ラブコメの世界に異世界転生した俺はハッピーエンドを迎え現実世界に戻ったのだが、なぜかスキルを使えるので現実世界でもハーレムを作ってみた件
夜空 星龍
プロローグ
「本当に戻って来たんだよな」
俺は鏡に映る自分の顔を見て実感した。
バラ色の人生を歩んでいたイケメン顔ではなく、十五年間灰色の人生を歩んできたモブの顔。
「どうせならイケメン顔で戻してくれよ。神様」
こんなこと言っても誰も信じないと思うが俺は一度死んでいる。
両親を交通事故で亡くした俺は生きる意味を失い橋から飛び降りた。
そこで俺の人生は終わると思っていた。
しかし、終わらなかった。
神様の気まぐれで、俺は漫画やラノベでよくあるような異世界転生をした。
転生先は「エロゲの世界に転生した俺は神様からもらった神スキルたちでハーレムを作る」(通称エロスキ)というラノベの世界だった。
タイトルの通り、神様からもらった神スキルでヒロインたちを虜にしていきハーレムを作るというのがざっくりとした話の内容だ。
俺はそのエロスキの主人公として転生をした。
エロスキは俺が自殺をする前に読んでいたラノベで、もしも突然人生を終えることになって転生する機会を与えられたとしたらエロスキの世界に転生をしたいと思うほど好きなラノベだった。
だから、神様は俺をエロスキの世界に転生をさせてくれたのだと思う。
「まさか本当に転生することになるとは思ってなかったけど」
ラノベ好きなら誰もが一度は異世界転生をしてみたいと思うだろう。
俺もそうだった。
ラノベにハマったのは中一の時。
友達がいなかった俺は毎日のように朝から夜までラノベを読み、ラノベの主人公に憧れ、異世界転生を夢見ていた。
こっちの世界で死ぬことを選択しまった俺だが、向こうの世界では生きることを選択した。
自分の好きなラノベの世界だったし、なにより楽しかった。
チートなスキル、現実離れした容姿を持つヒロインたちとのハーレム生活、自分が主人公になったという圧倒的優越感。
その要素たちは俺に生きる選択させるのに十分すぎだ。
「そういえば向こうの世界で使っていたスキルは使えるのだろうか? まさか使えたりしないよな?」
さすがにそんなことはないだろうと俺は半笑いを浮かべながら「スキル・透明化」と唱えてみた。
すると鏡に映っていた俺の顔が徐々に消えていった。
「マジかよ」
まさかこっちの世界でもスキルが使えるとは思ってもいなかった。
この感覚は紛れもなく向こうの世界でスキルを使った時と同じものだった。
「てことはもしかして他のスキルも使えたりするのか?」
他のスキルも使えるか試したくなってきた。
もしも他のスキルも使えるのだとしたら、灰色だったこっちの世界の人生を変えることができるかもしれない。
こっちの世界で生きる意味を再び見つけられるかもしれない。
「使いに行ってみるか」
透明化のスキルがちゃんと使えているのかも気になるし、他のスキルは人がいるところでこそ使うことに意味がある。
ちゃんと透明化のスキルが使えているのを確かめるために俺は自室を後にして一階に下りた。
俺がこっちの世界に戻ってきたのは両親が死んでから数日後の時間軸だった。
つまり俺が自殺をする前だ。
両親が死んだ後、俺は祖父母の家で暮らすことになっていた。
祖父母は大富豪で屋敷みたいな家で暮らしている。
使用人もたくさんいて、料理や掃除は使用人が行っている。
さっきからその使用人と何人もすれ違っているが俺に気が付いている使用人は一人もいなかった。
(本当に使えてるみたいだな。他のスキルも使ってみるか)
俺は使用人に聞こえないように「スキル・透視」と唱えた。
ターゲットは今こっちに向かって歩いてきているメイド服を着た女性の使用人だ。
この透視のスキルは便利でターゲットを好きに決めることができて、どこまで透視するか選ぶことができる。
今は人間がターゲットなので《服を透視する》のか、《下着まで透視する》のか選ぶことが可能だった。
(おー。透視もちゃんと使えるみたいだな)
俺が選択したのは《服を透視する》方で、俺の目には女性の使用人が純白の下着姿で歩いているように見えていた。
もちろん切り替えも可能だ。
俺は《服を透視する》から《下着まで透視する》に切り替えた。
さっきまで俺の目に純白の下着姿で歩いているように見えていたのが、今は全裸姿で歩いているように見えている。
(やっぱりこのスキルはいつ使ってもエロ過ぎるな)
俺は『透視』のスキルを解除した。
ついでに『透明化』のスキルも解除した。
その代わりに俺は『読心術』と『好感度』のスキルを発動させた。
〈えっ!?
