第3話 入学式編③
白樹学園の校門の前に到着した。
事前の案内状によれば、校門を少し過ぎたところに掲示板があってそこにクラス分けの張り紙が貼られていると書かれていた。
その案内状の通り、校門から少し歩いたところに掲示板があって人だかりができていた。
「あそこにクラス分けが書いてあるみたいだな」
「そうだね」
「一緒のクラスだといいな」
「うん」
俺たちもその人だかりに混じって自分の名前が何組のところに書いてあるのかを探した。
クラスは全部で六組。
俺の名前は一組にあって、愛理の名前は三組にあった。
「残念。違うクラスみたいだな」
「そうだね」
〈最悪。天斗と同じクラスがよかったのに〉
愛理の心の声を聞いた俺は愛理の頭をポンポンとした。
「ま、クラス替えは毎年あるみたいだし、一回くらいはクラスになれるだろ」
「そうだね」
自分のクラスを確認した後は入学式が始まるまで自分のクラスで待機することになっている。
なので、俺たちは下駄箱に向かって靴を上履きに履き替え、自分のクラスに向かった。
「じゃあ、また後でな」
「うん」
一年生の教室は三階だった。
三階に到着した俺たちはそれぞれの教室に向かった。
「さて、どんなクラスメイトがいるかな」
俺は一組の教室に入った。
現在、教室内にいたクラスメイトは六人。
男子が四人と女子が二人だった。
(おー。さすがにレベルが高いな)
教室内にいた六人は芸能人と言われてもおかしくないくらいに美男美女だった。
「お、七人目が来たみたいだな。おは」
男子のうちの一人が俺に挨拶をしてきた。
クラスメイトとは良好な関係を築いていた方がのちのちの学校生活が楽になるのは向こうの世界で知っていた。
だから俺は挨拶をしてきたその男に挨拶を返した。
「おはよう」
「俺は
「永海天斗だ。こちらこそよろしく」
沖田が握手を求めてきたので、俺はそれに応えて沖田の手を握った。
その瞬間、俺は沖田に『読心術』のスキルを使った。
これでもし、心の中で俺の容姿について何か言ってたらこいつとは仲良くしないつもりだった。
〈次はどんなやつが来るかな~。楽しみだ!〉
しかし、沖田の考えていることは俺以外のことだった。
それが分かったので俺は『読心術』のスキルを解除した。
「そうそう。席はホワイトボードに紙が貼ってあるから、それ見て自分の席を確認したらいいぜ」
「分かった」
俺は沖田に教えてもらった通りにホワイトボードに貼られた紙を見て自分の席を確認した。
(へぇ~。俺の席はそこか)
向こうの世界でも俺の席はそこだった。
いわゆる主人公席というやつだ。
俺の席は窓側の一番後ろの席だった。
どうやら神様はこっちの世界でも俺に主人公になれと言っているようだった。
(なるしかねぇよな。主人公)
初めからそのつもりだったが俺は改めて決意した。
☆☆☆
主人公席に座って教室にやって来るクラスメイト達を見ていると見知った顔が教室に入って来た。
俺がさっき助けた朝日奈静葉だった。
自分の名前しか探してなかったから気が付いてなかった。
「同じクラスだったのか」
教室に入って来た朝日奈の隣には金髪ストレートヘアの美少女がいた。
朝日奈とはまた系統の違う美少女。
朝日奈が可愛い系の顔なら、金髪ストレートヘアの美少女は美人系の顔だった。
これまで教室に入って来たクラスメイト達にも挨拶をしていた沖田は二人にも挨拶をしていた。
沖田と挨拶を交わした二人はホワイトボードの前に移動し自分の席を確認してこちらを振り返った時に俺は朝日奈と目が合った。
「あ、永海さん」
俺と目が合った朝日奈は俺の元にやって来た。
「同じクラスですね」
「そうみたいだな」
「深海さんは違うクラスなんですね」
「愛理は三組だったよ」
「そうなんですね。ところで、気になっていたのですが、永海さんは深海さんとお付き合いをされているのですか?」
「いや、付き合ってはないな。愛理は幼馴染だな」
「そうなのですね」
俺と朝日奈が話していると、朝日奈の隣にいた金髪ストレートヘアの美少女が話しかけてきた。
「ねぇ、もしかして静葉のことを助けたのってこの人?」
「はい」
「ふ〜ん。そうなんだ」
金髪ストレートヘアの美少女は俺のことを品定めでもするかのように見てきた。
