第36話 乙女ロード
友達不要説というのがある。
「友達100人できるかな」という、有名な歌のフレーズに違和感を持った賢い人が提唱したもので、孤独を愛そうぜみたいなことを小難しい言い方でグダグダと表したもたのだ。
色々言っているが、要するに邪魔になる友達を減らして、自分にとって本当に価値のある友達だけを残すべきとのこと。
格好いい言い方をすれば、「コレクションからセレクションへ」と言い表せる。
私から言わせれば、それは強者の理論だ。
人生を少数精鋭で勝ち抜くことができる優秀な者だけが使える戦法。私みたいな弱者が真似をしたら、酷い目に遭うだろう。
いつ心がけ壊れてもおかしくない私にとって、依存先は多い方が良い。
固い繋がりのある両親も、いつかはいなくなる。
だったら、助けてくれる人を増やす努力をするしかないではないではないか。
「‥‥‥」
池袋東口で愛佳先生を待ちながら、そんなことを考えていた。
『空の恋人』は、ユルいとは言えBLだ。
アニメが市民権を得てきたとは言え、BLは未だに世間からの風当たりが強い。大体、腐る女子と書いて腐女子ってなんだ。何かと多様性とうるさい世間様は、このあんまりな名称には思うところは無いのかと腹が立ってくる。
そんな我ら腐女子を昔から温かく迎えてくれるのが、ここ、池袋である。
乙女ロードという名の可愛らしい歩道があり、そこには目麗しい男の子同士の絡みを描いた作品を取り扱っているお店がたくさんある。
まだ、埼玉に住んでいた学生の頃も池袋にはよく行っていた。
映画館や水族館には青春の思い出に溢れている。まあ、男の子とデートすることは現在まで無いけど‥‥‥。
「あ! 沙優さーん!」
しかし、性別は違うけど大好きな神とのデートは実現した。
手を振りながら、小走りで近づいてくる愛佳先生。
普段、「Reborn」本社で会う時よりオシャレな服に身を包んでいる。少し短いスカートを履いているが、まだまだ若い愛佳先生は足も綺麗なので、私のように見苦しくはなっていない。
「早いですね!」
「うん。カフェが楽しみで」
自然と嘘が出る。しかし、神が笑顔になるのならばどうでもいい。
女同士でBLのコンセプトカフェにデートをする。
要素がありすぎる気もするが、これも依存先を増やすためだ。
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「‥‥‥ゲェッぷ」
女の子として、どうなのかと思うレベルのゲップをする愛佳先生。
無理もない。ジュースを8杯飲んだ後なのだから。
800円のジュースを頼むと、ランダムでキャラのイラストが書かれているコースターが呼ばれる。繰り返す。ランダムである。
本来はパフェの器として使っているのではないかと思う、そこそこデカいコップもどきに、なみなみと注がれたジュース。最初は美味しかった。しかし、3杯目辺りからお腹がタプタプになった。それでも、愛佳先生の推しへの愛は萎れることなかった。私も、必死で食らいついていた。
次回、ジュース奮闘記に続きます。
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