第18話 オオカミ、戯れる
ノーラに初めて戦闘訓練を付けた翌日、ノーラももうヘトヘトで今日は無理そうだったのでそのまま、お開きにすることにした。
いや〜〜色々と不安だったけど、意外と親父の言っていた通り困ったら戦闘訓練を入れてもいいかもなぁ。
俺はそんなことを思いながら今日の予定を考えていた。しかし、今日はどうするか。元々ノーラの特訓をやる予定だったけど、ノーラが戦闘訓練で疲れて今日の予定がなくなったから何をするべきか……
『て言っても魔物は今はいらないしなぁ。
レベルが上がらなくなってから美味しくないし。スキルレベルは上がるからまだギリギリやる気はあるけど。』
そう、俺がこの2年間で大きく変わったことの2つ目はレベルが上がらなくなったことだ。
2年前、進化してからすぐはいつものようにレベルが上がり、またすぐに進化できるだろうと考えていたのだが、レベルが15を過ぎたあたりから途端にレベルが上がらなくなったのだ。
ここで打ち止めなのかと慌てて親父に確認したらどうやらそうではなく、俺が強くなったのが原因らしい。
レベルのだいたいは魔物との戦闘で上げることが出来る。
それは自然の摂理になっており、魔物が魔物を倒しても変わらない。
最初のうちはどんな魔物を倒してもレベルが上がっていくが、だんだん強くなってくると弱い魔物を狩っても経験値が少なくなる。
それは当然であり、強い魔物が弱い魔物を倒してレベルを上げまくっているとそこら辺に化け物みたいな奴らがうようよ蔓延ることになる。
そんなことになっていれば、この世界はもう滅んでいるだろう。
そうならない為の措置なのかレベルを上げたり、進化を重ねていくと必要な経験値が増えたり、弱い魔物を狩っても経験値がもらえなくなつたりする。
つまり、強くなりたかったら自分より1段階下の魔物からでないと経験値を手に入れることが出来ない。
俺は森の中では中層の上位に入ったようで、経験値を得るためには森の深層の方に向かわないとレベルが上がりずらくなってしまったのだ。
『……いくら強くなりたくても、【危機感知】がヤバいくらいに鳴っている方に行きたくないんだよな……』
レベルの為に森の深層に向かいレベルを上げるのか?と聞かれても俺の答えはNOである。
ちょっと前に森の深層に興味本位で行ってみたところ、あと一歩踏み入れれば深層というところで俺の【危機感知】がオークと戦った以上の警報を鳴り響かせた。
【危機感知】が今まで以上に鳴ったため、警戒すると近くに魔物もいないため、おそるおそる深層に足を踏み入れてみると途端に空気が変わった。
いつも歩いている森なのか疑うほどに空気は重たく、その場にいるだけで死を直感した。
俺はそのまま深層を離れて今は深層に行かないことを心に決めた。
その為、レベルを上げることができない今はどうするべきか……
魔法の特訓か、それとも何か別のことってあったっけ?
そんなことを考えながら歩いていると俺達が住んでいる住処のリビングのような場所に出ていた。
『あ!おにーちゃん起きたの?おはよう!』
『グヘッ!』
俺はそのまま物思いにふけっていると、先にリビングに居た先客……俺の妹の突撃を受けた。
『えへへー。おにーちゃんおはよう!今日も大好きだよー。ぎゅーー!』
『…ノ、ノル俺が身構えてない時に突進してくるの止めて。俺が下手したら死んじゃう。』
妹のノルはどうやら俺が可愛がりすぎた結果、ブラコンに育ってしまったらしく、母さんに似てよく俺のことを見つけると抱きついてくるようになった。
ノルの種族は俺の進化候補にもあった【レッサーブラックウルフ】なのだが、攻撃力が上がりやすくなってしまっているため、俺でも不意に食らってしまうとダメージが入る。
しかもどうしたら手に入れたのか身体強化系のスキルを俺が知らない間に手に入れており、そのスキルもレベルが高いせいで抱きついてくる際の威力が上がっており、下手をしたら本当に死んでしまう。
『なあ、ノル?俺が好きなのは分かったから俺のことを離してくれないか?』
俺は毎日のようにいつも言っている言葉を言ってみた。でも、だいたいこれを言ってもノルの返事は決まっているよな。
『嫌だ!おにーちゃんと離れたくない!……もしかして、おにーちゃんは私のこと嫌い?』
俺が離れてほしいと言うとノルは決まってこのセリフを潤んだ目をしながら言ってくるのだ。
ずっと可愛がっている妹にこんなことを言われて離れる兄がいるのだろうか?俺はいないと考えている。
なぜなら、俺にはこの可愛い生物と離れるなんて無理だからだ。
『しょうがないなー。少しだけだからな?』
そう言いながら俺は頬をだらしなく緩ませ、ノルを甘やかした。さっきと言っていることが逆だ?しょうがないだろう。
俺もノルほどではないが、シスコンになってしまっているのだ!もうノルがめっちゃくちゃ可愛いのだ!
