第22話 オオカミ、大樹と出会う
『ふ〜〜!スッキリした〜。』
『ぐへ〜〜!もうシアのお話は嫌だー!』
少し待っているとノルとシアが戻ってきてシアは満足そうな笑顔を浮かべていたが、ノルは何やら疲れたような顔をしていた。
『せっき『うん?』お、お話は終わったのかシア?』
『うん!ノル姉もしっかりとお話したら理解してくれて良かったよ。』
『わ、私はもう嫌だよ〜。』
ノルは体を動かすことが大好きなので今回のシアのお話は相当堪えたようだ。若干涙目になっており、どれだけ堪えたのかが見て分かった。
『ノル姉。ナディー兄に言うことがあるでしょ?』
『う、うん。』
俺に言うこと?
何だろうと思い首を傾げているとノルが俺の前にやってきて頭を下げた。
『お、おにーちゃん。迷惑かけちゃって…ごめんなさい。』
あぁ、なるほど。恐らくシアとのお話でシアから謝る様に言われたのだろう。ノルもシアから言われたことであまりよろしくないことだというのは分かったので、本心から俺に謝ってきた。
『俺もごめんなノル。俺もやりすぎちゃったな。お互い次から気をつけていこう。』
俺はそもそも怒る気など無いし、俺もシアに怒られているのでノルに笑いながら言葉をかけた。
『うん!次からは私も気をつける!』
俺が怒っていないとノルも分かると先程までシュンとしていたのだが、一瞬でいつもの元気な様子に変わった。
『ああ!気をつけていこう!』
その姿に俺も元気になり、シアをもう困らせないためにも俺も気をつけていこうと決意を込めて遠吠えをノルと一緒に響かせた。
『それじゃあナディー兄、ノル姉、そろそろ帰ろうよ。』
俺達が遠吠えをし終えるのを見図ってシアが寝床に帰ろうと提案してきた。
『それもそうだな。流石にあんなヤバい奴と戦った後だからどっと疲れた……。』
『私は全然疲れてないけど良いよ〜!』
当然俺達に異論は無く、ここは深層にかなり近いため、深層の魔物に見つかる前に寝床に戻ることにした。
───────────
『皆〜〜!おーかーえーりー!』
『おかーさんだ!』
『お母さんだね……。』
『母さんだな。』
寝床に戻ってみるとノルの向かった方向を教えてくれた母さんがいつも通り涙目になりながら俺達を迎えてくれた。
『皆揃って遅いから心配したのよ?ノルも勝手に遠くまで行かないの!ナー君もシアもノルを見つけたのならすぐに帰ってこないとダメでしょう!』
『『『ご、ごめんなさい………』』』
いつもみたいに母さんが直ぐに帰ってこないから無理を言うのかと思ったら以外と正論だったため、俺達はただ謝ることしか出来なかった。
ノルが1人で森の奥まで行ったのは言わずもがな、俺とシアも最初から倒そうとせずにノルをさっさと奪い取って逃げた方が良かっただろう。
『しかも、ナー君はこの中でお兄ちゃんでしょ?』
『た、確かに俺も直ぐにノルを連れて帰ってくるべきだった。ごめんなさい……。』
『……で、何をしていたの?』
母さんは俺達が反省したのを確認すると何でここまで遅くなってしまったのかを聞いてきた。
ちなみに今は太陽が西に傾きかけており、ノルを探し始めたのが朝なのでだいぶ時間が過ぎていたのだ。
『え〜っと実は──────』
それから俺は深層ギリギリの場所まで行ったこと、そこでノルを見つけた時に木の化け物に見つかったこと、それを倒すのに手間取った為、遅くなってしまったことを話した。
『木の化け物?』
『うん。でも、魔物みたいだったから別に変ではなかったよ思うけど?』
母さんは何なら俺達が倒した魔物のことが気になるようで何回か倒した魔物の姿について確認してきた。
『ど、とうしたの?そんなに確認して。僕達もしかして何か不味いのを倒しちゃた?』
母さんに何回も確認されたため、シアも怖くなり母さんに倒したらダメだったのかを聞いてきた。
『う〜〜ん。私どけだと何とも言えないわね。……誰かベインを呼んできてくれない?』
『分かった!私がおとーさんを呼んでくる!』
母さんが自分だけでは判断できないと考えると親父を呼んでくるように伝えた。するとノルは一目散に駆け出し、親父の元へと向かった。
──────────
『呼んできたよー!』
『何なのだ?ノルに呼ばれたからと説明もなく叩き起されたのだが?』
ノルが親父を連れてくると、どうやら寝ていたようで少し不機嫌そうに内容を聞いてきた。
『あなた、良かった。実はナー君達がもしかしたら厄介なことをしちゃったかもしれないの。』
『厄介なこと?』
『えぇ。あなた、木の魔物って聞いて『あの方』以外に思いつく魔物っている?』
『ああ、そういう事か……。』
母さんと親父は木の魔物について何やら思い当たる節があるらしく、親父は心底面倒くさそうにしていた。
