第38話 県庁組織に都合が良い、県庁の傀儡者たち。
2週間の入院生活を経て、そのあと、1カ月間は、自宅から病院まで通いでリハビリに出掛けた。
最初は松葉杖と両足で普通の1歩を2歩ずつかけて歩いていた。
それから、しばらくすると、松葉杖1歩、右足で1歩と普通の歩けるようになった。
退院して1カ月後、ぬんは、職場に復帰した。
でも、立ったり座ったりが多い職場では歩き回るのが松葉杖では厳しく、事務長に頼んで、車いすを使わせてもらった。
その車いす生活も8カ月続いた。
でもぬんは、やはりどうしても杉尾さんが約束した「①『前十字靭帯損傷の疑い』ではなく、『前十字靭帯損傷』という正しい傷病名が証明できることと②変形性膝関節症ではないということをN本大学病院とM浦駅前整骨院が証明すること、の2点がきちんと関係者たちが書面等を書いたら、通勤災害として考える」と言う話だけを信じて、そのことだけをきちんとやり遂げようと思っていた。。
そして、一生懸命、自分に起こったその話を杉尾さんに言われて証明できたと書かれた文章を書き、今度は地方公務員災害補償基金神奈川県支部審査会(以下、J事委員会・・・J事委員会は普通の会社だと労働基準監督署である。だから、会社には関係ない第三者機関である。でも県庁の場合は、またまたこの役割は県職員がやる。J事課とJ事委員会はつるんでいるのだ。人事課が決めたことに人事委員会が反対することはない。)に、反論書という形で提出した。
でも、どこかでJ事課とJ事委員会が、なあなあでつるんでいるわけだから、ぬんに良い結果は出ないことを感じていた。
それが、神様に誓った真実のことですらだ。
H谷川医師に詰問し、杉尾さんが書かせた「疑い」が間違えなのに、そのことをまことしやかに、通そうとしていた。
本当にK奈川県のJ事課は質が悪い。
反論書という形で提出した結果、審査会が開かれ、J事委員会が、いわば被告のJ事課と、原告のぬんを呼んで、審査会の委員を呼んで、審査会の委員がぬんに質問をして、どちらが正当であるかという場が作られた。
ぬんは、痛みが残る手術したての不自由な足で、松葉杖をついて、出席した。
しかし、やはりJ事委員会に移っても、組織の考え方の根本が変わらなければ変わるはずがなかった。
何しろ、J事委員会は、J事課が買収しているような所属なので、J事課と基本的考え方は変わらない。
第三者が入らない審査会なんてひどいものだ。
J事委員会が用意した判断する委員、委員長のA室和行さんは県職員幹部のOB、委員の医学的見地を語る医師は元がんセンターのセンター長の外科医、K林理さん、もう一人公平に意見を見定める弁護士はK奈川県のお抱えの弁護士であるO関亮子さんであった。
神奈川県にとっては、ご都合がいいメンバー、ぬんにとっては最悪なメンバーである。
三人ともJ事課あるいはJ事委員会に言いくるめられた、ぬんを公務災害にしたくない方々。
誰が見ても、ずるだとわかるだろう。
何で、K奈川県庁に関係ない第三者を呼んでくれないんだ。不公平すぎる。
公平に物事を考えるはずのJ事委員会の委員が全てJ事課寄りの立場。
最初から人事課の考えが埋め込まれた委員たち。
やり方が汚い。
公平とは間違っても言えない人たち。
どおりで、審査会が始まる際、部屋に入ってきたJ事課のメンバーがニタニタ笑っていると思った。
もう、J事課、自分たちの意見が通ると確信しているからだ。
質問は多岐にわたったが、「左膝前十字靭帯損傷の疑い」の「疑い」で攻めてくる。
(だから、違うのですよ。初め、「左膝前十字靭帯損傷の疑い」って書いたH谷川医師は、公務災害で書類を提出することを知ったとたん、K奈川県医師会での自分の立場が危うくなるのを恐れて、「疑い」なんて付け足してうやむやの汚い書き方をしたんです。
結局、それが「疑い」じゃなくて、「左膝前十字靭帯損傷」そのものだったから、ぬんは、手術をすることになったんじゃない。
「疑い」なら手術はしないのよ。
どうしてみんな、そんな簡単なことがわからないの?)
