☆第四話☆ いざ、オーディション!?

 夏休みが始まって、少し経った八月。


「「オーディション?」」


 私こと、シャイニー・トゥインクル・ワールドと、ハナは、声をあげた。


「そうっ!」


 クラムが見せたチラシには、『事務所所属、男女混合アイドルオーディション”レインボーチャレンジ”』と書いてある。


「ウチ、これやりたい!シャイ二―、いい?」


 チラシに書いてあることにざっと目を通す。

 ”レインボーチャレンジ”は、五社合同のオーディションみたい。

 書類審査、面接、実技審査の三回の審査の結果、上位十名がその五社の中からどこか一社に所属できる。

 あの、とても有名な事務所、『レインボーミライ事務所』が主催らしい。


「いいんじゃない?参加費も無料みたいだし。私も参加しようかしら」

「わーいっ!」

「ハ、ハナも参加したい…」


  ハナも、アイドルステージを終えて、少し成長したわね。

  前は、積極的に意見なんて言わなかったのに。


「よしっ!やると決めたら即やる!有言失行!」

「有言実行ですー」

「グヌヌッ」

「お姉ちゃん達…」



☆🍴❀☆🍴❀



 第一次選考は、書類審査。

 写真を撮り、必要事項を記入する。

 第一次選考に落ちたら、第二次選考にすら進めない。

 貧乏な私達には、写真撮影代は、痛い出費…。

 で・も、クラスメイトの中に、『何も使わず写真を撮れる』と言う魔法を持っている妖精がいた。

 そのクラスメイトに、せがんでせがんでせがんで(半ば脅しで)、写真を撮ってもらった。

 両親が生きていた時以来の写真撮影に、クラムがどれほど浮かれていた事か…。

 前身、上半身、羽を撮影した。

 記入欄には、『使える魔法』と言う欄もあった。

 なんだか、


「妖精!」


 と言う感じがする。

 書類を郵送するためのお金はかかるけど、私は、文句を言いたくなるのをグッとこらえた。

 


☆🍴❀☆🍴❀



 第一次選考は、三人とも、見事合格!

 ハナは、合格書類を、涙ぐみながら見ていた。

 私も少し、ウルッと来ちゃった。

 ただ、クラムの、


「まあ、ウチなら第一次選考は通ると思ったけど。フフッ」


 と言う言葉に感動が薄れてしまったけれど。

 第二次選考は、面接。

 ユニコーントレインに乗って、面接会場へ向かう。

 私の魔法で行こうかと提案したら、クラムに


「ダメ、絶対!怖すぎる!却下!」


 と言われた。

 くっ、意外な出費。

 クラムのおかずを一品減らさなきゃ。

 駅に着くと、太陽がギラギラと、私達を照らした。

 ホームを出て、私達は、面接会場を目指して飛ぶ。


「あ、暑い~」


 ぼやいたクラムを私はにらみつける。


「ネッククーラーとか、ハンディーファンとか、高くて手が届かないんだからしょうがないでしょ!」

「えええ――――――!」


 クラムの不満を無視した。

 まったく~。

 我慢強さが全く無い。

 芸能界に、向いてないわね。


「会場どっちらへん?」

「ええっとね……」


 私は手作りの地図を見下ろす。


「この道をまっすぐ飛んでいけば着くわよ」

「あれ?何か裏側に描いてあるっ?」


 尋ねられたから返事をしたのに、無視!?

 私はため息をついた。

 と思っていたら、クラムが私の地図をひったくる。


「ちょっ!勝手に奪わないで!泥棒!」

「あっ…絵が描いてある…………ってちょー下手!ププププププププププププププププププププププッ」


 そう、私は壊滅的に絵が下手。

 中学校の成績は、図工以外は良い。

 図工の評価は五段階評価で、イチ!

 逆になりにくい、一!

 鉛筆を描けば、みみずって言われる。

 眼鏡を描いてもみみず、テレビを描いてもみみず!


「だ・か・ら!そんなにジロジロ見ないでって前、言ったでしょっ」


 恥ずかしさで耳が真っ赤になり、怒鳴った。


「みみず、みみず、みみず、みみず!」

「あ、でも、何でも完璧にできるお姉ちゃんに、欠点があると、ハナ、ちょっと安心する…」


 ハナがフォローしてくれる。

 ハナが誠意で言ってくれているのは分かるけれど、バカにされているような気がしてしまう。

 私は情けなくなり、飛びながらハナに一礼した。


「あ、見えてきたよ」

「あ、本当だ。イッエ~イ!」


 クラムは、感情の上下が激しい。

 私が頑張って書いた地図をブンブン振り回して喜んでいる。

 相手をしているこっちの身にもなってほしい。

 はぁ。

 面接会場の入り、ハンカチで汗を拭くと、すぐに会場に案内された。


「では、四十六番、コリー・ドッグ・ケーさん」

「はい」


 コリーと呼ばれた少女が、仕切られた壁の向こうに入って行く。

 クラムは、偶然隣に座った男の子、ラル・ルビー・アールさんと、仲良く喋っている。


「ウチさぁ……」

「え、そうなんだ!」


 詳しい会話は分からないけれど、二人とも楽しそうに喋っている。

 何で、面接の前に、そんな気楽でいられるの…。

 本日二度目の、はぁ。


「ウチの姉、めちゃくちゃ口うるさいんだよ~」

「そうそう!僕のお兄ちゃんもね…」


 すごく意気投合している。

 でも、お望みのようだから、後で怒ってあげよう。

 ところで、ハナは大丈夫だろうか。

 きっと、ハナの事だから…。

 あ、やっぱり。


――ガタガタガタガタガタガタッ


 まさしく、洗濯機の振動みたいだ。

 表情を一切変えない。

 とても緊張しているのが、伝わってくる。


――ギロッ


 ロングヘア―で、目つきの鋭い、気の強そうな女の子が、クラムを睨んでいる。

 きっと、クラムがうるさかったんだ。


「クラム、静かにしなさ~い」


 小声で言う。

 クラムは


「はーい」


 と答え、小さな声でわたしの文句をラルさんに、笑顔で言い始めた。

 クラム、今日のおやつ、抜きね。

 

「次は四十七番、ハナ・ガーデン・ワールドさん」

「ひゃいっ」

 

 

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