1章 6話初恋 3

ピピピピ

「ん?」

アラームがなった事で目が覚めたようだ。

「夢、か…」

とても懐かしい夢を見た、僕が初めてあの子と会った日、初めて恋をした時の夢だった。

(なんで、今更…)

そう思いながら重たい体を起こして、外を見ようと窓に目を向けると。

「え?」

窓には、目の周りが赤く、頬には涙の跡が残っている自分が映っていた。

(何で?)

だが、その理由はすぐにわかった。

(結局この気持ちが残ってたんだな)

もう、諦めていた、1番に叶えたい願い。

あの子にもう一度会いたい。

だけどあの子の約束を破ってしまった僕には、叶ううことは出来ないだろう。会えたとしてもこんな自分を見られたくない。

他人を信じない、自分が正しいことを言っても意味が無い。

心の中に、そんな思いがあるのだから。

今になって、あの子は本当に自分と居て楽しかったのか、疑問が沸くようになってしまったのだから。会ったところで嫌われてしまうだろう。

会いたいけど、嫌われたく無いから会いたくない。そんな身勝手で矛盾した気持ちを持ってしまっていた。

(どうすればこの気持ちはなくなるんだろう)

この呪いのようなものを消してしまいたい。

そうすればいつまでも過去に囚われずに済むのだろう。だけど、この気持ちを消してしまったら、あの子を忘れてしまう。また約束を破ってしまう。

僕の前からいなくなってしまう前日、

「ごめんね、つーくん」と涙を流しながら言ったあの子に、僕は何一つ言ってあげられなかった。約束を守れなかった。

だから、あの子を忘れない為に、もう一つの約束を果たす為に、この呪いのような気持ちがあると思う。

(だけどもう一つの約束も僕には果たせないものだったな)

中学で起きた出来事、それによって僕は、人を心の底から信用出来なくなった。それが、この矛盾した思いを作り出した原因だろう。

「もう少し寝るか」

これ以上何も考えたくなかった。

もう何も思い出したくないから、逃げるようにして、再び眠りについた。

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