朝日奈静葉編
第1話 入学式編①
「……様。天斗様。朝ですよ。起きてください」
その声で俺は目を覚ました。
目を開けると黒髪ショートカットのメイド服を着た美少女がベッドの側に立っていた。
彼女は俺の専属メイドの
俺は昨日から愛理と一緒に叔父から入学祝いで貰った三階建ての一軒家で暮らしている。
「愛理。おはよう」
「おはようございます。天斗様」
「様はやめろって言っただろ。昔みたいに天斗でいいよ」
「そういうわけにはいきません。私は雇われの身ですから」
〈本当は私だって昔のように天斗って呼びたい。でも、無理。使用人っていう仮面を付けてないと天斗を好きな気持ちが溢れちゃう♡〉
というのが愛理の本音らしい。
俺は『読心術』のスキルを使って愛理の心の声を聞いた。
愛理はどうやら俺のことが好きらしい。
それに気が付いたのはつい最近のことで、好奇心で愛理に『読心術』のスキルを使って発覚した。
俺が初めて愛理と話をしたのは五歳の時だった。
愛理の母親(現メイド長)が叔父の家で働いていて、正月に叔父の家に行った時に愛理の母親から紹介された。
お互いが小学生の頃は俺が叔父の家に行く度によく一緒に遊んでいたが、中学生になってからは遊ばなくなり、話もあまりすることなく、顔を合わせた時に挨拶をするくらいの関係になっていた。
てっきり、愛理に嫌われていたのかと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
愛理の心の声を聞く限り、いわゆる好き避けというやつなのだろう。
俺のことを好きだからこそ愛理は俺のことを避けていたらしい。
そうだと分かったら話は簡単だった。
ちょうど叔父から一人暮らしをする条件として使用人を一人連れて行くことと言われたから愛理を使用人として連れて行くことにした。
愛理は同い年だし、料理も洗濯も掃除もメイド長の母親からみっちりと仕込まれていて完璧だった。
しかも容姿も俺好みだし、連れて行くなら愛理しかいないと思った。
黒髪のショートカット、アイドル並みに可愛い顔、小柄ながらにハッキリと主張している大きなおっぱい、生まれてこの方日光を浴びたことがないとでも言わんばかりの真っ白な肌。
向こうの世界だったらまず間違えなくヒロイン候補に入るほどの美少女。
小学生の頃から愛理は可愛かったが歳を重ねるごとにその可愛さに磨きがかかっていた。
「どうしてもダメなのか?」
「それは……」
〈天斗がどうしてもっていうなら私だって昔のように名前で呼びたいけど〉
(これはもう一押しでいけそうだな)
「俺は愛理に昔のように名前で読んでもらいたいんだけどな」
〈もぅ、ズルいよ。そんなこと言われたら断れないよ〉
「ダメか?」
「わ、分かった。じゃあ、天斗と二人っきりの時だけ呼ぶ」
「そうしてくれ。その方が俺も話しやすいし、愛理も話しやすいだろ?」
「う、うん」
〈あぁ、もぅ! せっかくこれ以上好きにならないようにしてたのに! ただでさえ、一緒に暮らすことになって我慢するの大変なのにこれじゃ我慢なんてできないよ!〉
愛理はポーカーフェイスを保っているが心の中ではかなり悶えているようだった。
これだから『読心術』のスキルを使うのはやめられない。
(それにしても愛理のやつ俺のこと好き過ぎだろ)
試しに『好感度』のスキルを使ってみたが愛理の俺に対する好感度は100だった。
向こうの世界で経験済みだが好感度が100の相手にはどんなことをしても大抵のことは受け入れてくれる。
例えばいきなりキスをしたり、抱き締めたりしても、驚きはするが嫌がられることはなかった。
こっちの世界ではどうか分からないがおそらくは受け入れられるだろう。
「そういえば今何時だ?」
「もうすぐ七時になるよ」
「まだ七時か。もう少し寝れるな」
「ダメだよ。遅刻しちゃうよ?」
「少しくらい大丈夫だろ。なんなら愛理も一緒に寝るか?」
「……」
〈何その誘い!? 天斗と一緒に寝たい! 寝たいけど、寝ちゃったら二度と起きれなくなりそうだからここは我慢! 夜だったら一緒に寝たのに〉
愛理の葛藤が面白くて俺は思わずにやけた。
「素直じゃないな」
「えっ?」
俺は愛理の腕を引っ張り自分の隣に寝かせた。
そして俺は愛理のことを抱き締めた。
〈えぇぇぇぇぇ!!! あ、天斗何やってるの!? 天斗ってこんなに積極的だったっけ!?〉
「昔はこうやってよく一緒に寝てたよな」
〈寝てたけど! 寝てたけど子供の頃と今じゃ全然違うって!〉
ポーカーフェイスを保っていた愛理の顔は徐々に赤くなっていた。
心の声を聞いているから、愛理が今どんなことを思っているのかもバッチリと分かっている。
確かに昔の俺だったらこんなことはしなかっただろう。
向こうの世界に転生して俺の性格はかなり変わった。
奥手だった子供の頃の俺はもうどこにもいない。
結局、自分から行動を起こした人間だけが自分の思い通りの人生を描くことができる。
それを俺は向こうの世界で身に染みるほど味わった。
「愛理は俺と一緒に寝るのは嫌か?」
俺がそう聞くと愛理は首をぶんぶんと振った。
〈嫌なわけない! 嫌なわけないけど、こんなの朝から心臓に悪いって!〉
「い、嫌じゃない」
(だよな。知ってる)
「じゃあ、少しの間だけでいいからこうしててもいいか?」
「……うん」
(やっぱり『読心術』のスキルはチートだな)
相手の心を読めるのは反則だ。
相手が自分のことをどう思っているのか分かるのだから、その相手に自分がどこまで攻めていいのかが分かる。
愛理の場合は好感度100だし、心の声から俺のことを好きというのがだだ洩れだったから、これくらいしても問題ないだろうと思って俺は愛理のことを抱き締めた。
〈あぁ、もう、幸せ。このまま入学式をサボってずっと天斗の腕の中にいた〉
それを聞いた俺は『読心術』のスキルを解除した。
あまりにも抱き心地の良い愛理に思わず寝てしまいそうになりながら、俺たちは五分くらい一緒にベッドの上で横になっていた。
☆☆☆
次回更新4/5(金)7時
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100話以上続けるつもりなので作品のフォローもよろしくお願いします!笑
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