産まれたての頃から俺の近くにやってくるのだ。俺も可愛くてついつい構っていたら俺とノルは気がついた時にはこうなっていた。
今更だと思うし、俺とノルも離れる気はないので、こんな風にいつもノルからくっついて俺が離れようとするとノルが目を潤ませ、俺がデレデレする。こんなことを俺達は飽きずに毎日やっていた。
しばらくノルとくっついているとかなり時間が経ってしまったようで親父が俺達の前にやってきた。
『ふむ、起きていたか。それにしてもまたいつものか……貴様らはいつもそんなことをしてよく飽きないな…』
親父は俺達を見ると呆れた目をして俺達のことを見ていた。?なんで毎回呆れられるのかが俺には分からない。
可愛い妹と抱きついているだけなのだが、なんで呆れられるんだ?
『おとーさんおはよう!』
ノルは親父に気がつくと親父の方を向いて元気にあいさつをしていた。ただし、俺から離れないで顔を前に上げて、だ。
『ああ、おはようノル。お前は毎日そんな風にしていてよく飽きないな。』
『うん!おにーちゃんのことが好きだもん。それにおにーちゃん、ヒンヤリしててくっついていると、とっても気持ちいいし、いい匂いだもん!』
親父はノルに呆れたように言ても、ノルは笑顔でそんなことを言ってくれた。……お兄ちゃん、お前のお陰で今なら何でもできそんな気がするよ。
『はぁ、そうか。なら好きにしていろ。だが、ナディー。ノルに構っていてもいいが、シアをそろそろ起こさなくてもいいのか?』
『あ!もうそんなに時間経ってた?やばい!またいじけられたら次こそは俺も立ち直れなくなる!』
くっついたままでいると親父が弟のシアを起こしてくる時間なのを教えてくれた。
ノルとシアは双子で見た目は瓜二つなのだが、ノルが【レッサーブラックウルフ】だったが、シアは【レッサーホワイトウルフ】に進化していたり、ノルは元気いっぱいで積極的に動くのに対し、シアは大人しく自分が好きな場所にずっと座っていることが多いのだ。
そして例に漏れずに俺がしっかりと可愛いがった結果、シアもブラコンとシスコンにしている。当然、俺もノルのこともシアのことも大好きなので、きょうだいみんなで仲がよく、そしてブラコン、シスコンなのだ。
シアはだからなのか俺に起こしてもらわないと不機嫌になり、初めて拗ねられた時には俺の心にとても大きなダメージを負うことになった。
傷の大きさならオークから受けた傷よりも大きいだろう。
『ノ、ノル。頼む、シアを起こしに行かないと俺の心が死んじゃう。だから早く起こしに行かないと!だから少しだけでいいから俺をノルの所に行かせてくれ!』
俺は慌ててノルに離れてシアの所に行かせてくれるように頼んだ。ちなみに最初に離れてくれと頼んだのは冗談だが、今回はマジである。
『え〜〜。離れたくないー。…でも、シアが泣いちゃうのも嫌だし…うーー』
ノルも俺から離れたくないが、シアの を泣かせるのも嫌なため、離れた方がいいのか迷っていた。
『……シアを泣かせたくないから一旦離れる。でも、おにーちゃん!私も行く!』
『あ、ああ!ノル、急いでシアの所に行くぞ!』
ノルが俺からくっつくのを止めたのを確認すると俺とノルは急いでシアを起こすためにシアの元へかけていくのだっだ。
──あとがき──────────────
妹と弟登場です。2人は生後1年ぐらいの設定です。ようやく双子を出せたので感動してます。
作者的には双子キャラとブラコン、シスコンは大好物なので好きな人はぜひ教えてください。
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