第4話 お嬢様口調
[ユメ・クラマン]
「あれ? そっちから仕掛けてしたのに、もう終わりですの? 威勢が良かったのは最初だけでしたわねぇ」
この人、殺意は十分だったけど、動きがノロすぎたのが勿体ない。
「毎朝5時に起きて、剣術のお稽古をしているわたくしの敵ではありませんでしたわね! オーホッホッホ!」
変なお遊戯だが、勝利はやはり嬉しいものだ。
晩年は敗北してばかりだったから特に。
「パンさん! やりましたわよ!」
「すごいね、ユメ!」
可愛らしいパンダのぬいぐるみとハイタッチをしてしまった! こんな夢のような経験ができるとは、この変なゲームも捨てたものではない。
革命がどうとかうるさい国民達に散々犯された後殺されたと思ったら、こんなご褒美が待っているなんて、人生何が起こるか分からない。
「ホントにすごいよ! 身体能力や頭脳はもちろんそうだけど、そのお嬢様口調がいい! これぞ悪役令嬢って感じ!」
「そうかしら? もっと褒めてくれて良くってよ!」
パンさんが、よく分からない褒め方をしてくる。
お嬢様口調って、「〜ですわ」みたいな話し方のことかな。あれはお母様や妹がしているから真似しただけなんだけど、ダサいから嫌いだった。
でも、家族の女の中で私だけ違う口調を貫くことはできなかった。金髪に縦ロールという、手入れの面倒な髪型をしているのも、家族という小さな世界で悪目立ちしないためだ。
特にお母様は、同調圧力が半端ない。
そんなんだから、圧倒的な権力と武力を持っていたのに、革命家なんてポッと出に敗北することになるんだ。
私から見ても、国民への負担は大きかった。
税金は高く物価が高い。さらに、私達貴族は下品なほど贅沢を貪っていた。
美味しいものを食べて、良質な娯楽に触れる生活をしながらも、国民の鬱憤がいつ爆発するのかと戦々恐々とする日々を過ごしていた。
まあ、結局何もしなかったから私も同罪なんだけどね!
程なくして暴動が起こり、本気の殺意を向けられた。
今までの生温い生活では感じることのできなかった、生きている実感を彼らは与えてくれた。私も少しは抵抗したけど、数の力によって押し負けた。
動けなくなるまで痛めつけれられ、牢獄に放り込まれた時に「フヘッ」という変な笑いが漏れた。自分にMの素質があると自覚した瞬間である。
最後には、私達と少しでも血のつながりのある人間全員殺された。
公開処刑ってやつだ。
国民達は、怒りと性的な快楽が合わさった異様な表情をしていた。
処刑な前、目前でお母様や妹が醜い男共に犯される光景を見て、朦朧とする頭で世界を呪った。
国を巧くコントロールできなかった故に、こんな事態を引き寄せた両親を呪った。
正義の元で立ち上がったはずなのに、革命の意義を見失っている国民を呪った。
そして、何もできなかい自分を呪った。
だから、このゲームの戦利品は魅力的だ。
正ヒロインってのは、あの革命家の隣にいた女のことだろう。あの立ち位置なら巧いこと立ち回れる自信がある。
「さあ! どんどん殺していきましょう!」
「うん!」
本当の勝ち組になるために、私とパンさんは歩き出した。
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