☆第七話☆ 初仕事!

 入所から三か月。

 私、シャイニー・トゥインクル・ワールドは、いつも通り、ハードなレッスンを受けていた。

 …けれど。

 次の瞬間、いつも通りの日常が崩れ落ちた。


「あなた達に仕事のオーディションが来ました」


 ビート先生が眼鏡をくいっと上げながら言う。 

 ………はっ!?

 

「ヤッッッッッタ―――――――!」

「…ちょっと待ってください。どういうことですか?簡潔すぎます」

――コクコクコクコクッ


 私は眉を寄せた。

 ハナも同意してくれている。

 うん、ビート先生、分からなすぎる。

 とても分かりにくい。

 

「新作のCM出演するためのオーディションに応募しました。書類審査は通ったので、実技審査は十日後です。詳しいことはまた後日伝えます」

「ワーッイ!ジューチュだーい好き!これがデビュー作ウチ幸運!ジューチュ何味?何味?かな、かな~」

「え~っとですね。味です」

「えっ!?もづく味、美味しいのかな…」

「不味そうですね」


 うん。

 私もあんまり美味しそうとは思わない。


 「あと、出演はまだ決まってません!」

 「そ、そんな~」

 「合格すればデビュー作、だよ?」


 それにしても、オーディションか。

 頑張らないと!



 ☆🍴❀☆🍴❀



 もづく味は、ビート先生の冗談らしく、味のジューチュのデレビCMのオーディションらしい。

 オーディションは十日後。

 それに向けて、ビート先生のスペシャルハードレッスンが行われる。

 ……何と言えば良いか…。

 笑顔の作り方、現場での活動の仕方をレッスンするらしい。

 私達がデレビに出れる可能性がある……。

 嬉しい!!

 私は鏡に向かって、にこりとほほえんだ。



☆🍴❀☆🍴❀



 

「いたっ!」


 クラムの叫び声が聞こえた。

 もう、うるさい。

 オーディションなのに!

 ……そう、今日はデレビCМのオーディション。

 クラムは、今、足をぶつけた。

 ああ~~~。

 アホだね。

 うん。


「クラム、ここらへんの物、高いからやめて。弁償出来ない」

「ええ――!ウチの心配は~!ヒドイ―――!!」

「クラムお姉ちゃん……大丈夫?」

「ああ!ハナ~!優しい、我の天使ー!」

「はいはい、どうせ私は悪魔ですよ~」


 クラム、むかつく!

 私は唇をかんだ。

 いけない、いけない。

 今日はオーディションなんだから!

 

「そろそろ衣装に着替えて下さい」

「は、はい!」

 


☆🍴❀☆🍴❀



「よ~い、スタート」

――カチーン


 オーディションが始まった。

 三人一組で、それぞれセリフを言う。

 審査員の目線を感じる。


「新発売のオレンシジューチュ」

「「「かんぱ~いっ」」」


 私は、グラスを持ちあげる。

 すると、


――カ―ン


 きれいな音がオーディションに響き渡った。

 私は、ジューチュを一気に飲みほして、口を開く。


「美味し~い!まろやかさと酸っぱさが癖になる!」

「お次はあなたですっ」

「「「夕日飲料、オレンシジューチュ」」」


 全部、セリフを言いきった。


「カットォ!では席にお座りください」

「「「はいっ」」」


「では、次の妖精、位置についてください」

――カチンッ



☆🍴❀☆🍴❀



 一週間後。

 私達姉妹は、ピアノちゃんの家にいる。

 理由は…。

 

「すっご~い!これがデレビ!デ・レ・ビ!こんな感じなんだ~!シャイニー、買おうよ~」

「えっと、それは、無理だと思う、よ」

「ハ、ハナ~!ウチの唯一の味方が~!」

「でも、クラム。ハナの言う通り。デレビは、最新空中投影機能を使っているから、絶対無理!高すぎる!」

「うわ~ん!あと、ワッツサイシンクウチュウトウエイキノー?」


 今日は、私達のCMを見に来た。

 お察しの通り、私達は、オーディションに受かったの!

 

「えっと、前に調べたんだけど、空中投影機能というのは、映像を空中に移す機能のことで…」

「あ、始まりそう!」


 あ、あちゃあ。

 クラム、ぜっっったいに聞いてない。

 ハナが可哀そう…。


――♪チャラララン

「新発売のオレンシジューチュ」

「「「かんぱ~いっ」」」

――カーン


 私達が、デレビに映っている…。

 口元が緩んでくる。


――ゴクゴクッ

「美味し~い!まろやかさと酸っぱさが癖になる!」

「お次はあなたですっ」

「「「夕日飲料、オレンシジューチュ」」」


 私達のCMが終わり、次のCMが流れ出す。


「す、すごい…。ハナ達が映ってる…」

「クラムちゃん、すごいね」

「うぅぅぅ、やっぱりミルキーちゃんは優し~い!大好き~!鯛~!鯛食べたい…ジュルッ」

「う~ん、なぜ鯛が出てくるの?でも、お祝いごとに出てくる料理だからおかしくはないけど…」

「でしょっ!?」

「でもごはんには出せないわね」

「ガ、ガーン。こうやってアピールしてたら出してくれるかと思ったのに~」

「ハナ…大丈夫?いっつもこんな感じなの?」

「うん。でも大丈夫だよ、ありがとう」


 ハナ、いつも迷惑かけてごめんね…。



☆🍴❀☆🍴❀



「あっ、つうしー鳥」


 クラムの声に、下校中の私達は、空を向く。

 真珠色の丸っこい鳥・つうしー鳥だ。

 手乗りサイズの、可愛い鳥で、私達への手紙を届けてくれる。

 地球で言う、郵便屋さん。


「はい、ありがとう。えっと……え!?」

 

 手紙を見て、私は目を見開く。

 

「どうした?毒でも入ってた?手紙書いた人、誰?」

「社長よ、社長!!」

「「ふぇっ!?」」

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