🍴第八話🍴 アイドル名は?

🍴第八話🍴 アイドル名は?

「「ふえっ!?」」

 ウチこと、クラム・パレット・ワールドは、変な声をあげた。


「はぁ、クラム、うるさい」


 だってだってだって!

 社長から手紙(メッセージ)が届いたんだよ!

 そりゃ変な声上げるって!

 しかも、ハナも変な声上げてた!

 何でハナは注意されないの!?


「ごめんね…。ハナ、うるさかったよね…」

「そんなことないわ。クラムの声がばかみたいに大きかっただけだから」

「え――――――!っで、どんな社長?食品会社の社長かな~」

「『レインボーミライ事務所』の社長よ!」


 なんだーっ。

 

「ふ――ん。見せてっ」

『シャイニー・トゥインクル・ワールド様、クラム・ペイント・ワールド様、ハナ・ガーデン・ワールド様へ

 初雪が降ってくる季節となりました。

 お元気でしょうか。

 レインボーミライ事務所社長の、ランダム・ピーク・シークレットです。』 


 肩が苦しいぃ~!

 最後の方だけ見ちゃえ!


『ということで、明日の午後三時に、社長室までお越し下さい。よろしくお願いします。』

「えぇっ!?どういうこと!?」


 ウチは、思わず叫ぶ。

 う、嘘~!

 社長とヒジキに会うってこと!?


「ウチ達と話し合う……。ウチ、解雇(クビ)!?」

「ひっ、ひっ、ひっ」

「はぁ―――。何言ってるの!?何も解雇しますなんて書いてないじゃない。ハナを脅かす行為、いい加減にやめなさい」


 えっ、脅かしてた?

 ハナは青ざめていた。

 我の天使、すまぬ!



☆🍴❀☆🍴❀



 ウチ達は今、見慣れない廊下を歩いている。

 シャイニーもハナも黙りこくっている。

 社長、怖い人かな~。

 シャイニーによると独特(ふしぎ)な妖精みたい。

 

「ここか……」


 ついにウチ達は社長室に来た。


――コンコンコン


 「ワールドです」

 「おぉ――、入っておくれぇ」


 あれ?

 声が独特……!?

 

――ガチャリッ


 シャイニーがドアを開けると目の前が真っ白になった。

 なになに!?

 その正体は、シャンデリアだ!

 黄金に輝いているシャンデリアは、ザ・高級!

 金色の額縁に入った絵画や、赤い絨毯なんかもある。

 絵画って聞くと、やっぱり、シャイニーのミミズの絵を思いだす…。

 グフフッ。

 

 「さ~、そこに腰かけてぇ」


 地方の言葉を無理やり、標準語にした感じ。

 プププッ、面白い。

 イスに座ると、ビックリ!

 雲パンみたいにフワフワしている。

 あぁ、雲パンが食べた~い。

 ジュルルッ。


「こら、クラム。ここでよだれを垂らさない。高級なものばかりだから、弁償できないのよ」


 ひ、ひえっ!

 よだれを垂らしたら、おやつ抜き、ましてや、食事抜きになっちゃう!?


「これをおぬしらに、見てもらいたぁいぃ」


 社長が差し出した封筒を、ペラリと開けた。

 

「『ホップステップジャンプ』!?」


 何やら、変な文字が書いてある。

 ホップステップジャンプってどういう意味?

 でも、それを聞いたら、シャイニーに笑われるかも!

 クッ……。

 ウチは歯を食いしばる。

 後でハナにこっそり聞こう。


「デビュー曲じゃぁよぉ」

「「「デビュー曲?」」」

「そうじゃぁ」


 デビューって何?

 ウチはハナの方をじっと見つめた。


「う―――ん。世間にハナ達のことを知ってもらうということ、かな」

「アイドルとして!?」


 ウチは、両目を二倍、いや二十倍に大きくした。

 二十倍じゃ目が大きすぎるけど、まあいいや。

 本当に!?

 ウチ達がアイドルになれるの!?

 感激!

 優しく微笑む社長が季節外れのサンタさんに見える。

 幸せを運んでくれたのに加え、髭ボウボウだし!


