第54話 残りの参加人数
助けたは良いものの、ユメを背負ってエミリーを探すのは面倒くさすぎるなぁ。
よし。放っておこう。
あと何人の参加者がいるか知らないが、まだピンピンの奴がいるかもしれない。そんな奴に襲われた時に、動くのもままならないユメを背負っていては、勝てるものも勝てないだろう。
こんな有様だから、放っておいても衰弱死するだろうし、わざわざ、私がトドメを刺す必要はないだろう。
今までの借りは、チビを撃退したことで返せたし、お別れしても良いよね。
「ありがとう。ちょっとだけ楽しかったよ」
聞こえていないからこそ、言えたクサいセリフを言い残す。
私は、たった一人の勝者になるために単独行動を再開した。
\
「‥‥‥」
無くしたものって、探している時は全然見つからないのに、諦めた頃にひょろっと出てくるよね。
「あれ? アンタ一人? ユメは?」
階段の踊り場で胡座をかいて、そう聞いてくるエミリー。
割と元気そうなのが腹が立つ。
クスリで、身も心もズタズタになっているんじゃねーのかよ。
お前に執着している女は、あんな有様なのに。
そう八つ当たりをしてしまいそうになるが、一旦その感情を抑える。私はこいつに一回負けているのだ。何の準備もしていない状態で挑んでも返り討ちにされるだろう。
「えーっと。ちょっと疲れてるから休んでる」
「そっか」
それと、気になる存在がエミリーの横にいる。
メガネをかけた、変わった服装をしている女性だ。
いや。私が見たことないだけで変ではないな。私みたいな令嬢が着させられる可愛さの足し算しかしていない服とは違い、引き算もしている印象を受ける。
敬語の人達がきていたスーツほどはキッチリしていないけど、薄青色の服は、落ち着いた雰囲気の彼女によく似合っている。
「その人は誰?」
「あ。この人はにゃーさんだよ」
は?
\
「はぁ‥‥‥」
黒幕の正体を知ったリアクションとしては、自分でも薄いと思う。怒りとか戸惑いというよりも、「私には関係ないや」という感覚が一番近い。
小さい頃。なんで言うと「今も小さいだろ!」と無粋なツッコミが飛んできそうだけど、私自身、自分は子供だとは思っていない。私が何の悩みも持たなくて良いガキなのだとしたら、何であの変態誘拐犯に性の対象として見られたんだ。
性という、広い世界を正面から見るのには、まだまだ時間がかかる。
「そうなんだって。でさ。もう一個重要な情報があってさ。このゲームの参加者は後2人なんだって」
そうか。確かにそれは重要だ。
えっと‥‥‥ってことは。
「私とユメとエミリーだけになったんだね」
「え?」
「あぁ。さっき二人殺したところだから、私達三人だけだよ」
ビッッッッッ。
予想はしていたから、避けるモーションは準備していたけど、伸びるマニキュアは首をカスった。
カスっただけでもダラダラと血が流れる。
あーぁ。もうちょっと後回しにしたかったんだけどな。
エミリーが、この情報を本気で信じているかどうか不透明だったから、攻撃してくる可能性は半々だった。
しかし、思ったより、この女性を信用しているようだ。
「よし! じゃあ、そろそろルカも殺すね!」
この女に殺されかけてから1日も経っていない。
思ったより、早い再戦になってしまった。
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