第20話 オオカミ、かくれんぼをする

『ねぇ、ナディー兄?何で僕が怒っているのか分かってる?』


『あ、あぁ!も、もちろん分かっているとも!』


『そう。分かっているのならいいよ?でも、ナディー兄はノル姉や僕に甘いからしっかりとお話しないとね?』


 俺は今現在、シアに怒られていた。兄の威厳が無いと思うかもしれないが俺はブラコンだ。弟に強く言う事なんて出来ない。


 なんでこんな事になったのだろうか?シアから溢れる氷の様な冷たいマナに晒されながら考えた。


 原因はほんの少し前に遡る─────






『うぅ〜。ナディー兄!何で起こさないの!恥ずかしいよ……』


『ははっ。ごめんなシア。お前の寝ている顔が幸せそうだったし、俺もしばらく見ていたかったからついな?』


 シアが俺に甘えてくれていると段々と眠くなってきたようで寝てしまったのだ。俺はそれを可愛らしいと思いつつ近くでその寝顔を眺めていた。


 普通に変態じゃないのかって?家族なんだから別にいいだろ!それに今シアは俺にくっついて寝てしまっているため無理やり離れるとその振動がシアにまで伝わってしまいこの可愛い天使の様なシアが起きてしまうのだ。


 それだけはお兄ちゃんとして何とも避けたい事だった。しかし、さっきまで寝ていた事もあってすぐにシアは起きてしまった。


『う〜ん。……あれ?さっきまで起きてたのに……』


 シアは起きると段々と何をしたのかを思い出してきたようで完全に思い出すとボンッ!と音を立てるのが似合うぐらいに一気に顔を赤くした。


『うぅ〜。…ナディー兄恥ずかしいじゃん。寝ちゃったなら起こしてよ……』


『ガハッ!』


 はい可愛い。

 思わずシアの可愛さに吐血してしまったではないか。


 顔を真っ赤にしながらボソリと可愛すぎる言葉をシアが喋って俺が血を吐き出しているとふとシアが何かを思い出したようで羞恥心がまだ抜け切ってない為か顔が赤いまま俺に尋ねてきた。


『ねぇ。ナディー兄、1つ聞きたいことがあるんだけどいい?』


『あ、ああ。お兄ちゃんに聞きたい事があれは何でも聞くといい。俺に答えられる事があるのなら何でも答えるぞ。』


 俺はシアなら変な事を聞かないだろうと思い、深く考えずに承諾した。


『僕がノル姉に夜もナディー兄を無理やり起こして甘えるなんて非常識な事をしないよねって言った時のあの動揺っぷり……もしかしてだけどナディー兄をノル姉が起こして夜もノル姉が甘えてるの?』


