雨男と晴れ女

ちゅ

雨男と晴れ女

雨男がいると、必ず雨が降る。生まれてから何処にいくにしても必ず雨が降る。雨男は晴れた空を見たことがない。澄んだ青い空、照りつける太陽を見たことがない。


晴れ女がいると、必ず晴れた。晴れ女の元に雨が降ったことはない。晴れ女がいれば太陽が雲に隠れることはない。晴れ女は雨の恵みを知らない。じめじめした気分を知ることができない。


雨男は太陽を拝んでみたかった。

晴れ女は雨を知りたかった。


雨男はある日、青い空を見た。南に太陽が昇っているのが見えた。

晴れ女はある日、淀んだ空を見た。北の空が暗くなっているのが見えた。


雨男は南に向かって歩いた。晴れのもとに行きたかったから。

晴れ女は北に向かって歩いた。雨を浴びてみたかったから。


雨男は女がこっちに向かってきてるのが見えた。

晴れ女は男がこっちに向かってきてるのが見えた。


ふたりは恋に落ちた。


ふたりが出会った時のそらは太陽が出ていて、雲もかかってて、雨が降っていた。


雨男の空の雨は日に日に弱くなっていった。毎日太陽を拝めて、雨男は喜んだ。

晴れ女は雨に当たることをだんだん知っていった。初めてどんよりしてみたり、周りに緑が増えていったりして、晴れ女は楽しんだ。


ある時ふたりは喧嘩した。新しい環境がふたりに変化をもたらしたからだ。ふたりは反対の方向へ歩いていった。


雨男は気がついた。どうやら周りは薄暗く、風が当たるとすごく寒いことに気がついた。

晴れ女は気がついた。なにやら緑は悲しんでいて、自分も哀しくなっていたことに気がついた。


ふたりは戻ることにした。謝りたくって歩き出した。


雨男は遠くの空を見て、晴れ女がいるのがわかった。

晴れ女は遠くの空を見て、雨男がいるのがわかった。


ふたりは走った。風に乗ってふたりは走った。

ふたりは追い風に乗ったから風は互いにぶつかった。

雨男は暖かい風を微かに感じた。

晴れ女は頬にポタポタと水がつくのを感じた。


ふたりは出会った。お互いに抱き合った。ぎゅっとすると温かく、目から雨が降ることを知った。


ポカポカする時もある。ずぶ濡れになる時もある。風が強い時も、カミナリが落ちる時もある。どんな時だってこの先の未来、ふたりは一緒だった。


ある時ふたりのもとに雪が降った。

ゆきだるまを作ってみてふたりでずっと眺めていた。

溶けていくのをずっとふたりで眺めていた。

雨にも打たれ陽に照らされるゆきだるまは何故溶けていくのか、ふたりだけが知っていた。

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雨男と晴れ女 ちゅ @tyu_185

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