第8話 オオカミ、魔法を覚える

フォレストグリズリーを倒すと親父が森の奥から出てきた。


『進化した力を体感してみた感想はどうだ?』


少し笑いながら聞いてきた。

確かに初めてこれを体感すると笑いたくなってくる。


『めっっっちゃすごい。進化するとこんなに世界が変わるんだ。』


俺はそのままの感想を伝えた。


『その通りだ。進化ををするとクラスが上がり、見える世界が変わってくる。しかし今見ている世界で終わりではない。ならばもっと上の世界を見てみたくはないか?』


親父は俺の感想に満足し、更に上を目指さないか?と笑いながら聞いてきた。


確かに目指してみたい。どこまで俺自身が高みへ登ることができるのか。どこまで世界が広いのかを。


『あぁ、もっと上の世界がどこまで続いているのかを俺は知ってみたい。そのために俺は

もっと強くなりたい。親父達が見ている景色を見てみたい。』


親父に何かを聞いてみることはあっても俺が親父に何かを宣言することはなかったかもしれない。


『ふはははははは!それでこそ我の息子だ。よかろう。我が見ている景色まで辿り着いてみせよ!』


親父はそう言いながら楽しそうに笑っていた。


『そういえばナディーよ。先程の戦いでなぜ攻撃せずに避けた場面があっただろう。あれは何故だ?あそこは攻撃しても間に合っただろう。』


親父は少し疑問を持っていた場面があったらしく、俺に聞いてきた。


『あぁ、魔法を発動させてみようと思ったんだよ。だけど失敗しちゃって。』


特段隠すことでもないため俺は素直に話した。


『ふむ、魔法か。我は教えることができるが、ユキの方がうまく使えるからな。

住処にユキがいるはずだからユキに教えてもらえ。』


へぇー、親父も使えるんだ。

確かブラックウルフって魔法が苦手な種族って書いてたんだけど、親父は普通に魔法が使えるらしい。


俺は母さんに魔法を教えてもらうために住処へ戻った。


『かあさーん!魔法教えてー。』


母さんは中央で寝ており、少しゆすってみたが起きなかったため、耳元で大きな声で叫んだ。


『う〜ん、ナー君?どうしたの?戻ってきて、フォレストグリズリーは倒せた?』


『うん。ばっちり倒すことができたよ。』


『まぁ、さすがナー君!進化したてであいつを倒すなんてやるわねぇ〜。それでどうしたの?ベインは近くにいないけど、私に何か用があったの?』


『うん、俺に魔法を教えて欲しいんだ。さっきの戦いで途中、魔法を使おうとしたんだけど、発動させることができなかったんだ。そしたら親父が母さんの方が自分より、魔法を使うのがうまいから母さんに教えてもらえって言われてきたんだ。』


母さんに俺がやってきた目的を伝えた。すると母さんがなにやら驚いた後、嬉しそうにしだした。


『まあまあまあまあ、それで私のところに来たのね。やっと私がナー君の役に立てるのね。うふふふふふふ。いいわよナー君。私に魔法のことは任せなさい。ナー君を立派な魔法を使えるオオカミにしてあげるわ。まず、マナって知ってる?あら、知らない?それならマナの説明からね。マナっていうのは……』


それから母さんに色々と説明を受けた。

この世界はマナと言う物質が溢れており、この世界の生き物はそれを取り込むことでレベルを上げているらしい。普段、何気ない行動でも取り込んでいるが、それだと微々たるものらしく、一番取り込むことができるのが戦闘らしい。


戦闘で相手を倒すことにより、相手が溜め込んでいたマナが放出され、それを取り込み、レベルが上がるらしい。


そしてついに魔法の説明に入った。

魔法は先程から出てきているマナを使って発動させるらしい。


なら魔法を使うとレベルが減るのか?

