第13話 オオカミ、生き抜く
オークを倒すことができたのか?
俺は生きていないか警戒しながら、オークの側に近寄り確認をした。
オークには親父にやられたときに付いたであろう傷跡が残っており、そのすぐ横に俺が付けた傷もあり、傷口から血がとめどなく溢れていた。
息もしておらず、目は虚ろで完全に死んでいるのが分かった。どうにか倒すことが出来たことが分かると、緊張の糸が切れて疲れやマナの使い過ぎによる疲れがどっと来た。
…やっば…意識が吹っ飛びそう…
どうにか持ち堪えると俺は人間の女の子を探し始めた。オークと戦っているときは近くにいなかったが遠くまで逃げたのか?
そう思っていたが案外すぐに見つかった。
近くの草むらに隠れており、こちらを怯えながら見つめていた。
「ヒッ!」
俺が見つけたのが分かると女の子は悲鳴を上げてきた。あんなにヤバそうな奴を倒したから俺もヤバそうってことなのか?
少しショックを受けていたが、どうやらそれだけではないようだ。
あ、【威圧】を解除するの忘れてた。
オークと戦っている間、少しでも相手を怯ませることができると思ったため、気を引いた後、ずっと発動しっぱなしだったのだ。
試しに解除してみると女の子は恐怖心が消えたようでこちらに向かって叫んできた。
「わ、私を食べる気?さ、さっきのオークの方がお、大きいしたくさん食べられそうでしょ?だからお願い、私を食べないで!」
何言ってんだ?俺がこいつを食べる?
は?
????????????????????
俺は何を言われているのかが分からなかった。
が、すぐに理解することができた。
俺はこの女の子を助けるつもりで戦ったが、この女の子にとっては魔物どうしが戦っており、オークが倒れたため、次は自分が倒されると考えたのだろう。だから、俺を見て怯えているのだ。
うーーーん。どうしたもんかなぁ。この女の子からそのまま離れれば解決なんだろうけど、俺が倒したオークの肉の匂いに釣られて近くの魔物が寄って来る可能性がある。そのまま悩んでいると……
!
俺は女の子に飛びかかり、そのまま爪を振り下ろした。女の子はステータスが高くないのだろう。俺が攻撃しようとしていることにも気づいていなかった。
俺はそのまま女の子の後ろで襲おうとしていたゴブリンに攻撃をした。
レベル差があったため、一撃で倒すことができた。
「え?」
女の子もようやく気付いたようでこちらの行動に驚いていた。
「も、もしかして、助けてくれたの?」
こちらが助ける意志があることを理解したようだ。俺が頷くと、
「え!?私の言葉が分かるの!?」
俺が言葉を理解しているのがそんなに不思議か?まぁ、でもあいつらはこっちのことを見つけると見境なく襲ってくるからなぁ。
「…ねぇ。触ってみてもいい?」
俺が襲わないのが分かると意を決したようにこちらに聞いてきた。
俺が受け入れると、警戒を少し解いて恐る恐るこちらに触れてきた。
あまりにもゆっくりとしていたので、俺の方から触られに行った。
「少しゴワゴワする…でも暖かい…」
俺が触られに行ったことで完全に信頼したようで気を抜いて俺を触るのに夢中になっていた。
ゴワゴワ……
そんな中、俺は少なからずショックを受けていた。
俺、毛並みに気を遣ってなかったけどゴワゴワしているのか……
洗うのも気を使っていたけどそうなのか……
実は俺、オオカミに転生してからは毛並みに気を使っており、母さんにも褒められていてとても嬉しかったのだが、人間が触るとそう思うのか……
「え?どうしたの?ねぇ。なんか答えて!?」
俺が落ち込んでいると露骨に態度に出ていたのだろう。心配をしてくれたが、俺が何も答えないでいると、揺さぶってきたり、叩いてきたりした。
少し経つと俺も立ち直り、女の子…ノーラも俺にお礼を告げて家に帰った。
俺も住処に帰ると、まず母さんが俺に予想通り突っ込んできた。
『ナークーンー!』
いつもなら受け止めるが、今はオークとの戦いでもう力が残っていないため、避けることにした。
俺が避けると母さんはそのまま地面に突っ込んだ。
『ちょっと、ナー君!なんで避けるのよ!いつもはやってこないのに、どうしてなの!?』
母さんは立ち上がると、俺に詰め寄り不満を言ってきた。
『ごめん母…さ…ん。今、めっちゃ疲れてるんだよ。』
