第10話 タリアとの出会い

平日はさすがに翌日仕事があるために疲れているので異世界に行くことは避けた努。


「あの女性騎士の件もあるしな」


努はアロンダイトのお陰で手に入ったお金にはとりあえずローンを払う以外の事では手につけていない。特に物欲もない努は買いたい物とかがなくその為にいつか使う為に貯金している。


そして今は金曜日の仕事終わり。


「先輩!今日も飲みに行きますか!」

「田中。行くだろ?」


先週と同じ同僚と後輩に飲みに誘われる努。


「ああ・・・いや、今日はやめておくよ。先週の失敗もあるからな・・・」


実際は翌日の土曜日に異世界に行くため戦闘を考慮して飲み会を控えた。


努は寄り道せずに家へと帰り晩御飯やお風呂などするべき事を済ませて翌日の土曜日の朝早くから異世界に行くため速くに就寝する事に。

*****

翌日となり朝早くに起床した努は異世界へ行く準備をした。


「よし!行くか!・・・一応あの洞窟からは離れた場所に出るようにしよう」


転移する地点をイメージして異世界に転移した。


そこは努がイメージした通りに洞窟の近くの森の中だった。


「・・・まあ、さすがに1週間経ったからな。いる訳ないな・・・」


とりあえず努は前回とは違う街を訪れるために別の王都の方向へ歩いていく。


「前回は結構死にかけたからな。今回は大人しくしとくか」


山賊のサーズを思い浮かべた努。故に今回は異世界を楽しむ事を目的とした。


そう決意したその時に努の決意を吹き飛ばす出会いがあった。


「きゃあ!?」


それは女の子の悲鳴だった。さすがにそんな悲鳴を聞けば楽しむ事が目的の努と言えども無視は出来なかった。


ダッ!


身体を強化して悲鳴が聞こえた方へ走っていく。すると、女の子が骨のアンデット数体に囲われているのを発見した。


「|凍結球(フリーズボール)!」


努は地球で考えていた魔法をアンデットに放つ。


「「「カタカタ・・・カタ・・・」」」


凍結球フリーズボールに当たったアンデットはそのまま凍り砕け散った。


「う〜ん・・・砕けたか・・・魔素を多くし過ぎたか?」


努の放った凍結球フリーズボールは本来ならば凍ったままとなり言わば捕縛用の魔法。しかし魔素を込め過ぎたのか凍った後に砕けてしまった。


「これは・・・水魔法の高等技術・・・氷魔法・・・」


どうやら氷魔法は水魔法の高等技術に分類されるようだ。そんな事を呟いた努が助けた女の子が努に気付き頭を下げた。


「あ!?あの!?助けていただいてありがとうございました!?」

「ああ、いやいや。俺も魔法のいい練習になったから。気にするな」

「いえ!そういう訳にはいきません!命を助けていただいたのに何のお礼もしないなんて死んだ両親に顔負けできません!」

「お、おう・・・そうか・・・」


そう興奮した様子で努に詰め寄る女の子。歳の頃は大学生ほどで非常に美人。地球ではモデルや女優などをしていてもおかしくない程の美人だった。


その勢いと顔の近さに若干引いてしまう努。その様子に気がついた女の子は顔を赤くして努から離れる。


「す!?すいません!?」

「え〜と・・・俺の名前は田中努だ。君は?」

「わ、私はタリア・マンダインです。改めて助けていただいてありがとうございました」


お互いに自己紹介を済ませた2人。結局タリアのお礼がしたいという意思の強さに抗えず努はタリアについて行くことに。ちなみに骨のアンデットは下級アンデットのスケルトンらしい。スケルトンの魂石は努が今度は譲らずにタリアに渡した。


「私には・・・2人の妹がいるんですけど・・・私が魂石を売って生活してるんです・・・でも私・・・魔法も満足に扱えないし・・・スケルトンにも負けるほどに弱くて・・・」


タリアの案内のもと街に向かっている道中に努に悩みを打ち明けるタリア。


「・・・だったら他に仕事を探したほうがいいんじゃないのか?妹さんたちは仕事は?」

「他の仕事をしたいんですけど・・・で無理なんです・・・それに次女は病気がちで激しい運動が出来ないし三女はまだ8歳ですから・・・」

「そうか・・・ちなみに君の年齢は?」

「私は23歳です」


そう聞き23歳という年齢でこんな苦労していることに同情心を抱く努。そして長女のタリアが生計を立てている現状を聞き両親が死んだか逃げたかと考える努。


道中で出会ったアンデットを努が倒しながら進む。ちなみにその際の魂石はさすがにタリアが受け取りを強く拒否したため努の懐へ。


「あ!見えてきました!あそこがババルス領ヒルイック街になります!」

「へえ~・・・あれが・・・」


パッと見た印象はメルト領都よりも賑わっていない街。良い言い方をすれば落ち着いている静かな街といった感じ。


「こちらです。まずは魂石屋に向かいましょう」


案内のもと魂石屋に向かい魂石を売却する。そしてタリアの案内のもとタリアたちの家に行くことに。街の大通りから逸れ裏通りに入っていく。何度か曲がるとそこは人が倒れていたりやせ細っているお爺さんがいたり。いわゆるスラム街のような場所。


「ここが私たちの家です・・・すいません・・・ボロボロで・・・」

「・・・いや全然・・・」


タリアに案内された場所が確かに少しの衝撃で壊れそうなほどのボロボロ具合だった。その家にタリアと2人の妹も住んでいることを思い浮かべ衝撃を受ける努。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る