第10話 オオカミ、再開する

魔法を母さんから教わり、1ヶ月が経った。

最近は魔法の練習ばかりしており、【影魔法】のスキルレベルは3、【氷魔法】のスキルレベルは5まで上がった。


まだまだ戦闘に取り入れるにはマナの操作が上手くできす、母さんに指導してもらっている。


『ナー君、マナの動きがまだまだ粗いわよ。もっと意識しなさい。』


母さんとの修行で、スキル【マナ感知】はレベル4に上がったがスキル【マナ操作】の方はかなり難しく、まだレベルが2までしか上がっていない。


『母さん、マナの操作難しすぎない?動かなければある程度は魔法が使えるけど、動きながらだと、簡単な魔法しか使えないよ。なんかコツとかないの?』


『うふふ、それはそうよ。マナの操作も本来は半年かけなきゃ覚えられないのよ。ナー君が特別覚えるのが早いだけで私だってかなり苦労したのよ?でもコツね〜、マナの操作は感覚でしか伝えることができないからなぁ…

強いてゆうなら、常にマナを体の中で循環させることを意識して過ごしてみたら?そうすればマナの操作も上達するんじゃない?』


それ、コツじゃなくて修行方法じゃん…

結局コツを教えてもらえずその日の修行が終わった。

だけど、その日から俺は常にマナを体の中で循環させながら生活することにした。


かなり辛いやつだけど、慣れればかなり上達できるはずなので頑張ることにした。


マナを常に循環させながらの生活も最初こそ苦戦したが一週間も経てばすっかり慣れ、今では【マナ操作】のレベルが【マナ感知】のレベルを超え5まであがった。


しかもマナを循環させているとどうやら身体能力も上がるそうで【身体強化】のスキルを獲得することができた。


【身体強化】は【疾走】とは別のスキルらしく、足の速さだけではなく、攻撃力や防御力、マナ操作の精度までもが上がっていった。


そんな日々を過ごしたある日、

今日は母さんとの修行も親父からの課題も特に出されず暇になっていたため、森の探索をしていた。


狩りをするにしても住処の川には魚が泳いでるため、そこまで遠くに行ったことが今までなかった。


転生初日も探索をしていたが、オークに襲われてしまい、結局よく見ることができなかったので森の中がとても新鮮に見えた。


俺は森の浅いところに現在向かっており、現在そこまで苦戦するような敵には出会っていなかった。


様々な植物があり、強烈な匂いやとても甘い匂いなど、色々な匂いがした。

匂いを意識することがあまりなかったがかなり興味深く、結構楽しむことができた。


そんなふうに探索を楽しんでいるとなにかが突進してくるのを感知した。


ん?この匂いは…

やって来たのは一匹の猪だった。

普通の猪よりも体格が2回りも多く、鋭い牙が口から覗いていた。


あれは!ダートボア!めっちゃうまい肉!

この前この猪を見つけたとき、親父と母さんの目つきが変わりすごく怖かった。

3頭程で行動しており、全員倒すと、親父と母さんは一心不乱にその肉を喰らっていた。


俺はそこまでやるもんなのか?と、疑問を抱き恐る恐る食べてみた。

その瞬間、俺は今までこの肉を食べなかったことを後悔した。


普通の猪よりも肉が柔らかく、火で炙っていないのにも関わらず、脂が噛むたびに溢れた。

こんなうまいものがこの世に存在していいのか!?


