むしめがねでのぞいてみたら
楠秋生
回転寿司
日曜日、僕はおばあちゃんとお母さんと三人で回転寿司にやってきた。初めての回るお寿司にドキドキする。いつもは、不衛生だからと絶対に連れてきてくれなかった。
でも今日は、田舎から出てきたおばあちゃんが連れてきてくれたんだ。
「もっとちゃんとしたお店にした方がいいのに」
ぶつぶつ言いながらも、お母さんはおしゅうとめさんのおばあちゃんには文句が言えない。三年生にもなって回転寿司を経験していないのはクラスで僕だけだったから、ものすごくうれしい。でもそんな様子は見せない。後でお母さんに何を言われるかわからないから。
ぐるぐるお皿が回ってくる。動画で見たことはあったけど、本当にやってくるんだ。面白い。僕は目の前にきたマグロに手を伸ばした。
「おばあちゃんもいる?」
隣にいるおばあちゃんに聞いて、一緒にとってあげる。お母さんも自分でマグロをとった。
それから次にブリ、タイと順番にとっていく。目の前に出されたお寿司と違って、自分でとったお寿司はものすごく美味しい。
次に僕の目にとまったのは、からあげ。お寿司なのにお肉が乗ってるなんて不思議だ。僕は興味にかられて手を伸ばしたけど、お母さんに止められてしまった。
「そうた。そんなのは邪道よ。お寿司なんだから、ちゃんとお刺身を食べないと」
僕が黙って手を引っ込めると、おばあちゃんが援護してくれた。
「ええがいね。好きなもん取らせてやったら」
だけどそのときには、からあげはもう流れていってしまった。
せっかく回転寿司にきても、やっぱり同じなんだな、と思う。お母さんはいつもそうだ。僕に一番いいものをくれるけど、選ばせてはくれない。僕は心の中でため息をついて、お母さんが納得しそうなお皿を選んでとった。
「美味しいかい? さっきのはもう取らなくてもいいのかい?」
おばあちゃんが途中で聞いてくれたけど、僕はだいじょうぶだと答えた。
「お魚、美味しいよ」
その後はおばあちゃんも何も言わなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます