吸血鬼ユウキリスの誕生 その3

 同じ日のラウンドアップ。鉄道の線路は双方斬られて、何個かの家が吹っ飛んでしまった。また火事も起こっていた。市民が逃げる方向と真逆に保安官は布で体を覆った状態でたった一人で向かった。

「化け物どもが! 俺の町を荒らしてんじゃねーよ!」

 ブレイの眼光の先には、二人の影がいた。

「あいつが保安官、守神のブレイか。」

「なるほど、強い闘気だ。…だが俺たちの敵ではない。」

「ゴチャゴチャ言ってるな!」

 ブレイはそう言うと、布から武器をみせた。二丁のマシンガンである。

「銃弾の雨を降らせてやる!」

 ドドドドドドっと無数の銃弾が二人の暴漢に向かった。爆発が起こり、砂が舞う。

「イーハー! 鉄の食べ放題は美味しいかったか⁉︎」

「普通にまずいな。」

「なにー⁉︎」

 埃の中から無傷の二人が堂々と立っていた。余裕ぶってる男二人にブレイはある特徴に気づいた。

「犬の耳か? 気味が悪いな。」

「犬じゃない。」

「何っ!」

(こいつ、いつの間に後ろに⁉︎)

「狼だ!」

 ズバッ!

「うわああ!」

(こいつ、手が獣に⁉︎ 爪の斬撃か⁉︎)

 ブレイはぶっ飛ばされてしまった。だがその先には敵の相棒がいる。

「お前は俺たちに鉄の味をくれたが、俺は甘さ控えめな土の味をプレゼントするぜ!」

「何言ってやが…」

 ズコオオオン!

 強烈な拳による振り落としがブレイを襲い、彼の体は地面へと叩き潰された。

「痛えええ!」

(全身に痛みが走る! 何より怖ええ!)

「ゲホッ!」

ブレイは息を吐いた。

「てめえら、狼って言ったが、人狼か⁉︎」

「ご名答。我らはウルフブラザーズ。メリゴールに名を轟かせている犯罪シンジケートの元締めの二人だ。そしてお前の背後を取り、引っ掻いたのはこの俺、ジャムだっ!」

 ジャムは勢いよくブレイを踏みつけた。

「グアア!」

「そして俺はジョーロだっ!」

 ジョーロも勢いよく、ブレイを踏みつけた。

「グアア! ……てめえら、この町に何のようだ⁉︎」

「子供らよ、ジャバウォッキーには気をつけろ。」

 ジャムはそう発した。ブレイは耳にした言葉だった。

「あーん? 童謡に踊らされて来たってのか?」

「童謡や童話は伝説から生まれたのだ。力を得られるものは伝説を信じられる者だ。」

「図書館で読み聞かせでもしてやがれ!」

「お前は我らの暴力という名の子守唄で永遠の眠りにつくがよい!」

 ジャムはそう言いながら、ジョーロと共に強力な拳をブレイに放ってぶっ飛ばした。

「グアア! お前ら! 地獄に着いたら覚えとけ! 閻魔の前に鉄槌を下すのは俺だ!」


...

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