「そんな度胸あるように見えないけどね」
「陽子ちゃん。失礼ですよ」
「ごめん。あんたもごめんな」
「いや、いいよ。自分でも分かってるからな。モブ顔だってことくらい」
自分の顔が人助けをする度胸があるような顔に見えないことは自分が一番分かっている。
「そ、そんなことはありませんよ」
「ありがとな。お世辞でも嬉しいよ」
「お、お世辞ではありませんからね」
朝日奈が不満そうに頰を膨らませたのを見て『読心術』を使うまでもなくお世辞ではないことは分かった。
俺と朝日奈はしばらく無言で見つめ合った。
「はいはい。見つめ合ってるとこ悪いけど、私の自己紹介していい?」
「そ、そうですね」
顔を真っ赤にした朝日奈は一歩後ろに下がり金髪ストレートヘアの美少女の後ろに隠れた。
〈うぅ、恥ずかしいです〉
恥ずかしがっているのが分かったから俺は朝日奈に対して『読心術』のスキルを使った。
使わなくても恥ずかしがっているのは目に見えて分かるけど、これが『読心術』の醍醐味みたいなものだ。
だから俺は恥ずかしがっている朝日奈にあえて『読心術』のスキルを使った。
「てことで、自己紹介させてもらうね。私は
「永海天斗だ。こちらこそよろしく。二人は友達なのか?」
「友達っていうか親友かな。静葉にだったらどんなことでも話せるし、相談できるから。だから、さっきは失礼なこと言ったけどお礼は言っとく。静葉を守ってくれてありがと」
楪は俺に向かって頭を下げた。
「何かされる前に助けることができてよかったよ」
「ほんとそれ。マジでありがと。静葉のことを守ってくれて」
「どういたしまして」
「私からも、もう一度お礼を言わせてください。ありがとうございました」
朝日奈は深々と頭を下げて本日二度目のお礼を俺に言った。
「お礼、何がいいか考えておいてくださいね」
「なんでもいいのか?」
「私にできる範囲でしたら」
「エッチなことはダメだからね。静葉にはまだ早いんだから」
「よ、陽子ちゃん何言ってるんですか!? 永海さんがそんなこと言うわけないじゃないですか!?」
「ちぇ、エッチなことはダメなのか」
「え、エッチなことをさせるつもりだったのですか!?」
「なんてな。冗談だ」
「もぅ、やめてくださいよ。ビックリしたじゃないですか!?」
あたふたしている朝日奈のことを見て俺と楪は顔を見合わせて笑い合った。
「あはは、あんた最高! エッチなことさせるなら私にしなさい。いくらでも相手してあげるから♡」
「じゃあ、楪に相手してもらうかな」
「だ、ダメです! そ、それなら私がします」
そう言って顔を真っ赤にしている朝日奈のことを見て俺と楪はまた顔を見合わせて笑い合った。
「さすがに今日初めて話した人とエッチなことをするようなビッチじゃないから。私。それに初めては好きな人に捧げるって決めてるから。だから、ごめんね。永海君」
楪は俺に向かってウインクをしてきた。
「なんかフラれた気分だな」
「あはは。まぁ、もし、私の人生で初めて好きになる男の子が永海君だったら私の初めてをあげるよ♡」
「それは何が何でもならないとだな」
俺は楪に向かって『好感度』のスキルを使った。
楪の俺に対する好感度は朝日奈と同じ60だった。
初対面で60はいい方だ。
普通は50だからな。
「とにかくお礼はエッチなこと以外でお願いします」
「て言われてもな。お礼なんてしてもらわなくてもいいんだけどな。朝日奈みたないな可愛い子と知り合いになれた時点で俺にとっては十分過ぎるくらいだし」
「ダメです。それでは私の気が済みません。助けていただいたのですからお礼はちゃんとします」
「でもな~。エッチなことはダメなんだろ?」
「そ、それはダメです。それ以外でお願いします」
「それ以外か~。じゃあ、今度何か奢ってくれよ」
「そんなことでいいのですか?」
「あぁ、それでいいよ」
「分かりました。永海さんがお好きなものを奢らせてもらいます」
お礼の話がまとまったところで、教室に女性の教師らしき人物が入ってきた。
教室の後ろにある壁掛け時計を見ると入学式の開始時刻になろうとしていた。
☆☆☆
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