第17話 トップが変わった。K奈川県の方向転換。
2012年K奈川県のトップが、M沢さんから元ニュースキャスターのK岩さんに変わった。
課長の合川さんは、3年契約の約束だったので、また新たな3年を迎えるはずだった。
しかし、新しいトップが新体制でやりたかったのか、合川さんはまず1年という契約になった。
K奈川県の地産地消の振興や民間事業者とのつながりを深める、という様々な実績も上げてきたのに、C事室に契約条件を変えられた合川さんはすごく怒った。
「K奈川県はひどいな、勝手に約束を破る。」
合川さんは、C事室に呼ばれて帰ってきてから、日々考えこむ時間が多くなっていった。
K奈川県のために数々の実績を上げてきた合川さん自身の考えを聞かずにいきなり契約条件を変えたのだ。
合川さんが腹を立ててもしょうがない。
でも、それが考えこむ時間が長くなったのかはわからない。
そして、だんだん新しいトップのペースになっていった。
いつの間にか、ぬんなどが頑張ってきたK奈川県の地産地消は、K奈川県にとって仕事として中心ではなくなっていった。
ぬんは、K奈川県のために一生懸命、頑張ってくれた合川さんの3年間の意思を継ごう、そして、プロポーザルで発表した通り、やり遂げたいと思っていた「K奈川県の地産地消~農業者から商業者までの連携~」を頑張ろうと思った。
しかし、どんなに合川さんがK奈川県の地産地消の事業を、一生懸命、トップに企画を上げても、トップは、自分の考えている事業があるようで、全く違うことに方向転換し、地産地消は事業としては少しずつ縮小されていった。
半年が経ったころ、合川さんは、「今度の3月でK奈川県を辞める」と言い出した。
合川さんの気持ちはわかる。
そして、その事業を一生懸命やってきたぬんは、始めて3年やっと軌道に乗ってきたばかりだったので、失意のどん底に落ちた。
合川さんが頑張ってきた3年間は、K奈川県庁の方向転換で、ほぼ無駄になったのだ。
全国の他の都道府県が「自分の県の地産地消を多くのお金をかけても売り込みしなくては・・・」と始めたこの時期に、K奈川県だけが手を引いていくなんて、「えっ?」という感じだった。
合川さんは、「K奈川県の食」を私に託してくれた段階で、民間企業にも通じるよういろいろな食の資格を取るように言った。
そこで、ぬんは、野菜の育てるところから流通、そして、食のコーディネートができるよういろいろな資格を取った。
そのおかげで、県内の農業者、仲卸の人、商業関係の人たちから信用してもらうことができた。
K奈川県の農産品、畜産品、水産品そしてそれらの加工品、それらがやっと、全国に流通できるチャンスが来たのに残念だった。
状況はわかっていたが、ぬんは、再度、合川さんに聞いた。
「どうしてお辞めになるのですか?」
「もう今までどおりのK奈川県の農産品の販売戦略はできないと思うよ。霧野さん、ごめんね。こんな形でやめてしまって。霧野さんだけが、僕の期待通りのK奈川県という企業の事業・企画を完璧にやってくれる人だったよ。」
確かに、合川さんがぬんへ数回くれた人事評価は、4.25という恐ろしく素晴らしい数字だった。
人事評価を数字でもらうことになってから、最初で最後?の数字だろう。
ぬんは失意は、ものすごく大きく、K奈川県が重い腰を上げてやり始めてくれたと喜んでいたK奈川県の食の関係者たちに顔向けできないと思った。
直前のN業振興課では、合祖さんが農業者から2億円取り立てられないというだけで、2.5などという、自分勝手な思い込みの人事評価の数字をつけてパワーハラスメントやセクシャルハラスメントをされてきたが、やっとぬんの能力を認めてくれて、その努力に正当な評価をしてくれた合川さんがいなくなる。
合川さんが辞めるのが近づいたころ、次の課長を採用する人事が行われた。43人希望者がいたそうで、中の人1人が女性だったということだった。
すこし経ったある日、その採用の面接が行われた。
合川さんもその面接に立ち合っていたので、
「次の課長はいかがでしたか?」
「うーん、どうかね。またわからないけど。どの人が霧野さんの能力を生かしてくれるかね。霧野さんの人一倍頑張るやる気と素晴らしい能力をわかってくれるといいなと思っている。」とのことだった。
3月の末になった。
S南ゴールドは、晩柑なので年度末のシーズンがデパートや大型直売所での販売とか、ホテルでのスイーツイベント企画とか忙しかった。
ホテルやレストランで行われた「S南ゴールドスイーツ大作戦」は、横浜や箱根のホテルやレストランにに農協から仕入れたS南ゴールドを県庁の車で配って歩き、それぞれのホテルやレストランで創意工夫をしたスイーツを2週間限定などで提供してもらった。
ぬんの企画は、民間企業の人たちのおかげでうまくいって、また、民間企業の人たちからの評価も高かった。
集客力もものすごく良かったので、来年はきちんと仕入れてもいいから、是非またK奈川県主導でやってもらいたいとのことだった。
合川さんの指導も良かったし、K奈川県の民間企業の人たちも信用してくれて、多大なる協力してくれた。
3月末、合川さんは辞めた。
ぬんの辛い気持ちは、なかなか癒せるものではなかった。
でも、ぬんには合川さんが苦労して作り上げている大切な「KながわNBS課」がある。
もっと多くの生産者である入り口の人たちから、ホテル、デパート、スーパーマーケットなど出口戦略までの人たちに、KながわNBS課の存在を知ってもらって、この課を使って、K奈川県の魅力をPRしていってほしい。
それがぬんの願いだった。。
4月1日から高森美智子さんという課長が来た。
43人の中でたった一人の女性が課長となったのだ。
女性を登用したことを民間から登用したことをアピールしたかったのか。
外資系企業でバリバリ働いてきて、英語がペラペラということで、C事室C査課のK際戦略担当課長も兼務していた。
背が低いからか、いつもヒールを履いていた。
太ってはいないものの、がっちりとして、色が黒かった。
髪の毛は肩ぐらいの長さでパーマをかけていた。
いつも肩にはよれよれで緑色バックスキンの古いルイ・ヴィトンのショルダーバックをかけていた。
歩く時も、大股で少しがにまたでドスドスと歩いていた。
そして、「あー、ははは」といつも大声で笑う人だった。
私は、少し安心した。所属もKながわNSB戦略課も変わらずだったし。。。
引き続き、ぬんは地産地消の入り口から出口までの戦略を立てていける。
その考えが、1年後には崩壊するどころか、精神的でなく、肉体的にも壊されていく始まりとは、この時のぬんはわかっていなかった。
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