第33話 オオカミVS人造聖獣 決着
『【
まずは手数を増やす。俺は高速で動きながら魔法の詠唱を始めた。
【
周りの木々の影、エクスシアの影、ウェスタンの影、雲の影、俺自身の影など、ありとあらゆる影から靄が立ち上がり、およそ5秒程で30体の【影】が誕生した。
『行け』
俺が一声影に命令すると影達はエクスシアに向かって襲いかかり、ある影は足に噛みつき、ある影は俺と一緒に爪を使い傷を負わせるなど、凄まじい猛攻が始まった。
「ガァァァァァァァッ!」
エクスシアの体には再生する間も与えられず、みるみるうちに傷が増えていった。
『何だこれで直ぐに終わんのなら早くやっとけば良かった……』
俺は少し落胆しながらもあれだけ面倒だったエクスシアを倒すことができると一息つこうと思ったが、そう簡単にはいかなった。
「エクスシア!能力を全開放するのです!」
ウェスタンがそう高らかに叫ぶと、エクスシアは雄叫びを上げた。するとエクスシアの背中から新たな腕が現れ、その腕からとてつもないマナの衝撃が放たれた。
『クッ!』
思わぬ反撃に思わず攻撃の手を止めてしまい、その間に影が全て破壊されてしまった。
『何だよあのデタラメな腕。いや、あれ腕か?』
影が全てやられたことで俺の位置が完全にバレると思ったが、幸い【気配隠蔽】の効果で見つけることが出来なかったようで様々な場所に視線を彷徨わせていた。
ほっとしたのも束の間、背中から現れた腕が急に割れだしたのだ。
『は?』
腕が割れる?自分から部位を破壊した所で意味が無い。そう思ったが、よく見ると腕だと思っていたのは割れた後にウネウネうとしており、腕だと思っていたものは実は触手だったようだ。
『……キモ』
おっとついつい耐えきれずに言葉にしてしまった。だってエクスシアって聖獣なんでしょ?
今のところアイツ、聖獣らしいところ1回も見せてないぞ?聖獣って聖なる獣って書くじゃん!
オーガみたいな馬鹿でかい腕を振り回したり、暴れ回ったり、再生でうにょうにょと傷を治したり、遂には触手を出したりって……聖獣じゃないじゃん!まだ悪魔か何かって言われた方が説得力あるぞ!
そんなアホなことを考えながらもエクスシアが再生を始めようとした動きを察知した俺はそうはさせるかと残り時間がどんどん減っている【加速】を使いながら今度は1人で攻撃を開始した。
————————————
『クソッ!何であそこからずっと耐え続けるんだよ!』
【
2分の間にエクスシアの体はボロボロとなり、再生が出来なくなるほどに弱ってきた。しかし、エクスシアにトドメを指すことが未だに出来なかった。
理由としては簡単だ。エクスシアの抵抗が激しく、最後の一撃に持っていくことが出来ないのだ。あの新たに生やした触手がとても厄介で、急所を的確に守ってくる為、殺すことが出来なかった。
それにエクスシアのマナはまだ残っているのだが、俺からの攻撃を警戒しているようで再生よりもマナを温存することを優先してきやがった。
『……せめて、誰かが手伝ってくれれば終わるんだけどなぁ』
そう嘆いてみたが、親父は住処を守るので動くことが出来ず、母さんもじいちゃんの元へと向かいまだ住処に帰ってきていなかった。
ノルとシアも来てくれれば嬉しいが、正直力不足でエクスシアの気を紛らわせるのが精一杯だろう。
「ガァ……アア…ア」
エクスシアは現在、息が絶え絶えになりながらも俺への抵抗を続けるために必死に触手を振り回していた。
およそ20本もの触手を我武者羅に振り回しており、それだけなら俺に当たることは絶対に無く、俺が負けることはないのだが、逆に勝つこともできない。
全方位に振り回し、死角を無くすことでおからの攻撃を防いできた。
触手はぶつかった地面は抉れ、岩にはヒビが入る程の威力であり、迂闊に近づけば今の状態でも1度でも食らってしまえばそれをきっかけに無数の触手が俺を襲い、殺される可能性が十分にあった。
今は無事だが、もし、【
『クソッ!せめて近づくことが出来ればアイツを殺すことができるのに……』
触手のせいで近づくことが出来ない。それが1番の問題点だ。魔法を撃っても潰され、接近戦を仕掛けようにも被弾を避ける方法がない。
どうすれば良い?このまま悪戯に時間をかけているだけでは負けてしまう。今使えるもので何かいいものはないのか?一瞬で近づければいいのに……ん?一瞬で?