そういうことはなく、自身で貯めている魔法を使う用のマナを貯めているマナタンクが体にあるらしく、こっちは日常生活で取り込んでいる分で自然と貯まるらしい。


そして魔法を発動させるのには【魔法スキル】と、【マナ感知】、【マナ操作】のスキルが必要らしく、俺はまだ【マナ感知】と【マナ操作】のスキルを持っていないため、発動できなかったようだ。


『まずは【マナ感知】の獲得を目指しましょう。マナを操作するにも、マナを感知できないと操作しているかどうかも分からないからね。』


『まず、目を閉じて自分の中にあるエネルギーを自覚できる?』


確かになんか俺の中になんかエネルギーの塊があるな。心臓や脳とも違う、なんだこれ?

【条件を満たしました。スキル〈マナ感知〉を獲得しました。】


あ、スキルゲットできた。

ユニークスキル【加速】のお陰だな。


『あら?感知できたの?流石ナー君。普通ここでつまずいてしまうのに、すぐに感知できるなんてすごいわぁ〜。感知できたのなら次は操作よ。自分の体の中にあるマナを動かしてみて。』


そう言われ、俺は自分のマナを動かそうとしてみた。

うぉ!?これ結構難しいぞ。


マナを動かそうとしてみたが、感知はできたがそもそも動かし方がわからないため、苦戦していたが少し動かせるようになるとそこからが本番だった。


マナを動かそうとすると、体も一緒に動いてしまったり、体の中でスピードをつけ過ぎて体が引っ張られ、木にぶつかったりした。


そうして苦戦すること10分後…

【条件を満たしました。スキル〈マナ操作〉を獲得しました。】


やっと獲得できた‥

マナ感知とマナ操作の難易度、違いすぎるだろ…


俺は【マナ操作】のスキルを獲得したのを確認するとその場に座った。


『あら、マナ操作ももうできたの?速いわねぇ。』


俺がマナ操作のスキルを獲得したのを気づいたらしく、驚いていた。

俺、これ【加速】ありでもだいぶへばったのにこれ、普通だともっとかかるんでしょ?魔法使いになるまでの道のり、キツすぎるだろ…


『さて、〈マナ感知〉と〈マナ操作〉のスキルがそろったらいよいよ魔法の練習よ。魔法スキルは何を持っているの?』


ようやく魔法の練習に入るらしい。

魔法スキルか、たしか…


『【氷魔法】と【影魔法】を持っているよ。』


影魔法の名前を出した瞬間、母さんはひどく驚いてしまい、固まってしまった。


『…今、影魔法って言った?…影魔法ってベインのユニーク魔法じゃない…』


?母さんが何か呟いていたけど、聞き取ることができなかった。


『まぁ、いいわ。それならまずは影魔法から練習しましょうか。影魔法なら被害が少ないでしょうし。』


と、いうことで俺は影魔法から練習を始めた。


『まず、魔法を自分が使いたい形にイメージするのよ。魔法スキルにはレベルが上がると、覚える魔法があるけど、影魔法は【ユニーク魔法】と言ってレベルが上がると覚える魔法がないのよ。威力や操作精度は上がるから最初は簡単なものしか使えないわ。』


『ねぇ、ユニーク魔法ってなに?』


魔法の説明をしてくれているが気になる単語が出てきた。


『ユニーク魔法はね、ユニーク個体だけが使える魔法でそのユニーク個体だけの魔法なんだけど…、影魔法の場合は本来、ベインだけの魔法なんだけど、なぜナー君も使えるの?』


へぇー。そうなんだ。あれ?なんでじゃあ俺、親父のユニーク魔法が使えるの?

考えてみたが分からなかったため、親父の息子だからというもので結論づけ、魔法の練習をすることにした。


しかし影か…

影で簡単にできることか、なんだろうな…

ボールみたいに攻撃してみるのをイメージしてみよう。


…影をボールにして、打ち出すイメージ…

俺はイメージを懸命に張り巡らせた。完全にイメージいて見ると、自然と魔法の名前が出てきた。


『【シャドーボール】』


名前を言った途端、俺の影から黒いボールがでてきて木の根本にぶつかった。


すると、木はボールがぶつかった場所から折れてしまった。


『流石ナー君!魔法もすぐに使えたわね!』


すげぇ。

俺は異世界に来て初めて魔法を使うことができて、興奮した。


その後、MPが無くなるまで魔法の練習を続け、ステータスに新たに魔法の項目が出ており、氷魔法と影魔法が追加されており、無事に覚えることができた。

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