第24話 高森担当課長の収賄。その告発と隠ぺい。
また、今年も台湾の輸出事業に時期になった。
高森担当課長は、小野さんに
「小野さんはもう2度目だから、大丈夫よね。今回は一人で行ってきて。ずっと、催事場にいなくてもいいからね。適当に休み時間を取ってね。」と小野さんに任せてしまった。
ぬんは、普段の小野さんの仕事の態度を見ていて、上司が誰もいない台湾で5日間、小野さんが仕事に没頭するとは到底思わなかった。
そのあと、ニタっと嫌な笑いを浮かべ、細川さんにこそこそと
「美味しいパイナップルケーキの店を見つけたんですよ。仕事は、そこそこ催事場にいればいいだけだし。探しに行ってみますね。」
「大丈夫よ。誰も気づかないわよ。楽しみにしているから。」と細川さんは言っていた。
5日間、毎日連絡はあった。
ぬんはそのパイナップルケーキのお店に本当に行ったのかなと思っていた。
小野さんが台湾出張から帰ってきた。
「台湾のお土産でーす。」と小野さんはB熱山丘(Sunny Hills)のパイナップルケーキをうちのグループだけ配った。
「美味しいパイナップルケーキの店があるのを調べて行ったけど、とにかく遠かったぁ。高かったし。本当は、担当課長と細川さんと私だけで食べようかと思ったんだけど。他の人たちがかわいそうだから買ってきてあげましたよ」
高森さんが何かいうかと思ったら、
「あら、Sunny Hillsまで行ってくれたの?催事場があるデパートからじゃ遠かったでしょう。大変だったわね。ここのパイナップケーキ美味しいのよね。ごちそうさま。」
と言った。これには、私も呆れて言う言葉もなかった。
日々、ぬんに対しては怒鳴りつけたり、電話の受話器や本を投げつけたりしている高森担当課長が、小野さんにはこの態度なのだ。
そして、小野さんも高森さんがこう言った後、小野さんはぬんに向かって、あっかんベーをしたりして。
精神を病んで2年間休んでいた細川さんも、精神を病んでいたとは思えないほど、仕事のことでぬんに強気で冷ややかにいろいろ言ってくる。
県庁って本当にひどい。最悪の職場だ。
ぬんは、引き続き高森さんに受話器を投げ続けられ、左手でよけていたので、左から青あざが消える時はなかった。
このような毎日が続き、10月でもいいから異動させてほしいと、守山グループリーダーに言っている中、神奈川県のとある食品の協会の会長からぬんの携帯に電話がかかってきた。ほかの2つの協会の会長と話し合った結果、ぬんに言うことにしたということだった。
ぬんは、その食品の神奈川県のコンクールの審査員をしていて、その会長とはその食品についていろいろ話し合うような関係だった。
しかし、携帯に電話をかけてくるなんて珍しいなと思って電話に出た。
「はい、霧野ですけど。」
「霧野さん、今、大丈夫?」
「大丈夫です。」
「高森さん、そばにいるんでしょ。だから、返事は、『はい』だけでいいから。」
「はい。」
「やっぱり言っておいた方がいいかなと思ってさぁ。昨日、自分と他二人の会長とおたくの高森担当課長さんと食事したんだよ。でもさあ、結構、高い店に行ったんだけど、おたくの高森さん、食事代も払わないわけだよ。まあ、さ、それはしょうがないかなと思ったんだけど、今度、俺とさ、他2人の会長で女の人がお酌してくれるキャバクラ?行こうってことになってさ。そのこと、お宅の高森さんに話して、『じゃあ、ここで』って言ったのにさぁ、、、普通なら『じゃあ、失礼します』って帰るだろう、でも、帰らないわけさ。やったら笑顔で、ずっと後についてきたわけだよ。『え、来るの』と思っていたんだけど、結局、最後までついてきたわけ。」
「はい。」
「それで、行ったらさぁ、まるで自分が中心人物で『ご招待、受けちゃって。』なんていいやがってさぁ。
楽しそうに高いお酒をお代わりして飲んでるわけ。
2時間ぐらいして、お開きになってさ、みんなでお金出し合って精算しようとしたら、お宅の高森さんさぁ、『お手洗いに行ってきます。』って行って、席に戻らないでさぁ、入り口が出て行ってしまったんだよ。
結局、お金を出さなかったわけだよ。
それもさ、霧野さん知っているかわからないけど、キャバクラって結構高いんだよ。四人で10万円ぐらいするの。
精算の時に、キャバクラなんかで、もめることみっともないから、3人で払ったけど。
そのあとも高森さん、『お金、出しましょうか?』もないわけ。
それで、『ごちそうさま!!』だってさぁ。
勝手についてきて、お金も支払わなくて。『え?』って感じだったよ。
ケチで支払わないのはしょうがないけど、それより問題は、公務員が民間の人にたとえ2、3万円でも、ごちそうになっていいのかなーってこと。霧野さん、まずいよね。
自分たちも贈賄とか言われたくないからさ、払ってほしいだけど、払う気がないって収賄じゃないのかな。まずいよね。」
「はい。そのとおりですね。」
ぬんは、「S湘きんじろう」の時も、お金のことでもめたのを知っていたので、会長が言っていることがよ―くわかった。
高森さんは、最初からキャバクラでお金を払う気なんかなかった。
各食品協会の会長たちだから、事務局で接待交際費として落とせると思っていたのかもしれない。
でも、今の世の中、会長たちだって、キャバクラは自費だろう。
高森さんは公務員としては接待を受けたのだから、収賄だ。下手をすれば懲戒免職だ。それなのに。。。いいのか?
電話を切った後、ぬんはどうしたらよいのかわからなくて、副課長の中田さんに課長から電話があって、こういう顛末だったと話した。
ぬんは、上司から高森担当課長に何かお叱りがあっても良いと思っていた。
しかし、中田副課長の回答は
「聞かなかったことにしましょう。我々は、知らなかった。それでいいでしょう。面倒なことに巻き込まれたくないし。部下の管理監督責任を取らされても嫌だし。」ということだった。
ダメだ、県庁は悪いことに蓋をかぶせてしまい、なかったことにしてしまう組織なんだ。
罪を罪とはっきりさせない組織なんだ。
がっかりしたが、こんな組織なんだとあらかじめわかっていた気もして、何か言う気も失った。
(せっかく、民間の食品の協会の会長が、思い切って言ってきてくれたのに、また、潰してしまった。)
でもここで、ぬんが食品の協会の会長の話をもっと上の人に言えば、人事課から、また、何かしら報復が必ずやってくる。
ただでさえ、障害者差別を受けているぬんだ。
障害者だから副主幹にする順番も76番目。
障害者ハラスメント甚だしい。
正しいことを言えば、上司から嫌われ、ごく普通の昇進+障害者ハラスメントという形で、道から外されるどころか、下手したら降格になるかもしれない。
そんなもんだ。
県民である会長はおかしいと言ってきてくれたが、県の組織は県民が考えているような「公正・透明」な組織ではない。
そういうことをきちんと取り締まる所属ない。
上向きの人は、自分が偉くなることしか頭にない。
自分に都合が悪い話には、かかわりたくない。すぐ、蓋をかぶせる。
その後、会長から「あの話どうなった?」と聞かれたが、「上司には話したんですけどね。」という答えしかできずに終わった。
思い切って言ってきてくれた会長には、本当に申し訳ないことをした。
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