第14話 双子姉妹との出会い②
一年生の時だけ選択授業というものがあり、音楽と芸術で分かれることになっていた。
しかもこの授業は二クラス合同授業らしく、一組の俺たちは二組の生徒と一緒に授業を受けることになるみたいだった。
ちなみに俺が選んだのは音楽の方で、同じく音楽の授業を選んでいた朝日奈と一緒に音楽室に向かっていた。
「朝日奈も音楽の授業を選んだんだな」
「そうですね」
「ちょっと意外だな。てっきり楪と同じ方に行くと思ってたんだけど」
楪は音楽センスが絶望的にないらしく、美術の授業を選択していた。
二人はいつも一緒にいるからてっきり同じ授業を選ぶと思っていたが、なぜか朝日奈は音楽の授業を選択してた。
「私には芸術のセンスがないので」
「そうなのか?」
「はい。あまりにも絵が下手過ぎるので絵を描くことは封印しました」
「そのレベルなのか? それは見てみたいな」
「絶対に見せませんからね?」
「どうしても見せてくれないのか?」
「絶対にダメです!」
こんなに必死になられると何が何でも見たくなってしまう。
朝日奈は一体どんな絵を描くのだろうか。
「楪なら写真を持ってたりしないかな」
「よ、陽子ちゃんに私の絵のことを聞くのは禁止です!」
「ほぉ、その反応は楪は朝日奈の描いた絵の写真を持ってるな?」
「し、知りません! とにかく陽子ちゃんに私の絵のことは絶対に聞かないでください! 聞いたら怒りますからね!」
ぷくぅっと両頬を膨らませた朝日奈は俺のことを睨みつけてきた。
(可愛すぎるだろ)
怒っている顔すら天使級に可愛いので全く怖くなかった。
むしろ可愛いくらいだ。
「残念。朝日奈の絵を見てみたかったんだけどな。怒られたくはないから、諦めるよ」
「そんなに私の描いた絵が見たいんですか?」
「まぁ、気になりはするな。どんな絵を描くのか」
「笑わないって約束してくれるなら、見せてあげてもいいですよ」
「それは保証できないからやめとくよ。それで朝日奈のことを傷つけたくはないしな」
朝日奈の絵がどれほど下手な絵なのか知らないけど、絶対に笑わないなんて自信は俺にはなかった。
もしも、朝日奈の絵を見て笑って、それで朝日奈が傷つくなら避けるべきだ。
もちろん朝日奈がどんな絵を描くのか物凄く気になるけど、絵を見る方法はいくらでもあるし、無理やり見せてもらう必要はない。
「だから、無理して見せてくれなくてもいいよ」
「分かりました」
音楽室に到着した。
中に入るとすでに生徒がチラホラといて、席に着いていた。
どうやら一組と二組で分かれて座っているみたいだった。
右側の席に一組、左側の席に二組の生徒が座っていた。
(あれは・・・・・・)
二組の方に見覚えのある髪色の女子生徒がいた。
銀白色と青色。
あんなに特徴的な髪色を見間違えるわけがない。
間違えなく昨日出会ったあの二人だ。
同い年くらいかとは思っていたが、まさか同い年だったとは。
それに同じ学校。
向こうの世界の時もそうだったが、ハーレム候補となる女性と俺は運命という糸で結ばれているらしい。
この偶然を運命と言わずに何と言うのだろうか。
(まさか、こんなに早く再会することになるとはな)
「永見さん。どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。俺たちも座ろう」
「はい」
席は自由席みたいだったので、俺と朝日奈は空いている席に横並びで座った。
☆☆☆
授業の始業のチャイムが鳴り音楽室に女性の音楽教員が入ってきた。
教室の真ん中の通路を通り、ピアノのところまで歩くと湊百合に授業の初めの挨拶をするように言った。
「起立~。礼~。お願いします~」
百合の挨拶に続き俺たちも挨拶をした。
「とりあえず、私の自己紹介からしましょうかね」
ホワイトボードの前に立った女性の音楽教員は自分の名前をホワイトボードに書いた。
「これから一年間、皆さんの音楽の授業を受け持つことになりました
この前のゲームセンターで会った藤宮の友達二人もそうだったが白樹学園の女性はレベルが高い。
黒色のロングヘア、端正な顔立ちの美人顔、大人の女性特有の余裕のある雰囲気を纏っていて、俺のハーレム候補にしたいくらいに美しい女性だった。
小鳥遊は体のラインが分からないワンピースを着ていたのでおっぱいの大きさまでは分からなかったが、『透視』のスキルを使って下着まで透視して見てみると小鳥遊のおっぱいの大きさは天羽くらいだった。
ちなみに下着は纏っている雰囲気にピッタリなセクシーな紺色のやつを身に着けていた。
「それじゃあ、早速授業を始めたいと思います。皆さん教科書は持ってきてますか? 教科書の五ページを開いてください」
☆☆☆
授業が終わり朝日奈と一緒に音楽室を出ようとしたところで声を掛けられた。
「ねぇ、そこのあんたちょっと残ってくれない?」
振り返るとそこには百合と葵がいた。
「あれ、昨日のお二人じゃないですか。同じ学校だったんですね」
「白々しいわね。どうせ私たちが同じ学校だって知ってて助けたんでしょ。やっぱり男なんて信用できないわ」
完全に誤解なのだが、百合は俺のことを睨みつけてきた。
「あの、この方たちは?」
朝日奈が心配そうな顔で聞いてきた。
「悪い。後で説明するから先に教室に戻っててくれないか?」
「分かりました」
コクっと頷いた朝日奈は何も聞かずに教室に戻って行った。
物分かりがよくて助かる。
さて……俺は二人の方に向き直った。
「まず、言っておくけど、完全に誤解だからな。二人が同じ学校だったってことはさっき知ったしな。こんな偶然ってあるんだな」
「そんな嘘いいから。どうせ私とお姉の体目当てなんでしょ」
百合の言っていることはあながち間違ってはないので、俺は否定することはしなかった。
今この二人のことを相手にするのはあまり得策ではない。
昨日確認して、この二人の俺に対する好感度は低いことは知っている。
初対面で好感度が50を下回っているのは珍しい。
向こうの世界でもたまにいたが、そういう時は大抵男嫌いか、男に対してトラウマを持っている人物だった。
きっとこの二人も男に対して何かしらの嫌悪を抱いているのだろう。
そんな相手の好感度を上げるのは難しい。
だから、二人のことを攻略するのは後回しにした。
「別に信じてくれないならそれでいいよ。じゃあな、次の授業が始まるし俺も教室に戻るよ」
このまま話していても俺への警戒心が増すだけだろうから、俺は手短に話を切り上げ、その場を後にして教室に戻った。
☆☆☆
次回更新4/20(日)19時
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