第32話 本物の恐怖
[エミリー・サンドリア]
「‥‥‥ハァ、ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ、、、、ハァハァハァ、、、ハァ。。ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」
先程まで、楽しく仕方なかったのだが、不安に押しつぶられそうになり、どうにかなってしまいそうだ。
目に入るもの全てが怖い。どこかの偉い画家の自画像も、私を心の底から憎んで睨んでいるように感じる。今にも絵から出てきて殺しにかかる可能性を考えてパニックになってしまう。
「く、くるな‥‥‥くんなよぉ!!!!!」
そう叫んで全力で逃げる。
ルカにやられた傷が治りきっていないが、傷は気にならなかった。そんなものにかまっている余裕なんかない。何かして少しでも気を紛らわせなくては、気を失ってしまいそうだ。いや、いっそのこと気を失った方が楽なのか? 悪役令嬢や化物に見つかったら死ぬのは間違いないが、今の苦しみから逃れられるのなら、死ぬ方がマシなのかもしれない。
「ゔォ‥‥‥う、ヴェェ」
しかし、アレに仕返しもできずに、デスゲームも中途半端に終わることを想像すると、悔しくて吐き気と涙が同時に襲ってきた。
クソ! クソ!! クソ!!!
気がつけば四つん這いで走っていた。人間は二足歩行の方が早いことは人類が誕生した頃から先人が証明してくれているが、巨大過ぎる恐怖から距離をとりたい。少しでも早く走りたいという想いから、獣のように走っていた。
しかし、何一つ具体的なものが無い恐怖からは、いくら走っても逃れられない。とにかく、城から出ようと窓に突進してみたけど、以前試した通り傷一つつかない。今回は頭からぶつかってしまったから、頭から血が伝ってきた。
それがトドメになったのか、意識が朦朧としてきた。
あぁ。やっと意識を手放せる。
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[ユメ・クラマン]
「あれ?」
「どうした?」
ルカが己のドレスを弄りながら首を捻っていた。
「クスリがない‥‥‥」
クスリ‥‥‥。なんか、医療的なものではない、ヤミ系のクスリの発音のように聞こえる。
「それって‥‥‥」
「うん。ヤバい方のやつ」
「なんで‥‥‥まあ、いいや」
なんで、そんな物持ってるの? と聞こうとしたけど、さすがに自重する。
「どっかに落としたかな。もし、誰か飲んじゃってたら可哀想だな」
どうやら、相当キツいやつみたいだ。私自身は使ったことないが、のめり込みすぎて壊れた人間を何人も見てきた。可哀想なんてものじゃない。
人間‥‥‥というより生き物としての生力を奪われた奴らを見るのは辛かった。
「お姉ちゃん達に会うまではあったんだよ」
「‥‥‥」
何の気なしに言ったであろう、そのセリフが引っかかる。
私がルカを回復させている時、推しが何かをゴグゴクと飲んでいる音が聞こえてきたのだ。
十中八九、考えすぎだろう。
でも‥‥‥。
「ちょっと急ごうか」
次の行動が決まった。
未だに戻ってこない推しの捜索に行こう。
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