「ありがとうございます!」

「ありがとう!で、デビルはいつ?」

「デビルとはぁ?」

「デビューよ」

「そうそう、デビュー!いつなの?」

「三か月後じゃぁ。おぬしらはCMが素晴らぁしぃかったからのぉ。これぐらいはいけるのじゃないかなぁとビートと話し合ったのじゃぁよぉ」


 三か月か……。

 長いようで短い。

 はっ!三と言えば、三分で出来るインスタントカ―メン!!

 と~っても美味しいんだよね~。



「三か月って、インスタントカ―メン何個作れるかな~」

「三分で一つでしょ。一時間で二十個。一日二十四時間だから、四百八十個。一か月で、約一万五千四百個。その三倍は……って違う!インスタントラーメンを買うお金なんて、家にはありません!」

「そ、そんなぁ――!」


 あんなに細かく計算してくれてるから、買ってくれると思ったのに!

 ムスゥッ。

 期待して損した!


「あ、あの、ありがとうございます……」

「いやいや事務所として早くデビューしてもらいたぁいんじゃぁ。そんでな」

「?」


 ウチは頭の上にハテナマークを浮かべた。

 何を言うのかな?


「グループ名、つまり、三人のぉアイドル名を決めてぇ欲しいのじゃぁよぉ」

「「「アイドル名!?」」」

「インスタントカーメンとかどう!?」 

「そ、それはちょっと、遠慮しよう,かな…」

「そっ、そんな~!」


 ハ、ハナ~っ。

 ウチが、悲しみの海に溺れている中、社長さんの、


「二週間後にぃ、社長室にぃアイドル名とぉ……リーダーを報告しに来てくれぇ」


 と言う声が聞こえた。



☆🍴❀☆🍴❀




――カン、カン、カン

「これから、家族会議を始めます」


 シャイニーが、真剣な面持ちで言う。

 今日は、アイドル名を決める会議なのだ!

 ついでにリーダーも決める予定。

 まずは、雰囲気作りから始めよう!


「はい、シャイニー大魔王!」

「そこ、ふざけない!」


 ひえっ、雰囲気作りが…。

 ウチは、口をへの字に曲げる。


「まず、どんな意味合いのグループ名にするかを決めます。じゃあ、ハナ」

「えっと、ハナは…。『三人で』っていう意味合いを入れたいかな…」

「いいね!トリプルジューチュとか」

――ジトー


 シャイニーの視線が痛(こわ)いっ!


「クラムは?」

「ウチは、『輝く』、みたいな?輝くお菓子…ありかも!」

「クラムは何故お菓子につなげるの……。でも輝くはありね」


 そんな話を長々と続けていたら、ハナがポツリと言った。


「宝石……とかはどう?」


 宝石か……。

 見つけて売ったら、お菓子どれだけ買えるかな?

 グフフッ。


「宝石は……ジュエルとか、ビージュとか言うわね」

「いい!」


 ウチはすぐさま手をたたいた。

 シャイニーがすごいんじゃないけど。

 

「スリージュエル、とかは?」

「う―――ん。何かしっくりこないわね」

「え―――――!」


 ウチの提案に否定するなんて……!

 許せない!

 シャイニーが姉だからと言って、否定するなんて良くないよ!

 グヌヌヌッ。


「それなら……」


 ハナがつぶやく。

 姉妹だからか、言いたいことが分かる気がした。

 ウチも、あの名前いいと思う。

 アイドル名は……。


「「「スリービージュ!!!」」」


 こうして、ウチ達のアイドル名は決定した。 

 三人で一つ。

 三人で宝石のように輝く。

 すっごく良い!


「リーダーは誰にする……?」

「はーい、ウチ!」

「クラム、リーダーってめんどくさいのよ?」

「ゲッ」


 じゃあ、ハナ?

 いや、でもそんなイヤな仕事を女神に押し付けるわけには行かない。

 

「シャイニーで!」

「まぁ、良いわよ」


 ウチ達のアイドル人生はまだまだ始まったばかりだった。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る