1章 4話初恋 1

偶然夜野と図書室で会話した翌日

(もう10月か寒いな)

そう思いながら、僕は普段通り教室に入った。昨日と変わらず、夜野の周りに、関係を取ろうとしている奴らが集まっていた。だけど次第に彼女に話しかける人は、隣の席の比野真昼だけになっていた。

「かなでちゃん、もっと周りの人と仲良くしないの?」

「下心丸出しの人たちと仲良くする気はないから、別に良いわよ」

「それもそうね」

僕は何を話しているかは、全くわからないが、比野だけは、彼女と少し仲が良いようだ。


放課後普段通り第二図書室に入ると、夜野が居た。

「今日も本を読みに来たのですね」

「日課だからな、夜野さんも勉強しに?」

「ここ以外落ち着いて勉強できませんからね」

「僕がいるのに?」

「あなたは周りの人たちと違って、私に興味が無いみたいですから、居ても関係ないです」

「左様で」

普段通りの塩対応に苦笑いを浮かべながら、席に座りいつも通り読書を始めた。


本を読んでいる途中、少し小腹が空いた。

(そいえばカバンの中にチョコが入ってたな)

カバンの中からチョコを取り出して食べようとした時。

(ん?)

少し視線を感じた。その視線を辿ると夜野がいた。表情を表に出さないようにしているようだが、僕が手に持っているチョコを物欲しそうに見ている。

「これ欲しいの?」

「いえ、そうゆう訳では」

「欲しいなら最初からそういえ」

そう言って僕は、手に持ってるチョコを、半ば無理矢理、彼女に渡した。

「あ、ありがとう、ございます」

少しぎこちない礼を言い、渡されたチョコを少し躊躇いながら口に入れた。

「ん〜!」

(美味しそうに食べるな)

チョコを食べてる時の彼女の表情は、普段からは想像も出来ないほど、可愛らしい表情をしていた。

「何か顔に付いてましたか?」

視線に気付いたのか、そう質問する彼女に、「何でも無い」

そう答え、再び僕は本に視線を落とした。


その日、夢を見た。

あの子に初めて会った日の夢。

もう名前を忘れてしまったあの子の...

僕の初恋の夢。

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