ネコと和解せよ?
時刻は夜。空は暗くチラチラと星が輝き、街灯がなければ歩くには少々勇気がいる暗さだ。塾講師のバイトを終え、適当に晩御飯を済ませて帰路につく的場。最近リアモン騒ぎを抜きにしても忙しく、さらに自分が主催するTRPGの企画などにも時間を割かれているので今日も中々に疲労困憊だ。
的場は実家から大学に通っている。家にまだ電気がついているので、他の家族がまだ起きているのだろう。いつも通りポケットから鍵を出しドアを開けて溜息と共に一息ついた。
『プニャ』
足元から不思議な音。ピープー鳴る靴の音か? いや、家族にそんな幼児用しかないような靴を履く年齢のものは存在しない。視線を下げてみれば、見たことないけどあーそういうやつなんだなコレというのがわかる存在が鎮座していた。
「あらお帰り。プニャちゃん、この人がお兄ちゃんよ~」
『プニィ』
「……………これなに」
「あら知らない? 今キワモンだかスジモンだかが現れたらしいじゃない? この子もそうらしいのよ~。ウチの庭にあった水が入ったバケツでくつろいでたんだけど、懐かれちゃったんで飼うことになったのよ」
「……………」
リアモンをここまで危険な言葉に間違える人初めて見た。それはともかく、的場母は足元の猫っぽい生き物を抱き上げた。
この猫っぽい生き物ことリアモンの名は『プクネコ』。モチーフは猫とフグ類? と考察されているモンスターだ。猫の部分はエキゾチックという種類が大いに参考になっているらしく、いわゆる『ぶちゃかわ』というジャンルに区分されていてその印象は中々に強烈だ。そこにフグ特有のぬぼーっとした表情が加わりさらにぶちゃかわ度に拍車をかけている。属性はこの見た目で水と毒属性を持っており、ゲームが始まったときに最初に選べるリアモンの一匹、いわゆる御三家の一匹である。手には小さいながらも水かきがついていたり、耳が水が入らないようにぺたんと倒れたりとそこかしこに水中に適応した形が見受けられる。ただ陸上での活動はあまり得意ではないようである。
的場は前述のとおり創作者でもある。想像力はある方だとは自負しているが、現実の方がこんな突飛な非現実で脳をブン殴ってくるとは思わなかった。現実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。某メジャーリーガーと某棋士は想像を超える方向だが、これは非現実がこちらの理解を超えて襲ってくるタイプだ。最早反則だろう。
「……で。話はそれだけ? それじゃボク疲れたから」
「アンタもちゃんと世話しなさいよ?」
「ムリ。ここのところずっと忙しいの知ってるでしょ?」
「そうだけど……新しい家族になるんだからもっと、こう……あるでしょ? ホラ、撫でてやりなさいよ」
ぐいと抱きかかえてるプクネコことプニャちゃんを差し出す的場母。当の本猫?は出会ったときと同じジト目でブスッとした表情をしている。なんとなく素直に頭を撫でるのがイヤだったのでフグのようにポテッとした下あごをタプタプしてやった。可愛がり方が安西先生のソレである
「………(タプタプタプタプタプ)」
『ぷなななななななな』
「………(タプタプタプタプタプ)」
『ブニィ!!』
「ぶへぇ」
可愛がり方がしつこかったのかプニャちゃんは口から安物の水鉄砲くらいの勢いで水を吐き出し的場の顔面を濡らす。妙に生暖かい水を顔面に受け的場は正気に戻った。そのままプニャちゃんは身を捩って的場母の手をすり抜けどこかへポテポテと走り去っていった………なお速度は赤ちゃんのハイハイと同じくらいである。言っておくが、これで全力疾走だ。プクネコは幼生期は陸上が苦手なのである。
「アンタやりすぎ。プニャちゃん怒っちゃったじゃないの」
「………………」
その日は本当に疲れたのでちゃっちゃと風呂に入って寝た的場だった。ただ、眠りにつく寸前まで的場の手にはプニャちゃんの顎の感触が残っていた。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
プクネコ(プックリコネコ)
属性 水・毒
水中と陸上での生活を可能にした亜獣種。見た目は魚類であるフグと哺乳類であるネコの特徴を混ぜたような姿をしており、手には水かき、耳は水が入らないようにぺたんと意図的に倒すことができ、さらに未発達ではあるがエラもある。
現実でいうところのカモノハシのような生態をしており、水陸両方に適応しているが、まだ幼生なので陸上での動きはニガテのようだ。
その動きの緩慢さゆえに敵に狙われやすいが、敵と認識した者に対して毒を混ぜ込んだ水鉄砲『どくでっぽう』を放つことができ、敵を撃退することができる。毒の濃度は自分で調整可能で、ただの水鉄砲を飛んでいる虫に当てて狩りの練習のようなこともする。成長するごとに狙いと威力が上がっていき、最終的にはかなり遠くのものに当てることもできるようになる。
tips・亜獣種
一見哺乳類に見えるが別種の生物らしき特徴が混ざった種。例として陸上生物であるのにエラが存在していたり、土中に住む生態にも拘わらず空を飛ぶ翼を持っていたりする。現在確認されているリアモンのなかで二番目に多くの種類が確認されている種であり、これからもその種類は増え続けていくだろう。ちなみに一番多いのが
tips・水泳類
主に水中や水辺に生息域を持つリアモン達を指す。その多くが魚や両生類のような生態を持っているが、リアモンは生命力がとんでもないので完全に魚型のリアモンが陸上で空中を泳ぐように活動したりする。空気中の水分を集めて纏うことで活動しているらしいが、細かいことはいいのである。事情オブ大人というやつである。
リアモンには『地走類』『空翔類』『水泳類』の三種に加え、さらに最近『異界類』と新たに分類されたリアモンが存在する。異界類はまだ研究が進んでおらず謎が多いが、陸海空に加え宙域でも活動可能な生態をしており、研究次第では人類の宇宙進出を多いに貢献してくれる可能性がある
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