第15話 オオカミ、教える
ノーラに魔法を教えるにあたり、俺はノーラから知っている限りの人間の知識について教えてもらった。
人間の場合は5歳になると教会に行き、祝福の儀を受けることで初めて神様からスキルを授かりステータスなどを確認できるようになるらしい。
ノーラは祝福の儀を受けた際に【土魔法】のスキルを授かったようで土属性の魔法が使えるらしい。
人間も努力をすれば新しいスキルを獲得できるようなので3ヶ月ほどでノーラは【マナ感知】と【マナ操作】を獲得することができた。
「う〜〜。難しいよ〜。」
俺は現在、ノーラに的に魔法を当てる練習をさせている。ノーラは魔法を構築するのがとても速く、【マナ操作】のスキルレベルもすでに4まで上がっていた。
俺は今、ノーラに魔法を同時に構築する特訓をさせていた。ノーラは魔法を的に当たることも少し苦戦したのだが、特訓を頑張り、今ではかなりの確率で当たることができた。
そのため、次のステージとして魔法の同時発動を教えようとしたのだが……
「ファンタジア、どうやって同時に発動とかしてるの?どう頑張ってもできる気がしないんだけど…」
どうやらかなり難しいらしくやってみようと努力してみてもうまくいかず、毎回俺にこんなことを言ってきた。
うーん。でも俺は4つまでならできるしなぁ。
ノーラも才能だけで言えばかなりのものだと思っているため、やってみればできると思っているのだがなかなかその壁を超えることができていなかった。
ノーラの前で魔法のボールを2つ同時に発動して遊んでいると変なものを見る目で見られていた。
「それだよ!なんでしれっとできてんの?こっちは2ヶ月ぐらいやってんのにできないんだよ?ファンタジアはどれぐらいで、できたのよ。」
俺が遊んでいるとノーラは怒ってきて俺にどれくらいの期間でできたのかを聞いてきた。
うーん。どれぐらいだったか…
マナを常に循環させ始めてから3週間ぐらいで思いついた時にできたんだったか…
『だいたい3週間くらい?』
俺がそう答えるとノーラは変わらず俺に怒りをぶつけて来た。
「ほら!私よりかなりはないじゃん!どんな特訓したらそんなことができるようになるのよ…」
うーむ、ノーラにもマナを常に纏わせることをやらせてみるか?いやでもなぁ。これやってると慣れないうちは色々と制御が効かなくなるし、常に神経を使うから健康に良くないんだよなぁ。
俺はノーラの特訓の方法を考えてみたが、なかなか良い案が思い浮かぶことはなく、ただただ時間だけが過ぎていった。
「ふーー。疲れたぁ。今日はもういいかな?」
気がつくと日がすでに暮かけており、ノーラもかなりマナを使ったため、疲労が目に見えて現れていた。
「じゃーね。ファンタジア!また今度よろしくね!」
ノーラはそう言うと、駆け足気味で帰って行った。
はぁ、どうやって教えていけば良いんだろうな…
俺はノーラにいつも大事なところで肝心なものを教えることができないでいるため、コツなどを自分でも考えてみても結局はマナを循環させていたらなんとなくできるようになったのがほとんどだからどう教えていけば良いんだろう……
俺はそんなことを考えているとふと親父のことが頭をよぎった。
『親父ならどんな内容にしたんだろうな……』
親父は俺を鍛える時、的確に指導をして俺のことを強くさせてくれた。
時々スパルタ過ぎる時もあった気がするが、それも俺の力になったし、苦しいと思っても無駄だと感じたことは一度もなかった。
『何?魔法技術を手っ取り早く上げる方法?』
その日の夜。俺は親父にアドバイスを求めることにした。
『ナディー。貴様はもう十分高いとユキから聞いていたのだが、どうしたのだ?』
親父は俺がこれ以上上げようとしているのかと思い、怪訝な目で見てきた。
『違うよ。俺じゃないんだよ。』
『ふむ。貴様でないとしたら『あいつら』か?』
