吸血鬼ユウキリスの誕生 その8

「ユウキリスだ〜? ふざけやがって!」

 ジャムは敵を睨んだ。ユウキリスはただ無邪気に邪悪に微笑んだ。

「いんや〜、我は真面目だぜ。」

「わおおおおん!」

 ジャムは雄叫びをあげた。ユウキリスはその異変ににやけていた。

「面白ええ! あんた、雄叫びで己を守る竜巻をつくったんだ!」

「ただの竜巻じゃない!」

 ジャムは立ち上がった。

「お前も町も何もかもをめちゃくちゃにする災害だ! お前の技は近距離のものとみた! つまり風の障壁に守られている我には当たらねえ!」

「思い込みというのは実に怖いものだね〜。」

 ユウキリスは負ける気持ちは一切なかった。

「こんな風、ゴリ押しするまでもねえ。」

 ユウキリスはそう言うと、手を上にかざした。ジャムもつい上を見てしまった。

「俺の上で魔法陣⁉︎ こいつ展開能力高すぎるだろ!」

「落炎!」

「うわあああ!」

 ボオオオオと火炎が真下のジャムに直撃して、風が収まった。

「台風の目、つまり真ん中やその上は不気味に静かだ。ガキでも知っているぜ。」

「熱い! 熱い! 熱い! やめてくれ!」

「ダメだ、ダメだ。 お前は我の楽園をめちゃくちゃにしたんだ。」

 そう言うと、ユウキリスは背中からだいだい色の翼を繰り出した。

「もっと、 苦しめえ!」

 クイっと少し翼を動かすと、ジャムの周りをドーム状の風の障壁を生み出した。

「あああ!」

「イーハー! ワハハハハ! これで炎はとことんお前をいたぶる!」

 しばらくの間ジャムは炎によって苦しんだ。再び倒れたので、ユウキリスは風の障壁を解錠した。

「もお、やめてくれ。……許してくれ。」

「ああ? あんたは俺の町の奴らを皆殺しにしただろ?」

「に、逃げた奴もいるはずだ。」

「かもな。だがあんたとあんたの相棒は目にした奴を快楽のために殺した。違うか?」

 ジャムは何も言い返せなかった。ユウキリスは話を続けた。

「あんたはさっきの竜巻でこの町を完璧に壊すつもりだったかもだが、残念だがそれは叶わねえ。」

「ぐはっ!」

 ユウキリスは強くジャムを踏みつけた。

「この町を守っていたのは俺だ。だがこの町を今から壊すのも俺だ。お前をスクラップにするのはついでに過ぎない。」

 ユウキリスはそう言い終えると、距離を終えてポーズを行った。

「変身!」

 ユウキリスの身体は黒い煙に囲まれ、気がつけば完全なジャバウォッキーに変身していた。その姿にジャムは恐る恐る指を指した。

「お、お、お前がジャバウォッキーだったのか?」

「ああ、ここから新しい伝説、そして悲劇と悪夢の始まりだ。」

 そう言うと、化け物は空高く舞い上がった。

「ジャバウォッキーのあの雷っぽい技、名前どうしようかな? …! 閃いたぜ!」

 思いつきながら、彼は宙に止まり、口にエネルギーを貯めた。町にいたジャムは異変に気づいていた。

「地面が…揺れる! 気圧が上がってる!」

(そろそろいいかい? 放つか!)

ユウキリスは化け物となった顔を下に向けた。

(紫雷吐息ヘルベル!)

「グゴオオオオ!」

 咆哮と共にジャバウォッキーとなったユウキリスの口から紫の稲妻が地に向かって放たれた。町はあっという間に電撃とさらに過激な爆炎に包まれた。

ここでユウキリスは敢えて人の姿に戻った。

「いい町だったが、完膚なきまでにしてやる。今から我は、隕石だ!」

 そう言うと、ユウキリスは拳を構えて、下界へと急降下した。

地獄一番星ヘルスター!」

 その日、爆発と共にラウンドアップという町は、跡形もなく、姿を消した。

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