『うん?それがどうしたんだ?』


『いいから答えて!どうなの!?』


 何でシアは少し怒っているんだ?俺はシアの気迫に気圧されながらも素直に答えた。


『まぁ、ノルは夜も結構俺に甘えてくるな。でも、ノルも流石に毎日やってくるわけじゃないぞ?』


『……ノル姉はいつまで甘えてるの?』


『ノルか?そうだな〜気づいたら大体は朝になってるな〜。』


 そう答えた瞬間、シアのマナが少し変わった。今までは少し怒っている雰囲気を感じるだけだったが、今は明確に怒っている気配を感じている。


『……ナディー兄。僕達に優しくしてくれるのは嬉しいけど、限度ってものがあるからね?』


 シアはそう言うと俺から少し離れた場所に座り、こちらを向いて静かに言った。


『ナディー兄。ちょっとお話しよう。』


 ────────


 それから俺はシアにじっくりとお話をすることになり、今もその最中であった。


『な、なぁ。シア、そろそろ許して欲しいんだか………』


『だめ、このままナディー兄を許すとまた同じ事をするから。ノル姉ともお話したいけど今はナディー兄の方が先。』


 シアからの説教は思ったよりも効いた為、俺も十分に反省してきたのでどうにか止めてもらおうと思ったが、そういう訳には行かないようだ。


『俺もシアのせ『なに?』…お話で十分に分かったから頼む。弟からこんなにお話されるとだいぶキツイ。』


『だったら今後は自分のことも考えて行動してちょうだい。無理なんてしないで。』


『いや、無理はしてないぞ。それにもう言ったがお前達のやって欲しいことをやるのは苦じゃないんだ!』


 シアは俺が無理をしてでもやっているのように感じているようなのでその誤解を解くためシアを説得しようとした。


『……ナディー兄が僕達の為に何かをやってくれるのは嬉しいよ。でも、それでナディー兄に何かあったら僕達も嫌なんだ。』


 シアは今にも泣きそうな顔でそう呟いた。俺はその顔をずっと忘れることはないだろう。愛する弟にこんな悲しそうな顔をさせてしまったのだ。


『シア……』


 俺は2人の為にやっていると考えていたが、シアには俺が無理をしているように感じたようだ。


 シアからしたら確かに嫌だっただろう。俺が無理をしている理由が自分達なので余り強く言いたくないのも更に苦しめただろう。


『……シア、ハッキリ言ってくれ。俺がお前達にやっているお節介はやり過ぎか?』


『うん。やり過ぎだと思った。嬉しいけど一緒に心配になってくる。だからこれからは自分のことも考えてやって欲しい。じゃないとナディー兄の事、嫌いになっちゃうからね?』


