第37話 ゾンビを生み出す者
ダンテ・クリストフ。
大男ゾンビの話にも出てきた、ゾンビを生み出しているゾンビ事件の元凶。それがこの男なのか。
「あれがダンテ・クリストフ。私たちをゾンビにした悪の元凶です」
「うわぁ!ニニカさん!?急にビックリした・・・!わ、わざわざ説明ありがとうございます」
ボクの傍にいたニニカさんはあまり深刻そうではないトーンで紹介をしてくれたが、彼女のそのテンションはちょっとこの場にそぐわない気がした。何せ諸悪の根源が現れたわけだし。実際、ニニカさん以外は物凄くピリピリした空気を発している。
特にメアリさん。
「ルイの仇!!よくも!!」
メアリさんは激昂し、言葉を発して間もなく手にした刀を強く握りしめ、ダンテに飛び掛かり、空中で刀を振り下ろす。その糸でダンテをからめとろうというのだ。だがダンテは別のコンテナへと跳びうつり、メアリさんの攻撃を回避する。
「チィ・・・!」
メアリさんが再び襲い掛かろうとするが、すぐにその動きが止まる。気づいたのだ。ダンテが今、ボクや誘拐されていた人たちの傍のコンテナの上にいることに。つまり、ボク達を人質にしようと思えばできる位置にいるのだ。
「ルイの仇?ひどい責任転嫁だ。ルイの首を落としたのはメアリさん、お前だろ?」
「貴様・・・!!」
メアリさんは怒りをどうしても隠しきれず、歯噛みする。事情が全く分からないが、凄く物騒な事を言っている。
「ちっ・・・。フランシス、帰るわよ」
「よろしいんですの?」
「あの状況じゃ手の出しようがないでしょ」
「・・・そうですわね」
「アピリス、とにかくあなたはもう何もせず、故郷に帰りなさい!分かったわね」
パナテアさんとフランシスさんは、2人揃ってすぐに夜の闇の中に消えていった。
「お姉ちゃん!待って・・・!」
「あらら、逃げられてしまった」
アピリスさんが呼びかけるが、すでに応える者はいない。アピリスさんは深く落胆し、そしてその感情を、軽口をたたくダンテへの怒りへと転化させたようだ。
「ダンテ・・・!せっかくお姉ちゃんに会えたのに、お前のせいで・・・!」
「それも心外だな。君たちの姉妹喧嘩は私とは関係ない内容だったはずだ。・・・・ああ、もちろん、そもそも君たちが離ればなれになった原因が私だというのは理解しているよ」
ダンテは相変わらず慇懃無礼で挑発的な態度を貫く。さらにはアピリスさんがそれ以上何か言う前に、その会話の矛先を変えた。ニニカさんだ。
「やあニニカさん、私の仲間になる話は前向きに考えてくれたかな?」
「それは無いって言ったでしょ。あんたがゾンビ生み出すために酷い事するのやめるなら私の仲間にしてやってもいいよ」
「そうか・・・やっぱり君とは同じゾンビ好きとは言え、大事なところで考えが異なるようだね。でも私はまだあきらめないよ。君から貰った眼球も大事に取っている」
そう言うとダンテは小さなガラスケースのようなものを出した。その中には・・・まさか、人間の目玉が入っている!?
「げげ、それ私の目玉!?勘弁してよ、マジキモイんだけど」
ニニカさんは心底イヤそうな顔で呻く。ニニカさんの目玉!?よく分からないが、そんなものを持ち歩くなんて、容姿端麗な見た目で補えないほど確かにキモイ。
「そんな事より、一体何しに来たんだ、お前は」
変な話になりかけたのを戻そうとしたのか、ジョージさんが比較的冷静そうに、ダンテにそう問いかける。一方ダンテは、ニニカさんの時とはうって変わって、あまり興味のなさそうな顔でジョージさんに視線を移す。
「パナテアさんに会えそうだったんで、わざわざ来たんだよ。まあ、すぐに逃げられてしまったけど」
大して残念でもなさそうに、形式だけ肩をすくめる。
「できれば協力してほしかったんだが、まあ仕方ない。今日はそれだけさ」
「お姉ちゃんから私たちの蘇生技術の情報を聞き出して悪用しようとしてるのね・・・!」
「まあ・・・ありていに言えば、そうだな」
「ふざけるな!私たちのお母さんを殺し、家族を滅茶苦茶にしておいて・・・・!」
「そうよ!全てのゾンビを生み出して人々を生み出す元凶、ダンテ・クリストフ!貴様だけは絶対に許さない!」
アピリスさんに続いてメアリさんも改めてその怒りをもってダンテを糾弾する。だが、その発言にダンテは少し意外そうな顔をした。
「全ての?」
その直後、彼は何かに思い当たった様子で、右手を自らの顎に添え、片方の眉根を上げる。
「別にそう思われても構わないが、私だけがゾンビを生み出してるわけじゃない」
「手下のゾンビ達にも手伝わせてるんでしょ!?そんなの、貴様がやってるのと同じじゃない!」
「まあそれもあるけど・・・」
「お、おい・・・!」
ここで急に、ジョージさんが慌てて口を挟もうとしてきた。だが、ダンテは止まらない。ジョージさんを指さすと、こう告げる。
「その男をゾンビにしたのは私じゃない。彼をゾンビにしたのは、アピリスさんじゃないか」
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