吸血鬼ユウキリスの誕生 その9 完
「ダリィ〜。」
何も無くなった町にユウキリスは仰向けに寝ていた。
「まだ力を使いこなせてねえな。だから疲労が我を襲うのか? …これからどうするか?」
「お初にお目にかかります、ユウキリス様。」
「うわあ、誰だあんたは、この老婆!」
黒衣を着た老婆が視界に入ったので、ユウキリスは距離を置き、身構えた。
「恐れることはありません。わたくしは予言者でございます。」
「我の名前をなぜ知っている? 先程改名したばっかだぞ?」
「星々が教えてくださいました。」
ユウキリスはその発言に警戒はしたが、すぐに楽にして、座った。
「俺は一度、老人の助言をすぐに実行せずに、このザマだ。だから同じ部類のあんたの言葉を聞こうじゃねーか。」
「ありがとうございます。」
老婆は深くお辞儀をすると、急に目を光らせた。
「怪物ジャバウォッキーを我が物にし、己の道を突き進むユウキリス。お主にもいずれ頼れる仲間が増え、やがては王になるだろう!」
「ほぉ〜。」
「しかし、」
老婆は人差し指を示した。
「頭に角が生え、摩訶不思議な技を携えた戦士がお主の前に現れた時、お主の進撃は終わり、破滅がお主を待つだろう。」
これを聞きユウキリスの背筋は少し凍った。
「そいつはどんな奴だ? 詳しく話せ。」
「特徴や性格に左右されてはならぬ。そやつもお主と同様、仲間を携えて、お主に挑むだろう。またお主が嫌うものを好むが、また同時に不思議とお主はそやつに、そしてそやつもおぬしにも惹かれ合うところもある。だがその出会いはまた先の話、もしかすると起きないことかもしれぬ。進め、壊せ、地を支配せよ! 狂乱の申し子、ユウキリス!」
いつ間にか、老婆は姿を消していた。つ間にか、老婆は姿を消していた。ユウキリスは勢いよく立ち上がった。
「我はこんな小さな町に納まる器じゃなかったってことか。」
そう言うと、ユウキリスは勢いよく立ち上がった。
「我は決めたぜ! 仲間を集め、屈強な国を造り、そこを我の楽園とする!」
ユウキリスは宣言すると、宙に上がった。
「イーハー! まずは一人旅だな、どこを目指すか。」
ユウキリスは砂だらけのあたりを見渡すと、ふとある願いを閃いた。
「……海が見たい。海の先で出会いが欲しい。」
自分でも驚いたのか、ユウキリスは自分の心に手を当てた。
「ふふ、怪人になって我にも、いや、人であった頃から頭のネジがとんでいた我にも、心は残っていたんだな。」
ユウキリスは勢いよく西の方へと羽ばたいていくのだった。
「イーハー! 出かけるぜ! 砂漠を捨てて、いざ! 海と出会いがあるところへ!」
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