 シアは苦笑しながら俺にそんなことを言ってきた。……そうか、やり過ぎか。

 前世だと妹も弟もいなかったから加減が分からなかったな。でも、そん俺を止めてくれる弟がいるんだからやっぱり俺は幸せものだ。


『シアに嫌われたら俺が今度は泣いちゃうよ。……分かった。今度からはシアやなんなを心配させないようにしながら頑張っていくよ。』


 俺はシアの愛情を再確認しながら今後は心配させないように行動をしていくことを誓った。


『なら良いよ!ナディー兄が僕達との約束を破るはずがないもん。ナディー兄、お話が終わったからノル姉を探しに行こうよ。』


 シアは俺が約束するのを見ると満足したようで今度は笑顔をしっかりと見せてくれた。


『ノ、ノルか?あいつどこまで逃げたんだろうな。』


 シアが次の標的を補足していることに苦笑していたが、確かにノルはどこに行ったのか?それは俺も気になるのでシアと一緒にノルを探すことにした。


『ノルを探すとなるとまずはどこから探す?』


『うーん、どこから探そうか。いつものかくれんぼなら探す場所は決まっているんだけどね。』


 俺がノルとシアといつもかくれんぼをして遊ぶ時はいつもノルは決まって隠れる場所があり、いつも最初に決まってノルが見つかっていた。


『うーん、どうなんだろうな。今回はかくれんぼじゃないからノルがそこにいるとは限らないんだよな。』


『でも、今の所は何のヒントもないんだからそこを探すしかないよ。』


 話し合った結果、まずはかくれんぼと同じ場所を探して行く事になった。






 ─────────

『おーい!ノル〜どこにいるんだ〜?』


『ノル姉〜!居るなら出てきてよ〜!』


 俺とシアがやって来たのは俺がいつも寝ている場所だ。ノルはいつもならここにやって来ているのだが、今回は来ていなかった。


『いつもなら来ているんだけどノルの奴、どこに行ったんだ?』


『ナディー兄。ノル姉ってここに1回来たの?』


『いや、ノルの匂いがしないからここには寄ってないな。』


 シアの【超嗅覚】ではまだ残っている匂いなどは見つけるのが難しく、俺に聞いてきたが、ノルはここには寄っておらず、ノルの居場所を探すのは難しそうであった。


『ノルの奴、どこに行ったんだ?かくれんぼじゃないけど俺の寝床に寄ってすらいないなら場所を特定することも出来ないぞ。』


『ナディー兄。お父さんとお母さんに見てないか聞いてみよう。もしかしたらどこに行ったのか見てるかもしれない。』


『ああ、分かった。……この時間だと母さんから探した方がいいか。』


 俺達はノルの居場所を探す為に母さんに見ていないか聞くことにした。


 ───────────


『母さん〜、ノルの事見てない?』


『あら?また、かくれんぼっていうのをやっているの?』


 俺達は母さんに話しを聞くために母さんが寝ている木の下へやって来ると案の定、母さんはそこでくつろいでおり、俺達を見て微笑ましそうにしていた。


『いや、今回はかくれんぼじゃないんだけどノルがどっかに行っちゃたからノルを見てないか聞きに来たんだ。』


『そうだったの。ノルだったら確かあっちの方向に行ったはずよ?』


 母さんはそう言うと森の北側、森の奥の方角を向いた。森の奥の方か…。ノルは何でそっちに行っちゃたのかな……。


『母さん、ありがとう。そっちの方を探してみるよ。』


『お母さん!教えてくれてありがとう!』


『うふふ、後で3人と遊べたらそれで良いわ。……ただ、やっぱり森の奥は危険だから危ないと思ったらノルを見つけてすぐに逃げるのよ。』


 俺とシアは母さんにお礼を言い、ノルを探しに森の奥へと向かって行った。


 ──────────


『シア!ようやくノルの匂いを見つけたぞ!』


『ナディー兄、本当!?』


 森の奥に入って少し深い場所まで行ってみると俺の【超嗅覚】でノルの匂いをようやく見つけることが出来た。


『この距離だと深層の に入るギリギリまで行ったなノルは。……あいつ、そんな所まで行くなよ。』


『ナディー兄!とにかくノル姉を早く見つけよう!』


 俺がノルの行った場所に呆れているとシアは早くノルを見つけたいようで俺を待たずに先走ってノルの元へ行ってしまった。


『おーい。シア、待ってくれ!お前まで探すことになるぞ〜。』


 早く姉を見つけたいシアのことを少し微笑ましく思いながらも俺もノルを早く見つけたいためシアを追いかけるように走り始めた。



 ノルが居る場所に行くとそこは本当に深層のギリギリ手前で、そんな所に来たノルはのんきに木の上でぐっすりと寝ていた。


『ノル姉!起きてよ!も〜。』


『シア!先走るな!』


 俺がシアに追いつくとシアは寝ているノルを起こそうとしており、木に突撃して揺らしたり、大声で叫んだりと色々と試していたようだがノルは中々起きる気配がなく、涎を垂らしながら寝ていた。


『あ!ナディー兄。ご、ごめんなさい。ノル姉のことを考えるとつい……』


『うん!ノルのことを考えるとしょうがないな!シアは何も悪くないから!』


 可愛すぎる。俺の弟は何でこんなに可愛いのだろうか?

 俺がそんなアホなことを考えていたが、ノルの方を向いてみると違和感を感じた。


『ん?』


『ナディー兄?どうしたの?何か見つけた?』


 シアは俺が違和感を感じたことに気づくとシアは感じなかったようで不思議そうにしていた。


『いや、何か……』


 この木が生きているみたいだ。

 そう言おうとした瞬間、ノルの乗っている木がこちらへ向かって


『『な!?』』


 俺とシアは慌てて避けるとノルの乗っている木に目と口が現れ、現れた口を歪ませながら笑ってきた。


『ナディー兄!?こいつ何?』


『分からん。でも、こいつから感じるマナがノルからも感じられる。恐らく、魔法かスキルで眠らされている!ノルを起こすにはこいつを倒すしかなさそうだ!』


 木の化け物は俺達を見つけると俺達がダメージを与えられなかったのが不満らしく、笑っているのを止めるとこっちにプレッシャーを放ってきた。


『おい!木の化け物!俺の可愛すぎる妹を返してもらうぞ!』


 俺もそのプレッシャーに負けじと【威圧】を発動させ木の化け物と戦うことにした。



 ───あとがき─────────────

 ノルが居たのは木の魔物の上でした。分かった人はいないと思います!不満があればどうぞコメントしてください。

 こんなふざけた答えはもう用意する気はありません。


 そして、先週は更新出来なくてすいませんでした!(。>ㅅ<。)💦

 明日も更新する予定ですのでこれからもこの作品を見て下さい!

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