保安官と農民 その9

ペシッ!

「ムン!」

「おい、 起きやがれ!」

 ユウキリスのビンタによって宙光は目を覚ました。

「ここはどこかね?」

「武京城の先にある、東武皇帝の住む城、ベルじょうの門の前だ!」

 ユウキリスは答えると、宙光は門の先を観察した。

「一つの小さな家があるだけではないか?」

「目に見えるものが全てじゃねえ。その家の先に大きな城とその持ち主が潜んでいるのさ。」

 ユウキリスは宙光の肩を叩いた。

「今から我が喧嘩売る相手は、あんたも怒りをぶつけていいと思うぜ。侍や貴族を調子にのらせて、あんたら農民に貧しくひもじい生活を押し付けて苦しませた 張本人なんだからな。」

 その発言に宙光は拳を振るわせた。

「ユウキリス、共にこの国の無限の苦しみを解き放とう!」

 そう言うと、二人の勇者は堂々と、魔王の城に入り込んだ。


 数分後、同じベルじょうの門の前に、由紀と宙がやってきた。

「命が次々と消えていくのを感じるね、由紀。」

「ええ、母上。きっと兄様とユウキリスが戦っているのでしょう。」

「進むよ、由紀。今のアタシらは神のような力を手に入れた超人だ。」

 しばらく進むと、無数の倒れた体が倒れていた。宙は体の異変に気づいてしまった。

「この城はアタシら吸血鬼が全力を使えないように細工されているね。」

「えっ、ええ。そうですね。」

(おかしいですね。私は力が抑えられている感覚が全くしませんが。)

由紀は思っていたことを心に留めておきながら、母と共に階段や部屋を突き進んだ。

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