『あ…あれがあったの忘れてた……【
俺は影を再び4体創り出すと影達専用の強化魔法【
命令を受けた影達は四方に散らばると、これまでと同じように目標へとひたすらに駆けていった。エクスシアの触手は近寄ってくる敵をその凄まじい威力で粉々にしていった。
四方から迫っていた影は強化魔法によりすぐには破壊されることはなく、少しずつ削られているが、着実にエクスシアの元に接近していた。
1体目──エクスシアは触手だけでは破壊出来ないと悟ると辛うじて腕の形を残している右腕を地面に叩きつけ、地割れを発生させた。
トップスピードで接近していた影には咄嗟に避けることができず、そのまま落下して消滅した。
2体目、3体目──1体目の影に気を取られている隙に一気に速度を上げ、もう少しというところまで来ていた。
エクスシアは地割れをまた起こそうとしていたが、距離が近過ぎるので自分も巻き込んでしまう。
影達はエクスシアが躊躇っているのを見るとそのままトップスピードを維持し、噛み付こうと飛びかかった。
「ガアァァァァァァッッッッッ!!」
エクスシアに飛びかかった2体の影だったが、地割れ攻撃を使えないだけであり、エクスシアが攻撃できないことはない。
金属のような鈍い光を放っている左腕を横に薙ぎ払い、そのまま吹き飛ばされていき、木を2、3本程倒して消滅した。
4体目──3体の後ろに隠れ、ずっと息を潜めていた最後の1体。触手の範囲にずっと潜んでいた。その為、他の影達よりもボロボロになっていたが、2体に意識を向けた瞬間に気配を消しながら近づくことでエクスシアの死角に潜り込むことができた。
しかし、近づくことはできても影のステータスでは不意打ちでエクスシアを殺し切ることは出来ない。
エクスシアを殺し切るには俺が直接攻撃を食らわせるしかない。その為、ウェスタンはここまでの行動をじっと見ていたがやや期待外れに思ったようで溜め息をついていた。
「はぁ、またあの魔法を使ったのでどんなことをするかと思えば馬鹿の1つ覚えのように……まぁ、期待のサンプルなのは間違いがないのでしっかりと私が有用に使ってあげましょうか。」
そうウェスタンが呟いた時であった。
『
不意に影の体に靄がかかり、直ぐに消えたが、体が揺れ動いていた。
『【
揺れ動いていた影の爪にマナの光が宿り、これまで以上に輝いていた。
「分身体にあれ程のことが出来たか?分身体?いや、あれは!!」
どうやらウェスタンは気づいたようだな。そう、この影は俺だ。オークとの戦闘を思い出して欲しい。あの時、俺は最初の攻防でどうやってアイツの攻撃を躱した?
答えは【
俺だと近づくことが出来ないのなら影に近づかせた後で位置を交換すればいい。それが俺の思いついた方法だった。
エクスシアもマナの光でようやく俺に気づいたようだったがこっちも準備ができたので遠慮なく行かせてもらおう。
『【
不意打ちを見事に食らったエクスシアは背中にふかぶかとした傷後を残し、一瞬立ち止まったが、耐え切れず、倒れてしまった。
【ナディーが経験値を2278獲得しました。】
【経験値が貯まりました。ナディーのレベルが23→27まで上がりました。】
【熟練度が一定達しました。スキル〈真爪撃〉と〈真牙撃〉のレベルが1→2まで上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈超嗅覚〉がレベル5→7まで上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈疾走〉がレベル8→10まで上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈危機感知〉がレベル6→7まで上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈剛力〉がレベル3→5まで上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈堅牢〉がレベル3→5まで上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈爪術〉とスキル〈牙術〉がレベル7→8まで上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈影魔法〉がレベル4→6まで上がりました。】
【スキルを獲得しました。スキル〈回避〉とスキル〈暗殺〉とスキル〈隠密〉を獲得しました。】
【称号を獲得しました。称号〈
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