女性の使用人の声が頭の中に聞こえてきた。
どうやら『読心術』のスキルもちゃんと発揮されているようだ。
『読心術』も『透視』のスキルと同じでターゲットを選択することができ、選択したターゲットの心の声を聞くスキルだ。
そして、女性の使用人の頭の上にハートマークと50という数字が出ているから『好感度』のスキルもちゃんと発揮されているみたいだった。
この数字が100に近ければ俺のことを好きと思っているということで、逆に0に近ければ俺のことを嫌いと思っているということになる。
50ということはこの女性の使用人は俺のことを好きでも嫌いでもなく普通くらいに思っているということだ。
〈それにしてもいつの間にすれ違ったのかしら?〉
俺は『読心術』と『好感度』のスキルを解除した。
向こうの世界で俺が使っていたスキルのは残り四つ。
この感じだと残りの四つも問題なく使えるだろう。
残りの四つのスキルは『身体能力強化』『催眠術』『瞬間移動』『性力増強』だ。
(試しに女性の使用人に『催眠術』のスキルでもかけてみるか)
俺は『催眠術』のスキルを発動させた。
「すみません」
「は、はい」
「服を脱いでくれませんか?」
「かしこまりました」
女性の使用人は俺の命令した通り着ているメイド服を脱ぎ始めた。
相手が『催眠術』にかかっているかどうかは目を見れば分かる。
目の中にハートマークが浮かんでいたら『催眠術』のスキルにかかっている証拠だ。
(てか、向こうの世界にいた時のノリで服を脱がせてしまったけど、これ誰かに見られたらヤバいよな)
今は周りに俺と服を脱いでいる女性の使用人しかいないからいいけど、いつ他の使用人がやって来るか分からない。
『透視』のスキルで見て純白の下着を着けていることは知っていたが生だとやっぱり全然違う。
本当はもっと堪能したいところではあるが、わざわざ危険なことをする必要もない。
スキルを使うことができるのなら、いくらでも見放題なのだから。
「服を着てください」
「はい」
女性の使用人が服を着たのを確認してきた俺は指をパチンと鳴らした。
それが『催眠術』のスキルを解除するために必要なこと、ではないのだが向こうの世界ではカッコつけるためにやっていからその時の癖でやってしまった。
〈あれ? 私、何してたんだろう?〉
『読心術』で女性の使用人の心の声を聞いたてみたが『催眠術』のスキルにかけられていた時の記憶がないのも向こうの世界と一緒みたいだった。
そのことが確認できた俺は再び歩き始めた。
(残りのスキルは三つか。次は『身体能力強化』を使ってみるか)
向こうの世界ではこの『身体能力強化』のスキルは必要不可欠だった。
『身体能力強化』のスキルがなければ俺はすぐに死んでいただろうし、ヒロインたちを助けることもできなかっただろう。
「まぁ、こっちの世界で使ったらチート過ぎるから力加減を考えないとだけどな」
その力加減を覚えるためにも少し使ってみることにした。
もちろんここで使ったら屋敷を壊しかねないので、使っても問題ないところで使う。
そのために俺は『瞬間移動』のスキルを使うことにした。
『瞬間移動』のスキルは自分の記憶の中にある場所になら好きなところに行くことが可能だった。
俺の記憶の中にある『身体能力強化』のスキルを使っても問題のなさそうなところを思い浮かべて『瞬間移動』のスキルを使用した。
「やっぱり『瞬間移動』は便利だな」
使用した瞬間、俺が思い浮かべていた場所に到着していた。
俺が思い浮かべたのは森の中。
「懐かしいな。ここでカブトムシ捕まえようとしたんだよな〜」
ここは小学生の時に一度だけお父さんと虫取りをしたことがある思い出の森だ。
結局、あの時は捕まえることができなくて帰りにホームセンターで買ってもらったのを今でも覚えている。
「さて、使ってみるか。身体能力強化発動」
『身体能力強化』のスキルを発動すると、向こうの世界で使っていた時みたいな全身に力が漲ってくる感覚に覆われた。
「本気を出すと山一つ吹き飛ばすだけの力が出るから気をつけないとな」
俺は軽く準備運動をして、力加減を調整し、木を殴ってみた。
軽く殴った程度だが、俺が殴った木は簡単に倒れた。
「マジで力加減気を付けないとな」
こっちの世界では滅多に使う機会はないだろうけど、向こうの世界ではこのスキルでたくさんのヒロインたちを救った。モンスターもたくさん倒した。
使う時は本当に力加減を気を付けないと簡単に人一人殺してしまうことが可能だ。
そのくらい『身体能力強化』のスキルはチート級に強力だ。
このスキルだけで世界征服できてしまうほどに。
「次は軽く走ってみるか」
俺は木と木の通り抜けるように500mくらい森の中を走った。
感覚が徐々に戻って来た俺は少しずつ『身体能力強化』のスキルの出力を上げていった。
『身体能力強化』のスキルを使っている時に本気で走ればおそらく新幹線よりも早く走ることができるだろう。
「今度、試してみるか」
それから俺は十分くらい『身体能力強化』のスキルの力加減の練習をした。
向こうの世界での主人公の体とこっちの世界での俺の体では体格がかなり違うから感覚が違うかと思ったがそんなことはなかった。
十分も使っていれば向こうの世界で使っていた時みたいに自由自在に扱えるようになった。
「これで残りのスキルは『性力増強』だけか」
他のスキルが使えたということは『性力増強』のスキルも問題なく使えるはずだ。
試しに使ってみてもいいがこっちの世界の俺はまだ中学生だ。
スキルを使えば相手を確保することは容易だが、さすがにやめておいた方がいいだろう。
「まぁ、来月には高校生になるからそれまでの我慢だな」
一通りスキルの確認を終えた俺は『瞬間移動』のスキルで自室に戻った。
「てか、来月から高校生か」
スキルが使えると分かった今、高校生活は楽しみでしかなかった。
両親が死んで生きる意味を失っていた俺はもういない。
向こうの世界に転生して俺は変わった。
「せっかくだし、こっちの世界でもハーレムを作るか」
きっと神様も俺にそうさせるためにスキルを使える状態でこっちの世界に蘇らせてくれたのだろう。
俺はそう思うことにした。
☆☆☆
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