 あれ、緊張しちゃってるのかな!?

 プププッ、面白い!


「ラル君久しぶり~。元気そうっ」

「うんっ。そう言えばフェアリーアイドル選手権でチョコレートボックスより順位が高かったんだって?すごいじゃん」

「えー―そう?デへへへッ」


 ここにシャイニーがいたら気持ち悪い、と言われるだろうなぁ。

 嫌なこと思いだしちゃった!

 頭から排除しないと。


「これっ!お祝いだよ」


 そう言ってもらったのは花束と……お菓子の詰め合わせ!!!

 O・K・A・S・I!

 最近シャイニーがお菓子くれないから。

 しかも、妖精世界フェアリーワールドで超絶ウルトラハイパー有名で、大人気のお菓子、ペッパーミルの詰め合わせ!


「ありがとうっ!!!!!」

「喜んでもらえてよかったよ。じゃあ、またね」


 そう言って、颯爽と帰っていった。

 もう帰っちゃうの!?

 もっと遊びたかった!

 空中鬼ごっことかやりたかったのに…。

 すると、怪しい妖影が、木の陰から飛び出してきた!

 わおっ!

 黒いサングラス、黒いマスク、黒い手袋。

 ザ・不審者!

 ただ想像する不審者は黒い短髪。

 だけど、この不審者らしき妖精は赤色の髪の毛、しかも長い!

 つまりこの妖精は不審者ではない!

 エヘンッ、ここまで分かるウチ、すごすぎる!!!


「あなたねぇ、わたくしのラル様を……」

「ラル君?どうした?」


 この妖精が何を言いたいのかサッパリ分からない。

 ウチは空を見上げる。

 あっ、ユニコーンだ!

 何の種類だったけ?


「わたくしのラル様を取って……!前も言ったじゃないっ!!明日、楽しみにしているのよ!」

「あぁ。ラル君に依存しているラビットさんか~。ストーカーしたら空中警察フライングポリスに捕まるよー」

「未成年よ、わたくしは!」

「犯罪おかしたら、えー―とどこかに連れて行かれる!はず!」


 ウチはそう言ったけれど、ラビットさんは完全無視!

 ラル君を追いかけて、行っちゃった。

 ところで『明日、楽しみにしているのよ!』と言っていたけれど、何が起こるんだろう。

 ウチはあくびを…ふわぁ……噛み殺しながら…ふわぁ……家に戻った。



☆🍴❀☆🍴❀



 日曜日。

 今ウチ達は事務所に来ている。

 今日こそビート先生クビになってるかな~!?


「あっ、そうそう。レッスン前に社長から呼び出せれているの」


 とシャイニー。


「ま、ま、まさか……ハナ達が出したアルバムの売れ行きが怪しい…とか?」

「そんな訳無いじゃん!」

「そうよ、弱気にならないの」


 涙目になっているハナをお姉ちゃん軍団が元気づける。


「着いたわよ」


 いつの間にか社長室についていたみたい。

 久しぶりだから、ワクワクする!


――コンコンッ。

「入ってぇ良ぉいぃぞぉ」


 もう慣れた個性的な声がする。

 と言うことは、怖いことじゃなさそう!

 

――ガチャッ。


 社長のおじさ……いや、お兄様の顔に加え、美少女の顔!

 ここ、この人達は!


「「「チョコレートボックス!?」」」


 嘘……!

 有名でウチでも知ってるリーダーのカレンさんまで!?

 何でここにいるの?


「あれ、チョコレートボックスの目は、水色のオレンジ色の目のはずなのに……。になってる…!」


 ハナ、良く知ってるなぁ。

 そして社長さんの目も赤い。

 カラーコンタクトかな!?

 こんな中年……お兄様がカラーコンタクトするんだ。

 意外すぎる!


「今日はぁお話ぃがぁあってぇここにぃ来てくれたぁそうじゃぁ」

「リーダーのカレンです」

「「「もちろん、知ってます!」」」

「なら話が速いわ。先日のフェアリーアイドル選手権あったじゃない?あなた達がもしかしらたお金で順位を操ったのかと思ったの……。もちろん、本気で疑っている訳では無いのだけど……」

「え!?」


 シャイニーの眉がピクリと動いた。

 ……これは怒ってる…!

 そしてウチの経験上、これは一瞬にして大きな雷が落ちる!

 でもシャイニーは、何も言わなかった。

 チョコレートボックスに対しての怒りを抑えて……良くできました!

 百点中四十点ぐらいかな~?


「三回勝負して!」

「「三回勝負!?」」

「それってどういうことですか!?」


 いつもは冷静なシャイニーでも、慌てている。

 ウチもよく分からない。


「三回勝負をして、あなた達が二回勝ったら負けを認めるわ。でも私達が勝ったら、訴えさせてもらうわね」


 これって断れない!?

 断ったら逃げてると言われそう。


「審査員はこちらで用意するわ」


 え―――!?

 そんなのアットー的に勝てないよ!


「ここで負けたら、芸能界も去るしかないわね」


 シャイニーの呟きに、ウチは息を飲む。

 芸能界の……猿!?

 ウチ達猿になっちゃうの!?


「芸能界からいなくなるということよ!バカ!」


 なぬぅ、バカですと!?

 そっちの方こそ、バカだよ!

 芸術評価、いちバカ!


「社長……断りましょう!」


 シャイニーが社長に訴える。

 確かに、断ってくれればバッチグー!

 ウチ達は最後の希望とばかりに社長を見つめる。

 ……でも。


「チョコレートボックスのお願いぃだからぁなぁ。断れないぞぉ」


 そそそ、そんな――――!

 ウチ達は天下のチョコレートボックスと戦うことになっちゃった!?





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