『あら、そうだったの!?ナー君、怪我を見せなさい!…まあ、大変!急いで回復魔法をかけてあげないと!』
母さんは俺が怪我をしているのが分かると、今度は慌ててきて、そのままの勢いで回復魔法を掛けてくれた。
『他に怪我はない?誰にやられたの?お母さんに教えてごらんなさい?今すぐにそいつをヤってくるから。ね?』
回復魔法をかけ終わったが、それでも心配をしてきて、さらにはどこかに向かいに行きそうになっていった。
『チョッ!母さん!落ち着いて!』
『これが落ち着いていられるもんですか!ナー君に怪我を負わせたのよ?ケジメをつけさせないと気がすまないわよ!』
どうにか落ち着かせようとしているが、なかなか落ち着かせることができず、手をこまねいると親父が来てくれた。
『どうしたのだ?向こうまで聞こえてきたぞ?』
『親父!いいところに来てくれた。助けて!』
『ん?なんだ?いつものことか?はぁ。おいユキ、落ち着け。』
『ベインまで何よ!ナー君に怪我を負わせられたのよ!ケジメをつけさせないと!』
『だから落ち着けと言っているだろう。ナディーが帰って来たのだ。こいつがやられたままではもうあるまい。倒しているに決まっているだろう。』
『え?そうなの?ナー君。』
『はぁ、やっと聞いてくれるようになったね。うん。そうだよ。そいつはもう倒しているから。』
『あら、そうなの。ごめんなさい。つい、ナー君のことになるとつい…』
そうして母さんを落ち着かせ、自分の寝床に戻ることができた。
俺はそのまま、ステータスを開いた。
『うん。やっぱりレベルがマックスになっている。2回目の進化ができる…』
俺はそのことを確認すると進化を念じた。そうすると今回は選択肢が現れず、そのまま意識を失った。
【ナデイーの眠りを確認…進化を開始します。】
【スキル〈剛力〉を獲得…成功しました。】
【スキル〈堅牢〉を獲得…成功しました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈超嗅覚〉が4→5に上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈危機感知〉が4→6に上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈威圧〉が3→5に上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈爪術〉とスキル〈牙術〉が6→7に上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈マナ感知〉が4→6に上がりました。】
【熟練度が一定に達しました。スキル〈マナ操作〉が5→6に上がりました。】
【ユニークスキル〈加速〉が3→5に上がりました。】
【条件を満たしました。スキルの進化が可能になりました。】
【スキル〈爪撃〉とスキル〈牙撃〉がスキル〈真爪撃〉とスキル〈真牙撃〉に進化しました。】
【進化によるステータス強化を確認…成功しました。】
うん?目が覚めると疲れはなくなっており、また背が少し伸びたようだった。
ステータスを確認してみると、種族はレッサーセラドンウルフからセラドンウルフに進化していた。レッサーがとれただけだか、ステータスの伸びが凄まじく、やはり進化の影響がすごいと感じた。
ん?〈爪撃〉と〈牙撃〉が進化している?スキルの欄を見ていると、新しいものにも目が行ったが、〈真爪撃〉と〈真牙撃〉に一番行った。
【真爪撃】
【爪による攻撃力を上げる。レベルが上がるごとに威力が大幅に上昇する。また、MPを消費することにより、技〈
技?〈爪撃〉のときには無かったものがあった。魔法じゃないけどMPを使うのか……
でも、オークの時とかみたいに魔法に耐性があるやつもいるかもしれないしかなり使えるかもな。
〈真牙撃〉も説明文は同じで技は〈
…しかし、オークも強かったな。
俺はステータスを確認を終えるととオークとの戦いの余韻に浸った。
俺はどうにか生き抜くことができた。まだこの世界には来たばかりだ。まだまだこの世界を楽しむためにもこれからも強くなってこの世界で生きていくぞ!
——————
第一章完
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