☆第十話☆ おこづかいの使い道!?
私、シャイニー・トゥインクル・ワールドは大きなため息をついた。
……今、クラムがお菓子を大食いしているのだ。
「新曲発売、お祝いだ――!ムシャムシャッ」
「いや、それはクラムが食べたいだけでしょ!?」
「い、いやぁ――。まあ、新曲めでたい、から…」
完全に嘘をついたような顔をして、クラムはカップケーキを手に取る。
「その買ったお菓子は自分のおこづかいで賄って下さい!」
「そ、そんな――!!」
言い忘れてた。
私達の家には、おこづかいがある。
月に少しだけお金を
クラムのお菓子代はきっとおこづかい二か月分くらいでしょうね。
「ハナ、払って――!我の天使ぃ~」
「ええ、えっと……分かったよ。印刷代はどうしようかな……」
ハナのお人よしが全開モードに入る。
私はやれやれと額に手を当てた。
ハナはいずれクラムのために、夢まで諦めそう……。
ここは姉がしっかり言っておこう!
「クラムやめなさい!ハナが可哀そう!」
「そんなことないよ~?っね、ハナ」
「そうやって話題振ったら、ハナは優しいので”うん”としか言いません!ハナが可哀そうでしょ!」
全く――。
「ところで、ハナはおこづかい、何に使ってるの?」
「ええ!?ま、まあ……その…………色々と」
ハナが答えになっていない返事をする。
「ハナが何に使ってるのかウチも気になる~!」
「えっ!?えっと、その、えっと・・・、あ、そう、その、クラムお姉ちゃんのおやつ代!…に、六割くらいを…」
「ク~ラ~ム~?」
「げっ。と、ととところでハナ、残りの四割は?」
クラムが目を泳がせる。
ハナって本当に優しいわよね。
どこかの誰かさんと違って。
「え、え、え、えっと、貯金…そ、そう、貯金、貯金…」
笑っているつもりなのか、左の口角だけくいっと上げた。
――ハナは、嘘をついている。
口を手で隠していたり、『貯金』という言葉を繰り返していたり…。
いつも正直なハナが嘘をついている。
これは、よっぽど知られたくないことなんだろう。
そう判断し、話題を変えることにした。
「クラム、ハナのおこずかいでお菓子を買ってもらっているっていうのはどういうこと?」
「ひ、ひえ~~~~~~~!」
☆🍴❀☆🍴❀
私は、クラムとハナを置いて、学校から帰ってきた。
「はやくスーパーに行かないと…、セールだし、買いたいものが買えなくなっちゃう。そのために早く帰ってきたんだから」
独り言をつぶやく。
………と。
床に、可愛くデコレーションされたノートが落ちている。
もう、全く、クラムね!
後で説教しなきゃ。
そう思い、ノートを拾うと…意外や意外。
『ハナ・ガーデン・ワールド』
という名前が書かれていた。
でも確かに、クラムがこ――んな可愛いノート作るわけが無い。
クラムが作るならお菓子のシールがベタベタとアンバランスに貼ってあるに違いない。
表紙を見ると、
『スーパーアイドルチョコレートボックスノート』
と書かれている。
チョコレートボックス――聞き覚えがある。
たしか、学園祭のアイドルステージで私達が踊った曲がチョコレートボックスの曲だった。
ハナがどうしてこんなノートを作っているんだろう。
気になる気持ちが心からあふれてくる。
他人のものを勝手に見てはいけない。
そんなことを分かっていながら、私は誘惑に負け、『スーパーアイドルチョコレートボックスノート』を開いた。
――「〇月△日、チョコレートボックスのコンサートに誘われ、行ってみました。すっごく輝いてました……!ハナはこれから、チョコレートボックスの活動を記録していきたいと思います」
水色の透き通った目の中に、オレンジ色がかすかに入っている、美しい目をした五人が踊っている写真が貼られている。
その横に、ハナの文字が書かれていた。
――「〇月◇日。チョコレートボックスのファーストシングル発売!」
――「▢月〇日。フェアリーアイドル選手権で、チョコレートボックスが一位!これでフェアリーワールド
きれいな文字が並べられている。
月日からすると、ハナが小学一年生の頃だ。
そんな昔から、チョコレートボックスが好きだったんだ……。
今まで好きだなんてこれっぽっちも気が付かなかった。
いつも一緒にいるのに……。
「あっ!」
私ははっきりと思いだす。
――「印刷代はどうしようかな……」
この言葉で、すぐに分かった。
ハナはおこづかいを写真印刷のために使っていたんだ。
頭の中でパズルのピースがはまる。
それなのに、クラムはお菓子だけのためにお金を使わせて……。
それなら私は、ハナの『好き』を応援するだけ……!
買い物が終わって、帰ってきたクラムに私は言い放った。
「ハナにお菓子を買わせるのは、禁止!そして今までやった罰で二日お菓子を食べるの、禁止!」
「え―――――!そ、そんな……ハナ―――ッ!」
クラムが泣き叫ぶ。
さすがに二日お菓子を抜いたら、クラムも反省してくれるはずだ。
私はハナにチョコレートボックスの決めポーズをやって見せる。
すると、驚いたような顔をして一瞬固まったけれど、すぐに手を合わせ『ありがとう』と口パクで返してくれた。
こうして、また、クラムとハナ、私ののどか…ではない日常が戻った。
「ほらまた!クラムはハナに頼らない!」
「だって―――!」
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