『はぁ、面倒なことをしてくれたなお前達。』
『なぁ、面倒な事って何?話ている感じ大分ヤバい事になっているようだけど。』
俺達は話についていけなくなったので何がどうなっているのかを尋ねてみた。すると親父は俺達にというよりもこの場にいない誰かに対して忌々しそうにしながらも答えてくれた。
『お前達が倒した親玉を我とユキは知っているのだが、その親玉がかなり面倒くさい奴でな……。』
『急遽だけど、その魔物に会いに行くことになったのよ。』
『『『会いに行く?』』』
俺とノルとシアはどうして親父と母さんが面倒くさそうにしていたのかが結局分からないまま、親父と母さんが言う魔物に会いに行くことになってしまった。
─────────
『ほら、どうした?強くなったのだろう?これぐらいさっさと倒さんか。』
「グォォーーーーー!!!!!」
『いや、無理だって!』
親父達が言う魔物に会いに行く道中、親父は暇つぶしと訓練にと魔物を見つけては俺に戦うように強要してきた。
しかも、魔物のレベルは深層に近いためか、めちゃめっちゃ強く、何度も死にそうになってきた。
『おにーちゃん頑張れ〜〜〜!!!』
『ナディー兄頑張ってーー!!!』
『ナー君ファイトよ〜〜!!!』
ちなみに母さんとノルとシアは免除され、母さんが魔法で作った氷の壁で身を守りながら俺の戦闘を観戦していた。
『クソ!』
俺は魔物──オーガエリートの攻撃を避け、カウンターとして魔法を叩き込んだ。
「グォ!?」
カウンターが入った瞬間、オーガエリートはスピードが俺よりも遅いため防御の姿勢をとることも出来ずに吹っ飛ばされてしまった。
『はぁ、はぁ、はぁ。……流石にこんなに動き回っていると疲れるな。』
かれこれもう6連戦はしているため、かなりの疲労が溜まっており、もうその場で寝たいぐらいには疲れていた。
『ふあ〜〜。ようやく終わったか。流石に疲れたようだな。』
親父は寝そべっている姿勢から起き上がると最初に魔物をけしかけた時よりも少しスッキリしたようで満足気だ。
……絶対に俺でストレス発散してたよな。その事に俺はイラッとした。
『なぁ、親父。俺でストレス発散してないか?』
『うん?ああ、しているが?』
『しているが?じゃねえよ!最初は訓練だの何だの言ってたじゃねえか!』
『そんなの、戯言に決まっているだろうに。それぐらい気づかんか。』
『おい!実の息子でストレス発散しておしてその発言は何なんだよ!』
最初は訓練って言ってたのに親父の奴、隠さずに本音を言いやがった。俺がその事にイライラしていると母さんが寄ってきた。
『ナー君お疲れ様!昔はあんなに可愛かったのに、今ではこんなに逞しくなっちゃって!』
『流石おにーちゃん!私、おにーちゃんのことが更に好きになっちゃった!』
『凄いよナディー兄!あんなに強そうな奴を倒しちゃうなんて!』
母さんが俺のことを褒めてくれるとすかさずにノルとシアもやってきて俺のことをキラキラした目で見てきた。
『そ、そうか?』
家族に褒められて悪い気はしない。先程までイライラしていたのが治まり、今度は恥ずかしくなってきた。
『おい。もうすぐで着くのだからダラダラするのではない。』
俺が母さん達とワイワイやっていると親父が呆れたような目で見ながらまるでしっかりしろとでも言うようにそんなことを宣った。
………俺、親父のことでこんなにイラッときたのは初めてかもしれん。実力が違うため、全然勝てないのだが、一矢でも報いることができるのなら是非ともやりたいぐらいには今、親父に対してイライラとしている。
『なぁ、さっきからそう言ってるけどいつ着くの?』
そう。親父は時々もうすぐ着くと言ってはもうかなり歩いているのだがいつ着くのだろう。
『いや、もう着いた。』
『は?』
もう着いた?どういう事だ?俺が戸惑っているとノルとシアはよく分かっていないようでキョトンとした表情で親父を見ていた。
『何言って──。』
───フォッフォッフォ。ようやく来てくれたかの。ベインにユキちゃん。それに、2人の子供達もよく来てくれた。
『『『!?!?!?』』』
俺が親父に聞こうとした瞬間、どこからか老人のような声が聞こえてきた。親父と母さんは知っていたようで呆れたような顔をしていたが、俺達は驚き、ビクッとして警戒し始めた。
俺達が警戒していると近くにあった大樹に老人のような顔が現れ、こちらを見てきた。
「ようこそナディー君。ノルちゃん、シア君。ワシはトレント。この森の管理者じゃ。」
────あとがき────────────
おじいちゃん登場です。トレントって何でかおじいちゃんのイメージがあるんですよね……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます