むしめがね
次の日曜日。僕はウッドデッキのテーブルでおやつを食べていた。ちょうどおやつを食べ始めたときにチャイムが鳴って、お母さんは応対に出ていったまま中々戻ってこない。多分おしゃべりの向かいの奥さんだろう。
今日のおやつは真っ黄色のカステラだ。僕は、いつもならフォークで上手に切ってから口に運ぶのに、ちょっと魔が差して、手で直接持ってかぶりついてみた。一気に口に入って、いつもより美味しく感じる。
その時、ぽろりとカステラのかけらが床に落ちた。僕は慌てて拾おうとしたけれど、ふと家の中じゃないからいいか、と思いなおした。
お母さんが戻ってくる気配はない。
僕はまた、大きく口を開けて頬張った。美味しい~。
「あれ?」
さっき落としたかけらがなくなっているのに気づいて、僕はきょろきょろ足元を見た。かけらは、落とした場所からかなり移動している。よく見ると、アリが数匹でかけらを運んでいる。その数匹以外にも、列になったアリが移動している。
僕はこの間買ってもらったばかりのむしめがねを持ってきた。行列のアリたちはみんな小さなかけらを持っている。
「何だろう?」
一匹だけ、何か違うものを持ったアリがいる。それはきらり光っていて、何なのかはわからない。
僕はその光るものを持ったアリを、むしめがねで見ながら追いかけた。
列はどんどん進む。僕もずんずん追いかける。
行列はウッドデッキを下りて庭の花壇の方へ進んでいく。そして小さな穴のところまでついていった。列はその穴の中へ吸い込まれていく。
僕はさっきの光るものを持ったアリが巣穴に近づくのをじっと見つめた。
すると、そのアリが巣穴に入る瞬間。
ぴかーっと眩しい光を放った。
「あっ‼」
僕は思わず目を閉じた。
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