気がつけば俺が食べていた肉はなくなっていた。どこかにないのか?と、探してみたが10分後、俺が食べたのだとようやく気がついた。


それぐらいうまかった肉が目の前にあった。これは狩るしかないじゃないか。

『【アイスウォール】』


俺はまず【氷魔法】で壁を作り、ダートボアが逃げられないようにした。

ダートボアはこれに驚いたようで俺に突撃しようとしたのをやめ、急いで周りを確認した。


アイスウォール】はかなり狭めに作っており、ダートボアは勢いをつけて突進しようにも加速するのに十分な距離がないため、ダートボアは立ち往生していた。


俺は立ち往生しているダートボアに氷魔法で拡張した爪の斬撃を【加速】を使い、高速移動をしながら浴びせ続けた。


【経験値を100獲得しました。】

【経験値が貯まりました。ナディーがレベル15→17へ上がりました。】

【熟練度が一定に達しました。スキル〈爪撃〉とスキル〈牙撃〉が8→9へ上がりました。】

【熟練度が一定に達しました。スキル〈威圧〉が2→3へ上がりました。】

【熟練度が一定に達しました。スキル〈身体強化〉が1→2へ上がりました。】


ダートボアは倒れ、俺は無事に肉を手に入れることができた。さっそく食べようと思ったが俺は少し思いとどまった。


待てよ?これを黙って食べたのがバレたら親父と母さんからやばい恨まれるかないか?ダートボアの肉のために真剣になるあの2人のことだ、俺がダートボアを見つけていてしかもその肉を俺だけが食べたのを知ったらどんな目に会うのか分かったもんじゃない。


うーむ、どうしたもんか…

俺はどうにかこの肉を持って行かないか悩んだ。ステータスのゴリ押しで持って行こうにもダートボアの体格が大きすぎて俺では持って行くことができない。


ん?そうだ!

俺はあることを思いついた。俺には【影魔法】がある。影の中の空間に物を入れることはできないだろうか。


さっそく俺はイメージを開始した。

少し苦戦してしまったが無事、【シャドー空間ボックス】という影に物をしまう魔法を作り出した。


さっそく発動させ、ダートボアの肉をしまってみた。

すると見事に成功し、ダートボアの肉を俺の影にしまうことができた。


よし、これで2人に怒られずにすむ!

…しかし、この魔法、かなり便利なんじゃないか?

この魔法、MPの消費が少ないのだ。中に入れている間、マナを消費することもなく魔法を発動させるときだけMPが消費されるためかなり使いやすい魔法であった。


俺は気分を良くして探索に戻ろうとしたときそれは起こった。


【危機感知】のスキルが今までにないほどに頭の中に警報が鳴り響いた。


なんだ!?

俺は慌てて周りを警戒しだした。

匂いでも確認してみたがここら辺は薬草が多いらしく、匂いが辺りに広がっており見つけることはできなかった。


俺はいつも以上に警戒しているとそいつは現れた。


黒い肌で先程倒したダートボアと同じぐらい大きく、腕は大木のように太く、何よりも特徴的だったのは顔が怒りの表情を浮かべその表情のままだったことだ。


…俺はこいつを知っている。

本能的にそう感じとった。いつどこで知ったのかを振り返っていると転生初日を思い出した。


こいつ、あのときのオークだ。

親父が倒したんじゃなかったのか?それになんで姿が変わっているんだ?まさか進化したのか?


あのとき襲われた恐怖が蘇り、俺はまた逃げようとした。親父に知らせないと!俺だと勝てない。ハヤクニゲナイトマタコロサレル。


「きゃーーー!!!」


俺が逃げ出そうとすると近くから悲鳴が聞こえた。探してみると近くに人間の女の子がいた。

人間!?

おそらく薬草を取りにきたのだろう。しかし、タイミングが悪すぎた。


オークも人間を認識したらしく先に人間を襲った方がいいと判断したのだろう。俺に襲おうとしたのをやめ、人間の方を襲い出した。


あのままではあの子は襲われて死んでしまうたろう。俺はそのまま、逃げようかどうか迷った。


あの少女のことを俺は知らない。このまま逃げて死んでしまっても俺は心を痛めるだろうがそれだけであろう。


しかし、俺はここで逃げ出すのが怖かった。生き延びるために力をつけた。生き延びるためにここから逃げ出すのは間違っていないだろう。


だけど、親父ならどうした?

あの親父のことだ、逃げることが恥じだなんだと言って戦っただろう。

俺は親父みたいにプライドや誇りが大事とは考えていない。


だから親父のマネをしなくてもいい。

だけど…

オークに襲われ、助けられた時、俺は確かに親父に憧れた。あの威風堂々としたたたずまい。自分の強さに自身を持ったあの目。何より、その行動の節々に俺を絶対に助かるという意思が感じ取れた。


俺はまた逃げようとしている。だが、あの時よりも強くなった。勝てない?そんなはずはない。向こうも進化して確かに強くなったのだろう。しかし、俺はあいつを倒した親父と母さんに鍛えられてきた。


なら、あいつを倒せない理由はない。これはリベンジマッチだ。

転生して初めてのトラウマ。それに打ち勝ち、俺はより一層強くなる。


そのついでに女の子1人を助かるくらいわけはない。

さあ、あのときの借りを返してやるぜ。

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