結局、A室和行さん、K林理さん、O関亮子さんが、K奈川県の傀儡(かいらい)だからでしょう。
いろいろ聞かれてぬんが疲れてきた頃、O関亮子さんはズバッと意見を言ってきた。
「霧野さん、靭帯が切れているのに、歩けるって変でしょう。靭帯が切れていたら歩けないはず。バス停まで歩いたり、上大岡から家まであるいたり、その足でどうやって帰ったんですか?ねえ、K林さん。医師として意見を聞かせてください。」
K林理さんが、「やあ、O関さんのおっしゃる通り前十字靭帯が切れたら、一歩も歩けないのですよ。歩けたのだから、『前十字靭帯損傷の疑い』どころか、『疑い』ほどの怪我もしてなかったのではないですか?」と言った。
「どうですか、霧野さん。」O関さんは攻めまくった。
「歩けました。」
「歩けるはずないと、医師のK林さんもおっしゃっていますよ。」
「いや、歩けました。」
「まあ、いいでしょう。100歩譲って歩けたとして、それで最初2か月、そのあと、1年、普通の生活ができたなんて、ちょっとねぇ。」
「いや、かなり痛かったし、びっこでしたよ。杖もついていたし。注射もしてもらっていました。」
(現実的に、前十字靭帯損傷は歩くことができる。痛いし、滑り膝になるので、足は不自由になるが、歩くことは可能である。
医学書でも「歩くことはできるが、滑り膝になるので、できるだけ早く手術したほうがいい」と書いている。
経験者の話でも、この怪我を経験した学校の体育の先生たちも『前十字靭帯を損傷しても、断裂しても歩けちゃうんだよね。だから、怪我をしたのに気づかないことが多いんだよね。霧野さんもそうだったんだよね。かわいそうに。』と言っていた。
付け足しで、『おまけに、4月に異動してきて20日に怪我したんじゃ、3週間しか経ってないのに言いにくいよね。それにうち(N谷高校)の生徒が転ばせたんでしょう。公務災害もいいところだよね。』と言ってくれた。
(K林さんて医師なのに、何も知らないんだなぁ。本当に医師免許、持っているのだろうか?よくそういうウソを言える。外科医のくせに。また、O関さんも自分が「前十字靭帯損傷」になったことない上に、勉強不足だよな、弁護士なのにしらべもしないのか、K奈川県人事委員会の審査会もその程度の審査会と思っているのか、バカにされているな、ぬんは思った。)
でも、結局、審査会は、ぬんの敗戦で終わったのようだった。
J事課の二人は、ニコニコ顔で帰っていった。
しばらくして、J事委員会から、「公務災害は認められない」という通知が来た。
それには「納得いかなければ、地方公務員災害補償基金神奈川県支部審査会ではなく、その上部組織の全国の問題を引き受けている地方公務員災害補償基金審査会に申し立てなさい。」と書いてあった。
ぬんは、訴えようかとも思った。
「事実は一つ。通勤途上(退勤)中に生徒の故意によって転ばされて、左膝全十字靭帯を損傷し、手術をしたということ。これは「公務災害」という事実である。」
でも、J事課、J事委員会そして審査会も県庁の傀儡の委員によって、ぬんは精神的にいじめ、遊ばれて、事実を歪曲されたこと。
だから、もう無駄だと思った。
みんな、グルなんだ。
それに、他の病気でいくつかの病院に通院をしている「障害者のぬん」のことは最初からJ事課は「障害者」として差別している。
ぬんの言うことなんて、「障害者」だからということで、まともに、聞いていない。
組織にとって、「障害者」は人間として扱っていない。
J事委員会だって、H谷川医師の公務災害という言葉を聞いて逃げ腰になって言った「(左膝全十字靭帯損傷の)疑い」という言葉だって嘘だと知っていただろう。
また、人事課の杉尾さんがぬんに言ったN本大学病院やM浦駅前整骨院から提出された「変形性膝関節症」ではないと、気になるところを直せば、【公務災害だと認める】と言ったことも嘘だった。
杉尾さんは、偽証した。
公務員なのに、堂々と偽証した。
結局、最初にH谷川医師が言った「疑い」という考え方を変えないし、逆にそれを逆手にとってあからさまにK奈川県は組織として、障害がある人を差別している。
通院している障害者に対して、組織は考えてくれるものだと思っていたが、障害があるということで、逆にぬんの足元をすくおうとしているのだ。
K奈川県のトップが度々言っている障害者と「共に生きる」ではない。
J事課は杉尾さんを代表格に「(障害者と健常者は)共に生きられない」
「(障害者と健常者は)共には生きることはない」
「(障害者と健常者は)共に生きるべきではない」と公言してしまったのだ。
こんな立場にいる組織にこれ以上傷つけられることが怖くなったぬんは、全国的な地方公務員災害補償基金審査会に申し出るのを辞めた。
もうこれ以上、傷つけられるのに怖かったからである。
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