『うん、まぁそんなところかなぁ…』
『……なぁ。親父に聞きたいことがあるんだ。』
『うん?どうしたのだ?聞きたいことか?』
親父は俺に何かを聞かれると思っていなかったようでキョトンとしながら俺に尋ね返した。
『親父は俺の鍛える時にどんなことを考えてやってくれてるんだ?』
俺は親父に何故、そこまで上手く鍛えることができるのかを聞いた。
俺はノーラをどう鍛えていけばいいのかが分からなくて困っているが、親父は俺に特訓をさせるときどんどんと与えて育ててくれた。
親父は俺の疑問を聞くと少々驚いたが次第に笑っていった。
『フハハハハハ!なんだどうしたのだ?そんなことを気にしていたのか。そんなつまらんことを考えているとは……呆れたものだ。』
『あ、呆れたって結構大事なことだろ!?それなのにつまらんって……』
俺は親父にそんなことを言われると思っておらず、ムキになった。そんな俺の様子に親父はまた一段と笑い、落ち着いてくると真剣な表情をして俺のことを見てきた。
『ナディーよ。まず、お前に問うが我がいつお前にアドバイスをしたことがあった?』
『は?』
『親父からアドバイスを貰ったこと?そんなのあるに決まって……』
いる。そう言おうとして俺は固まった。そうだ、親父はこれをやってこいと言ったことはあってもこんな風にやるといいとアドバイスを言ってくれたことは一度もなかった。
俺がそのことに気づき固まっていると親父は俺に対して少しバカにしたように笑ってきた。
『気づいたか?別にコツなんてものは教えなくても勝手に気づかせてやればいいのだ。』
そして親父はなんとも放任な返答をしてきた。
『おい!そんな適当でいいのか?しかも勝手に気づかせておけって……』
俺がそんな答えに呆然としていると親父はうざったそうにしながら俺のことを見つめてきた。
『面倒だな貴様は……なに、そんなに気づかせてやりたいのなら戦闘訓練として戦わせておけば良い。』
『そ、そんなことで良いのか?で、でも、俺も確かに上手く伝えられないし……』
そんなふうに俺がウジウジしていると親父はハッキリとした口調で言ってきた。
『何をそんなに悩んでいるのだ?相手が理解をできるようになどを考えて伝える必要などあるまい。下手くそでもいい。自分がこれを伝えたいと思ったことを伝える努力させすれば良い。
相手に伝わらずとも何かを感じ取ることはできるはずだ。』
親父はそんなことを言ってもう飽きてしまったのか寝てしまった。
俺はというと親父の言葉が頭に残り中々寝付くことができなかった。
伝わらなくても良い?努力が大事?結果じゃなくて?
俺は前世のことを思い出していた。
『一体なんど言ったらいいんだ!?努力しました?結果が大事に決まっているだろうが!努力したというのなら結果でしめせ結果を!』
前世の会社では結果が全てだった。どんなに努力をしてもコネや金で結果さえ残していればどんなやつでも生き残ることができた。
最初は頑張ろうと努力をした。だが、だんだんと努力をする意味を見失っていき、ゲームに逃げるようになって行った。
『努力が大事……』
そして異世界で親父にそんなことを言われて今までのことを振り返ってみた。
異世界に来てからは結果だけが大事なことなんて一度もなかった。
やるかやられるかのサバイバルでどんな風に動いていかなきゃいけないのか努力の部分も大事だった。
俺はもう前世みたいに過ごすのは嫌だ。死んだように過ごしたくはない。だからやらないで後悔をするより、やった後に後悔をしたい。
そう決まると俺の気持ちは最初よりもずいぶんと軽く、ノーラに与えるべき特訓内容もすぐに思いつくことができた。
『ノーラには悪いけど、今後は厳しくしていくか……』
俺は苦笑しながらそう呟き、深い眠りにつにくことした……
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