好感度のわかるメガネをかけたら、なぜかあたしに厳しい委員長からの好感度がカンストしてたんだけど……
西園寺 亜裕太
Ⅰ
第1話 真面目な委員長はあたしに冷たい
「クリスマスに一人はきついから、なんとか彼氏できてマジ助かったよ」
みんなで休み時間に話している時に、凛菜が言ったのを聞いて、わたしの笑顔が固まった。凛菜もクリぼっち仲間だと思ってたのに、突然の裏切りである。4人グループのうち、凛菜に彼氏ができたことで、これであと彼氏がいないのがわたしだけになってしまった。
「これであとは
「みんな裏切り者すぎるでしょ……」
あたしはだらりと机に突っ伏しながら、紅美花のことを見上げた。
「なんでみんなこんなあっさり彼氏ができるのよ!」
「普通にしてたらできるでしょ」
「普通って何さ! あたしが普通じゃないって言うの?」
ムッと頬を膨らませながら紅美花を睨む。
「舞音が普通じゃないかどうかは置いといて、わたしも不思議には思うわよ。舞音って普通にわたしたちのグループの中では一番可愛いのに、一番モテないのが不思議だもの」
「そっかぁ、あたしが高嶺の花すぎるってことかぁ」
あたしが座り直してから、両手で頬を押さえながら浸っていると、これまで黙っていた
「顔が良くても、完全に三枚目だし、ネタキャラにしか見えないもん」
「もうっ、高嶺の花って言ってくれたら丸く収まったのにぃ!」
あたしが紅美花のことをポカポカと軽く叩いていると、真面目な声があたしに向かう。
「鈴川さん、その髪留め、華美すぎますよ。校則違反だと思います」
振り向くと、学級委員の真沢さんがムッとした表情であたしを見下ろしている。シンプルなスクエア型のメガネの奥の冷たい視線からは、あたしのことをよく思っていなさそうなのが伝わってくる。
まあ実際、紅美花に家族旅行のお土産で買ってきてもらったリボンバレッタは大きくて目立つから、黒のヘアゴムかヘアクリップしか認められていないうちの学校の厳しい校則的にはおもいっきりアウトだし、あたしが悪い。だから、リボンバレッタを取ろうと思って、髪に手をやったのに、紅美花があたしの手首を握って、止めた。
「付けてて良いじゃん、真沢に迷惑かけてないでしょ?」
「私に迷惑かけているかいないかはどうでも良いです。校則に違反しているから文句を言っているのです」
真沢さんの答えを聞いて、紅美花が舌打ちをする。
「うざっ。話全然通じないじゃん」
紅美花が睨んでも、真沢さんは怯む様子はない。ジッとあたしのリボンバレッタを見つめてから、リボンバレッタの方に手を伸ばしてくる。
「取りますからね」
けれど、その手を紅美花が払った。
「キモい手で舞音のこと触るな!」
紅美花の言葉を聞いて、真沢さんの手はサッとあたしの髪から離れた。真沢さんは少し落ち込んでいるのか、口をへの字に結んでいる。
「ちょっと、紅美花。今のは真沢さんに失礼だから、謝ろうよ」
「何言ってんのよ? 人があげたバレッタ勝手に触ろうとしてきたこいつが悪いんでしょ?」
紅美花は真沢さんの方を指差した。ダメだ、謝ってくれそうにない。
「ごめんね、真沢さん。バレッタ取るから」
「ちょ、舞音。何従ってんのよ!」
あたしがバレッタを取ったのを見て、真沢さんは頷いて自分の席に戻って行った。残されたあたしは、紅美花を諭す。
「どのみちずっと付けてたら派手すぎて恥ずかいんだって。彼氏もいないあたしが一番デートしてるっぽい格好になっちゃってて恥ずいから。次はもうちょっと地味なのにしてよ」
あたしはできるだけ冗談めかして言う。
「舞音は派手目な方が似合ってるんだから、絶対地味になっちゃダメだって。髪の毛だって、せっかく可愛かったのに、真沢に言われて黒に戻しちゃったし」
一時期薄めのブラウンカラーに染めていたのだけれど、真沢さんに言われて黒に戻したのだ。
「あたしは黒も好きだから、これはこれで好きだし、真沢さんのおかげで結果オーライって感じだったよ」
「舞音がなんで真沢の肩持つのか、わたしにはよくわからないわ……」
紅美花が呆れてため息をついた。
紅美花を含め、みんな真沢さんのことをかなり苦手にしているけれど、あたしは普通に彼女の真面目なところは好きだった。言いづらい空気の中、きちんと注意できる子って素敵だと思う。まあ、残念ながら真沢さんは校則違反ばっかりしてるあたしのことは好きではないのだろうけれど。
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