第25話 C事室本口担当部長の篠崎さんへのハラスメント。
ぬんが高森さんからの精神的・肉体的パワハラと、その子分の細川さんと小野さんからの格下からの精神的パワーハラスメントや足を引っかけて転ばせるなどという肉体的いじめに悩んでいたころ、C事室にも同様におそらく悩んでいただろう篠崎さんがいた。
ぬんは、高森さんから命ぜられた仕事でよく、C事室に行っていたが、そこで政策推進担当部長の本口さんから、たびたび怒鳴りつけられている篠崎さんを見ていた。
篠崎さんは、主任主事というまだ若い職員だったが、人間が良くできていて、とても感じが良く、優しい人だった。
ぬんが行くと、仕事に関していろいろと相談にも乗ってくれた。
ぬんは、高森さんからのパワハラがひどく何度もK浜急行に飛び込もうとしていた身だったので、怒鳴られたり、身体的暴力を受けたりするというその辛さはよくわかっていた。
おそらく篠崎さんも、本口さんからひどいパワーハラスメントを受けていたのだろう。
入室すると、本口担当部長(その頃は担当課長だったかもしれない)が、事務机の上に座り、篠崎さんをからかいながら、度々怒鳴っている姿を見ていた。
本口さんは、トップからの深い信頼を受けていたので、本口さんから怒鳴られたことに対して何か言おうものなら、トップに対して意見を言っているようなことになり、何か言うことはできなかった。
それを知っている本口さんは、篠崎さんに対してやりたい放題だった。
「自分の後ろには、トップがいるんだぜ、自分に物申せば、トップに物申しているのと一緒だからね。覚悟はできているんだろうな。」と言う感じを漂わせていた。
そして、ぬんは本当に理解できなかったが、ここまで、本口さんは、篠崎さんにパワハラをしているのをJ事課は知っているだろうに、責められるどころか、知事に褒められたいのか、本口さんを担当課長から担当部長に格上げしていた。一体、何を考えているんだ。おかしい、この組織。
人の上っ面しか見ていない。
三階のC事室のS策推進グループが入っている事務室に行くと、いつも怒鳴り声が聞こえた。
ぬんも経験していたが、パワーハラスメントというのは、標的を見つけると、その人を潰すまでとことん遣り込める。
プライベートのことなら、「やめてください。」と言えるが、「職務上」という大義名分があってそれに対して、怒鳴るので質が悪い。
無理だとわかっていながら命令しておいてできないと
「仕事なんだよ、わかっているよね。やる気あるの?やる気ないからできないんだろう、バカ野郎!!仕事なめているんじゃないのっ!できないはずないだろう、早くやれよ。ちんたらやっているんじゃないよ。何時までかかってもいいから、しっかりやれよ。そして、俺のところに持って来い。」となる。
それが毎日だからたまったものじゃない。
周囲の人も、篠崎さんをかばったために、今度は自分が標的になったら嫌だから、何も言わず、黙って見ているだけ。
自分は一生懸命やっている、でも意味なく怒鳴られる、味方は誰もいない、仕事だから口答えもできない、やりきれないだけの仕事を命じられる、一生懸命やっても終わらない、また怒鳴られる、相談相手はいない、という魔の蟻地獄にはまっていく。
篠崎さんもそういう感じだった。
※ここでは、「篠崎さん」は、長時間労働とパワハラで数紙の新聞沙汰にもなっている話
この本口さんのやりたい放題には、ぬんも被害にあったことがある。
ぬんがさいたま新都心にある国の機関へ出張に出かけようとしたことである。
そこへ、高森さんがやってきて
「本口さんが、Rイヤルブルーティー(ワインボトルに入った高級茶)をM-Aフリカ共和国の大使に届けてくれって言っているから、持って行ってあげて。」と言われた。
「アポイントは取っているのですか?」
「アポイントを取ってなくて、急に行った方が会ってくれる確率が高いんだって。」
(高森さん、社会人として、まじめにそう思っているの?社会人の世界で、それも国と県との外交で、小さな外交と言っても、アポイントも取らず、一国の大使が誰かもわからぬK奈川県の職員がお茶を持ってきたからって会うの?それはないでしょう。)
「アポイントも取っていないのに、会っていただけるとは思いません。ということは、受付に渡してくればいいのですか?」
「霧野さん、何、言っているの?本口さんは、大使に渡してきてほしいって言っているのよ。全くもう、霧野さんって本当に気が利かない。」
うちのグループリーダーの守山さんも「それは無理だろう。」とチラ見していたが、また何か言って、自分が怒鳴られるのも嫌だったらしく口をつぐんだ。
ぬんは、どうせ会っていただくことはないと思ったが、N本大通りからSいたま新都心に行けば、乗り換えも1回で済むところをM-Aフリカ共和国フリカ共和国大使館に行くためにT急東横線に乗った。
高森さんがもらってきた本口さんからメモを見ながら、M-Aフリカ共和国大使館の住所の周りをうろうろ探していた。
全くわからなくて、歩いている人に聞いたところ、
「M-Aフリカ共和国大使館は引っ越しましたよ。」と教えてくれた。
全く違う場所で何か所も乗り換えていかなければならなかった。
うーん、困った。時間の余裕が・・・ない。
その時、スマホが鳴った。
県庁からだった。
(この電話、県庁からだけど、この最後4桁はどこの所属だろう?)
ぬんは、指に食い込んだ2本の重いお茶のボトルをやっと抱えながら、電話に出た。
電話は、C事室のS策推進グループの軽田健次郎グループリーダーからだった。
「霧野さん、すみません。何かうちの本口担当部長が無謀なこと言ったそうで。約束もしていないM-Aフリカ共和国の大使が会ってくれるはずないじゃないですかね。」
「はあ、でも、うちの高森さんが本口さんに言われてきたそうで。会ってくれるはずはないと言ったら、高森さんにすごく怒鳴られちゃって。」
「いやあ、ひとえにうちの本口担当部長が悪いんです。すみません。今、どこですか?その駅まですぐに取りに来ますから。」
「あ、でも、いいです。瓶、持ってSいたま新都心まで行ってきますよ。会議まで間に合わなくなってしまいますし。」
「あ、でも、もううちの課のものが取りに出ているんで、あと30分待っていただければ、着くと思います。すみません。もう少し待ってください。よろしくお願いします。」
「あ、じゃあ、わかりました。」
ぬんは、C事室の人が取りに来るまでの間、駅の階段の踊り場で45分ぐらい待ち、Rイヤルブルーティ2本を渡し、Sいたま新都心に向かった。
ワインボトルの瓶にお茶が入ったものを2本、ずっと持って歩いていたので、すっかり手がしびれていた。
次の日の朝、職場で机拭きをしていると、高森さんが出勤してきたので、「おはようございます。」というと、「霧野さん、役に立たなかったんだって。本口さんに聞いた。プレゼントも届けられないなんて、子どものお遣いにも劣るわね。」とのことだった。
またしばらく、K浜急行のG明寺駅のホームに立つ日が続いた。
菊田班長、二瓶副課長や合祖副課長から受けた言葉の刃によって障害者になり、とうとう高森担当課長から顔を傷つけられ、高森担当課長の激しいいじめ、細川さんと小野さんという下からの突き上げ、終わることない続くパワハラの日々、挙句の果て、障害者だから理由だけで昇格もさせない人事課。
県庁のひどい人間関係が自死させたり、障害者にさせたり。
今日も電車に警笛を鳴らされ、ピカッと電気をつけられて、はっと我に返り、家に帰る日だった。
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