第9話 勘違いからの戦闘
山賊の頭のサーズ・ノックを打倒した努。死んでいないことを確認して硬い石をイメージして牢屋を作成。その中に収容した。
「・・・中々な出来栄えか?・・・一応剣を使えないようにしておこう・・・」
努は剣が使えないようにマグマをイメージして7本の剣を溶かした。
「あとはここに誰かを連れてくれば「貴様がサーズ・ノックだな!!」・・・え?」
振り返る努。そこには騎士のような鎧を着た女性が存在した。どうやらこの女性は努をサーズと勘違いしているようだ。
「いやいや違いますよ。サーズはこっちです。俺は「嘘をつくな!」・・・ええ?」
自己紹介をしようとした努。しかしそれをまたしても女性が努の言葉を遮ることで自己紹介を封じられた。
「お前がサーズ・ノックなのはお前が腰に差す2本の剣が物語っている!」
努は確かに腰に2本の剣を差していた。
「貴様が腰に差す剣と同じものが散らばっているのが動かぬ証拠だ!覚悟しろ!サーズ・ノック!」
「いや、だから俺は「問答無用!」おい!」
キン!
女性は努をサーズと勘違いしたまま腰に差す剣を抜き努を攻撃する。さすがの努も2本の剣を抜き二刀流となり女性と打ち合う。
「く!?これは!?」
キン!キン!
数合打ち合うだけでサーズの剣術を習得した今の努には女性騎士の強さが理解できた。そしてこのままでは7本の剣を浮かべるいわば七刀流の本来のサーズの剣術を繰り出したところで敗れることも理解できた。
女性騎士が振り下ろす剣を一本の剣で防ぎもう一本の剣で斬りつけに行くも完璧に見極めたようにギリギリで回避する女性騎士。努は攻勢に出させないために2本の剣で徹底的に攻撃。しかしそれをすべて一本の剣でいなし回避し続ける女性騎士。それは完全に努の剣術を見切られている証でもあった。
「悪を成敗するために私は騎士になった!だからあなたのような多くの人を悲しませるような悪党を私は許さない!ここで死になさい!ハア!」
完全にサーズと間違えている女性騎士。さっきサーズを倒し正義を行ったはずの努は悪党呼ばわりされ年甲斐もなくキレた。
「・・・だから・・・俺は・・・」
努に振るわれる剣。しかし努は防御もせず回避もしない。勝ちを確信した女性騎士。しかしそれが油断だった。
ガシッ!
「な!?なにこれ!?」
突然黒いなにかが女性騎士を縛る。サーズの事前情報として剣を浮かせるセイバーしかやってこないと知らされていた女性騎士は勝ちを確信したこともあり対応が遅れてしまった。
「それは
「ギャアアア!?」
強い女性騎士用に少し強めに調整した努。そこには怒りも含まれていた。しかしなんとか女性騎士は気絶をせずに意識を保てていた。
「・・・俺はサーズじゃない・・・田中努、サラリーマンだ・・・」
そう言って転移にて日本に帰還した努。
*****
帰還した努は少し罪悪感が出てきた。
「・・・いくら間違われたからと言ってあれはやり過ぎたか?・・・だけど死んでいた可能性もあったことを考えればあれぐらい妥当か?・・・とりあえず今日はもう異世界にはいかないようにしよう・・・買い物でも行くか・・・」
努は念のために今日はこれ以上異世界に行くのを止めることにし夜ご飯の買い物に出かけた。
*****
一方努に縛られた女性騎士。
「・・・あの男・・・転移の魔法を・・・」
努がいた場所を見つめる女性騎士。すると外にいた山賊を縛り連行していた女性騎士の部下がやってきた。
「おお!さすがは
その部下は牢屋に入れられたサーズを見てそう言葉を発した。
「・・・こいつがサーズなの?・・・」
「?はい。こちらの手配書とも一致しますので」
そう言ってキーンへリアが見せられたのは確かに牢屋に入っている男の顔だった。
「・・・じゃあ私は・・・別人を殺しそうに・・・報告しなければ・・・」
こうしてキーンへリアの口からシュタイン王国の上層部に努の存在が知られることとなる。
*****
シュタイン王国の上層部に自身の存在が知られているとも知らない努は翌日となりいつも通りに満員電車に乗り会社へとやって来ていた。
「あ!先輩お疲れ様です!土曜日と日曜日は大丈夫でしたか?」
ビクッ!?
会社にやってきた努に開口一番にそう声を掛ける金曜日の飲み会にもいた後輩。その一言に異世界の事が頭に過り動揺する努。
「・・・大丈夫ってなにがだ?・・・」
動揺を隠しながら何を聞かれているのかを聞く努。
「なにって・・・先輩、金曜日の飲み会グデングデンに酔っぱらってたから・・・普段の先輩とは思えないダジャレとか言ってたし・・・」
ホッ
飲み会の事と分かり安心する努。
「あ、ああ。それなら大丈夫だ。土曜日の朝は頭が痛かったがな・・・あとダジャレは忘れろ。俺のキャラじゃない」
「いやいやいや!あれを忘れるなんてもったいない事できませんよ!もう会社中に佐藤さんと一緒に言って周ったばかりですし!」
「・・・よしぶん殴る・・・」
こうして努は異世界の事がバレることなく平日5日間の仕事を過ごした。
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