吸血鬼ユウキリスの誕生 その2

「あの二人、音沙汰ないな。」

「……死んだんじゃないの〜?」

「あの町の保安官は強いから、賞金首は捕獲で済むことで有名だぞ?」

「それが奴のデマだったら、どうする?」

「行くか、ラウンドアップ?」


・・・

・・・


「俺が吸血鬼に〜?」

 ブレイ保安官は村長室で、行儀の悪い座り方をしていた。対極的に机越しでいい姿勢で座っている小柄な町長はブレイの反応に応答した。

「もちろん君の実力を疑っているわけじゃない。現に君が来てからこの町の犯罪率は激減した。輩は何度もお縄を頂戴している。」

  町長はそう言いながら引き出しから複数の物を取り出した。ブレイは不思議そうに観察した。

「……血の入った瓶、尻尾の毛、りんごと酒とパン、角にダイヤ、そして小さな袋。」

「特別な粉が入っている。……興味がなさそうだね。ここからは君が好きな言葉を並べるとしよう。」

  町長はそう言いながら、立ち上がった。

「男として生まれたなら、誰しもが求めるものはなんだ?」

「金と酒、そして女。」

「それはもちろんある。私は市民のためを思っているが同時に、そのような物を好まないわけではない。だが原始の昔から脈々と受け継がれて、遺伝子に刻み込まれてるものを私は言っている。誰しもが追い求めているもの、それは圧倒的な力だ。違うかね?」

「違いねー。俺も強くなりたくて、己を鍛えて、保安官を目指した。」

 ブライはそう言いながら、姿勢を少しだけ正した。町長は手で机の上のものを示した。

「これは吸血鬼になるための道具だ。作法はこの中に書いてある。」

 町長は折り畳まれた紙切れをブレイに渡した。ブレイはあることを疑問に思った。

「あんたもなろうと思えばなれるんじゃねえのか? あんたが吸血鬼になったら俺はお払い箱になって都合がいいと思うぜ?」

「私は君のやり方や性格が全て好きというわけじゃない。だが君の才能と強さは信頼している。それに、こんな老いぼれより君のような可能性と才能のある若者が力を得るのは町のため 、いや、世界のためになる。私はそう思う。」

 これを聞いたブレイは、黙って道具と紙切れを鞄に入れた。部屋を出ていく前に、背を向けたまま、ブレイは振り向いた。

「俺もあんたの甘っちょろい理想論や道徳的な思考、嫌いな部分あるぜ。だがあんたの町を守るために手段を選ばない決断力、嫌いじゃないぜ〜。吸血鬼になるかはわからんが、とりあえず貰ってやるぜい。」

「……ありがとう。」

 町長は礼を言うと、保安官は部屋を出て行った。







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