第5話 アロンダイト

メルト領都を歩きながら見かけた酒屋でビールに似たエールを飲んでいる努。


「・・・温いな・・・味は似てて美味しいんだどな・・・よし」


努は自身のエールを冷やしてみることにした。


冷却フリーズ


威力の調整がまだ上手くできない努。2.3回の挑戦によりちょうどいいキンキン状態のエールが出来上がった。


ゴクゴクゴク


「ぷはー!美味い!これだよな!ビールは!」


そんな美味しそうにエールを飲んでいる努を見て周りの酒呑みたちが努に頼む事態に。


「なああんた。俺にもそれやってくんねぇか?」

「俺も頼む!」

「俺も俺も!」


そういった感じで何人もの人のエールを冷やして回った結果エールの売り上げが上がり1時間少しなのだが店長から給料として1万Gを貰った。


「次はどこに行くか」


街をブラブラとぶらついていると一軒の宝石店を発見する。


「・・・宝石店・・・異世界の宝石ってどんなのなんだ?」


興味本位にて宝石店に入店する努。店内にはショウケースに入れられている宝石や宝石を使用したアクセサリー。さらに宝石店の中には警備員らしき人物たちも存在する。


「・・・大体100万Gは軽く超える感じか・・・普通に宝石店だな・・・」


宝石が詳しくないために異世界特有なのかどうかが分からない努。店を出ようとした時に店員に話しかけられた。


「今日はどういった商品をお探しですか?」


努はただの興味本位にて入店したので買う気はなかった。だが店員に話しかけられ"今から帰ろうとしていた所"とは言えなかった努。


「え〜と・・・お恥ずかしながらこういう所に来た事が無くて。ちょっと興味がありまして・・・」

「そうですか。でしたら安い商品をご覧になりますか?」

「いいんですか?」

「はい。ご案内いたします」


そう言って努が紹介された商品はアクセサリーとかではなくアロンダイトと書かれた緑色の宝石単体だった。


「こちらが当店で1番お安くなっておりますアロンダイトでございます」

「へぇ〜・・・値段が・・・532G?こんなに安いものもあるんですね?」

「はい。我が宝石店は高い物から安い物まで様々な品を取り揃えておりますので、一般的な職についておられる方々もいらっしゃいますよ」

「へぇ〜・・・なるほど・・・」


努はアロンダイトを見て日本で売ったらどうなるのかを考え3個ほど購入する事にした。


「ありがとうございました」


店を出た努。異世界に来て2.3時間は経過したので宝石の検証もかねて転移テレポートにて日本に帰ることにした。

*****

「うん。ちゃんと帰れてるな。時間は・・・」


持って行かなかった携帯で時間と念のために日付も確認する努。


「よし。同じ時間しか経ってないな」


時刻は夕方ごろ。努は異世界で買ったアロンダイトを日本で売るために宝石店を調べ持って行くことに。


「地球では希少なのかありきたりな物なのか。地球には無い宝石って可能性もあるな」


少し胸を躍らせながら努は調べた宝石店にアロンダイトを持って行った。


「いらっしゃいませ」

「今日はちょっと宝石の鑑定をしてほしいんですけど?」

「かしこまりました。それでは個室にご案内いたします」


そうして個室に案内された努。椅子に座り宝石を見せる。


「!?・・・それでは鑑定させていただきます・・・」


努がアロンダイトを見せたときに驚きのような反応を見せる店員さん。その反応を見て少し期待する努。


「・・・間違いなくこちらはアロンダイトでございますね・・・しかも品質は最高峰の代物・・・失礼ですがこちらはどうされた物かお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「少し前に祖父から受け継いだものでして。自分には価値が分からなかったのでまずは3個ほど持って鑑定してもらおうと思いまして」

「それではまだ同じようなものをお持ちという事でしょうか?」

「はい。まだ何個か家にありますね」


と、不自然にならないように噓をつく努。そしてまだ家にあるという事で次に持ってきた場合でも怪しまれないようにした。


「それではこちらの3つのアロンダイトの鑑定価格でございますが1339でございます」

「・・・・」


努は予想だにしない数字が飛び出したことにより驚きすぎて声を発せなかった。


「・・・それって・・・そんなに・・・するんですか?・・・」


驚きつつもなんと質問をする努。


「はい。アロンダイトはとても希少な宝石でしてさらに品質もとても素晴らしいのでこれぐらいのお値段は致すかと思われます。いかがなされますか?」

「・・・それでお願いします・・・」


こうして努は思いがけずに大金を手に入れた。


様々な手続きを終えて家に帰った努は今後についての悩みが増えた。


「・・・ただでさえ魔眼の事でも悩んでいるのに・・・9億円って・・・あの世界にはもっと大量にアロンダイトがあった・・・働く必要ないんじゃ・・・」


しかし努は20年以上も今の会社で働いている。それだけの年数を働けば思いもあるのでそう簡単にやめることもできなかった。


「・・・とりあえず・・・しばらくは異世界を楽しむという事でいいか・・・」


今後についてはとりあえず保留として努は異世界を楽しむという考えで行くことにした。

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