吸血鬼ユウキリスの誕生 その7

「怖いか? 殺したはずの男が生きているんだ。そりゃ怖いよな〜。俺はお前の恐怖を利用して、自由自在に操れるらしい。敵とみなした相手が生き延びた場合、どんな形であれ、成長をしないと思わないことだ。敗北は死なない限り、人を強くするもんだ。」

「ぐはっ!」

 ブレイは足でジョーロを倒してそのまま抑えた。

「だがお前には立ち上がらせねえ。敗北と死を同時に味わせてやるよ。」

 ブレイは拳に力を込めた。魔力が圧縮されていった。

「ひーっ!」

「ちょっと前にあんたは俺に土の味をプレゼントしてくれたよな! 俺はそんなに甘くねーぞ! 地面ごと灰になれ!」

「やめろおおお!」

「やめろって言われてやめるわけねええだろ! 歯あ食いしばれ!」

 ブレイは拳から魔力を放った!

邪波滅拳ジャバ・フィスト!」

「グアア!」

 砂埃が舞い、収まった頃には地面もジョーロも消えて、ブレイは宙に浮いていた。

「吸血鬼は空も飛べるのか? 愉快、愉快。」

「ハァ…ハァ…」

「おっと、セカンドチャレンジャーのお出ましだ。」

 ブレイは不敵に走ってきた人狼に視線を向けた。

「ジョーロはどこだ?」

 ジャムは殺意丸出しで保安官を睨んだ。それに対して保安官は煽るように首を傾げた。

「んん〜。わからんな〜。 ゴナゴナにしたから、もしかするとこの穴の底かもしれねえし、あっちだったり、そっちだったり、はたまた宙を舞っているかもしれないし。まあ魂は今頃地獄かもな!」

「ふざけるな!」

 ジャムは急接近した。保安官は冷静だった。

(速い! 近い! その攻撃は恐らく痛い! だがかわせる!)

ヒョイとあっさり人狼の爪による攻撃をかわした。

「何っ⁉︎」

「あんたには蹴られたからな〜、お返しするよ。」

 保安官は足に魔力を込めた。紫の稲妻が宿る。

雷迷の斧サンダー・アックス!」

「うぉおおお!」

 ジャムは数キロぶっ飛ばされて建物にぶつかった。

「体が痺れて、切り口ができた。痺れて斬れる蹴りか!」

「ご名答!」

「なっ!」

 遠くに飛ばされた敵がすぐに近づいたことにジャムは驚いてしまった。

「ブレイ保安官! お前は吸血鬼になったのか⁉︎」

「ブレイ〜? 保安官〜?」

 その人物は首を傾げたが、すぐにはっとなった。

「ああ。俺、いや我はそういう名前で、そういう役職だったな。だが、先程心の中で二つとも捨てた!」

 その怪人は自身に親指を向けた。

「我は吸血覇王ーユウキリス! 悪を統べる吸血鬼なり!」

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