保安官と農民 その11
「ぷぷぷ〜、滑稽、滑稽。」
東武皇帝は自分に挑もうとした愚かな怪人を見下ろしていた。
「吸血鬼とはこの程度か、つまらんの。」
皇帝はそう言いながら、宙光を踏みつけた。
「ぐう。」
「まずは国民のお前から殺す。いや、余に盾突いたから非国民か。」
「おいおいおい! 納得いかねーぜ、この野郎!」
ユウキリスは動けない状態でも口は達者だった。
「農民風情の反乱分子のそいつより、外敵の我の方が危険で悪に近いぜ! 我がお前なら、確実に我の方を先に仕留めるぞ、馬鹿め!」
「馬鹿はお前の方だ、ユウキリス。」
東武皇帝はニヤけながら、ユウキリスを見つめた。
「お前は殺すだけじゃ飽き足らぬ。ざっと百年は東武国のモルモットとしてとことん利用してから、じわじわ殺す。」
東武皇帝は再び視線を宙光に向けた。
「だがお前はここで終わりだ。」
皇帝は剣を振り落とした。だが刃に当たったのは、宙光ではなかった。
「母…上?」
宙光は目の前の光景を信じられなかった。皇帝と自分の間に自分の母が立ちはだかったのだ。
「子の盾となる、母の愛か。美しいな。」
東武皇帝が関心する中、宙光は涙をポロポロ流しながら宙を受け止めた。今にも死にそうな宙の意志は硬かった。
「アタシの命、無駄にせず、目の前の敵を倒しな!」
その指示を聞いて、母の頭を床におろした後は一瞬だった。
「展開、小宇宙!」
「風の塊か?」
東武皇帝は天羽々斬を構えた。
「こんなの、弾き返してくれ…」
(実体として捉えられない⁉︎ 顔に直撃…)
「ガ…ガガ…!」
皇帝は思わず武器を落としてしまった。
(息ができぬ!)
皇帝が苦しむ中、ユウキリスは倒れたままニヤけていた。
「そうだ、相棒! そいつを許すな! 殺意と怒りを全力でぶつけろ! あんたの体も鎧も丈夫で、繰り出す技は強力だが心は繊細で傷つきやすいんだ! 散々あんたはこの国の習わしに苦しめられた! 傷ついた! だが傷ついた分、あんたは強くなった! あんたの優しさや甘さは我は大っ嫌いだが、それは弱さじゃねえ!」
ユウキリスは天井に拳を向けた。
「それを強さだと今証明しろ! 羽山 宙光!」
「無論。」
宙光は答えると天羽々斬を拾った。
「おい、ユウキリス。ここに偶然天羽々斬が落ちていたんだが、私が貰っていいよな?」
「構わねえぜ、はよやれ!」
「感謝だ。 ……覚悟しろ、屑の王!」
宙光は右手で剣を持ち、横に構えて、左手で剣に魔力を注入して高めた。すると剣は燃え始めてだいだい色の炎は跡を少し残したまま青い炎へと進化した。
「
「グアアア! うがあああ!」
皇帝は玉座の方へと、皮膚が燃えながらぶっ飛ばされてしまった。
「やったか?」
宙光は前を見ながら思いを口にした。
「人…嫌怪人だったとしても、恐らく死んでたな。だが…」
ユウキリスはそう言いながら、立ち上がることにした。
「相手が本物の悪魔だったのなら、話は変わるぜ。なあ、悪魔ちゃんよ。」
爆風の中からソレは真の姿を表した。
「イヒャヒャヒャ! どうやら余は天使にメッキを剥がされたみたいだ! 今のでエネルギーも半分以上持ってかれちまったのだ。」
「宙光、後は我に任せて、あんたは母ちゃんが息があるうちに、そばにいてやんな。」
ユウキリスは標的に向かって歩みながら。宙光は再び母の近くにいた。
「かたじけない。」
「気にすんな。それにあんたが頑張ってあいつの体力削ってくれたんだ。無駄にはせずにすぐに仕留める。」
ユウキリスと皇帝だった悪魔はお互いをニヤけながら睨み合った。最初に言葉を放ったのは悪魔の方だった。
「羽虫のようにはたき落としてくれるわ。」
「我とあんたは対して差はない! ……変身!」
ユウキリスは叫ぶと、すぐさまジャバウォッキーの姿に変身した。
「この姿であんたに勝てるなんて思っちゃいねえ…あんたにもう一つのとっておきの変身をお披露目するぜ。それでしまいだ。……怪異の極みいいい!」
その日、東武国の中心は少し揺れたという。
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