第7話 オオカミ、進化を実感する

目を覚ますと、空が暗かったはずなのに明るくなっていた。あれ?いつ寝たんだっけ?

覚えてんのは、たしか親父にホブゴブリンと戦わされて……


あぁ!そうだ。レベルが上がって進化してそれから…

そこから記憶がないな。


『ん?ようやく起きたか。意外と遅かったな。』


辺りを見回すとホブゴブリンの死体から少し離れたところで親父が寝転んでいたのが見えた。


『最初の進化はかなり早いはずなのだが、一晩経ってしまうとはな。』


『最初って普通はどれぐらいで進化が終わるの?』


俺の進化は普通とは違ったらしく気になって聞いてみた。


『だいたいは最初の進化となると1刻ほどだったはずだ。ところでその姿はどうしたのだ?我とユキを足して割ったような毛色だな。我かユキの毛色になるはずだと思っていたのだが……』


『なんだっけ?レッサーセラドンウルフ?だったかに進化したらしいよ。』


親父に俺の進化先を伝えて見た。ブラックウルフやホワイトウルフも良かったがセラドンウルフはメリットしかなかったからなぁ。


『セラドンウルフ?なんだそれは。そんな種族は聞いたことがないぞ。』


親父は聞いたことがない様子で少し怪訝な顔で聞いてきた。俺の中では親父は何でも知っているんだけど、これは知らなかったか。


『確かユニーク個体って言った。』


『ユニーク個体!?なるほどな。だから進化にも時間が掛かったのか。』


親父は何やらユニーク個体は知っていた様子で納得していた。


『なぁ、ユニーク個体ってなんなんだ?』


俺は少し疑問を持った。ユニークだから、レアな種族になったんだろう。しかし、それだけで進化するための時間があんなに伸びるのか?


『詳しいことは分からん。だが、ユニーク個体は嵐を呼ぶと言われており、まれに現れては大きな事件を巻き起こしている。』


俺、この森で生きていくから特に荒らす予定がないけどな……


親父の説明を聞いてみたが、結局よく分からなかった。ユニーク個体はとにかく珍しいとことしか、分からなかった。


『それはそうと進化をしてみてどうだ?かなり気分がよかろう。』


『なんか今までよりも力が溢れてくる。』


それにステータスを確認して見るとスキルがいくつから増えていた。あれ?闇魔法がないぞ?


スキルの項目をいくら探しても【闇魔法】がなかった。代わりにとも言っているのか、【影魔法】があった。


『進化したのならその力を試してみたくはないか?』


俺がステータスを確認していると親父が何か嫌な予感をすることを言ってきた。

昨日までのことがあったため、俺が身構えていると、


『お前が寝ている間にホブゴブリンよりも強い奴を見つけてな。なに、少しばかりしか強さは変わらん。ただ、逃げられても困るのでな、ユキに見張ってもらっている。体の調子もいいなら行くぞ。』


親父の話を聞いて俺は逃げ出したくなった。見張ってないと?それって母さんの能力でも逃げられる可能性があるってこと?何が少ししか違うだ!めっちゃ強くなってんじゃん。


俺が怯えながら仕方なく親父についていくと母さんの姿が見えてきた。その隣には謎の巨大な氷のかたまりが見えており、時折り揺れては母さんが嫌そうな顔をしていた。


『ナー君!進化が終わったのね。前の姿も可愛かったけど、こっちの姿はかっこいいわね!』


母さんは俺のことを抱きしめながらいきなり褒めてくれた。かなり恥ずかしいが、嬉しいのもあるため、引き剥がすことはせずに母さんが満足するまでされるがままになっていた。


しばらくすると母さんは満足して一旦離れてくれた。


『気は済んだか?』


『えぇ、ナー君が進化してかっこよくなってつい興奮しちゃったわ。』


『気が済んだのならさっさと氷に閉じ込めているそいつを出せ。進化してどれぐらい力が上がったのか体感させる。』


『そうねー、こいつならナー君の戦闘スタイルとも相性が良さそうだし、過保護にならなくてもいいわね。』


そう言って母さんは氷を破壊し、中の魔物を出した。


そいつは熊だった。

しかし、通常の熊とは違い、腕からつたが伸びており、しかも動き回っていた。


『そいつはフォレストグリズリー。つたが厄介だが、そこまで速くはない。パワーと硬さはホブゴブリン以上だ。』


は?あいつよりもパワーもあってさらに硬いのかよ!

相変わらず親父の訓練のスパルタだった。

気がつくと親父と母さんは周りからいなくなっており、フォレストグリズリーがこちらへ向かってきた。


フォレストグリズリーは腕にあるつたを伸ばし、俺を捕まえようとしてきた。

俺はいつものように避けてみた。


すると俺の見ていた景色が急に代わってしまった。


は?

これ、俺が移動したからか?

俺の【加速】のスキルは現在レベル3まで上がっており、3倍まで速度を上げることができ、最大倍率で使用しているがここまで速くなるとは思っていなかった。


試しに【加速】を切って動いてみたが、それでも、【加速】を使った進化前の状態よりも速かった。


進化するとここまで変わるのか……


ステータスを改めて確認すると、素早さ意外にも全てのステータスが進化前より上がっており、魔法スキルもあるため、進化前よりどれだけ強くなっているのかが気になり、ワクワクしてきた。


すぐにフォレストグリズリーがやってくるのを匂いで検知し、【加速】スキルを使いながらフォレストグリズリーに突っ込んだ。


フォレストグリズリーはこっちが突っ込んでくるのにびっくりしおり、その隙に俺は【爪撃】を発動させながら爪による斬撃をあびせた。


ホブゴブリンの時はかすり傷を与えるだけで終わってしまったが、今回は……


俺の爪が当たるとフォレストグリズリーの腕には深々とした傷跡が残っており、フォレストグリズリーは悲鳴を上げていた。


進化すげぇ‥


俺は呆然としていた。

進化したホブゴブリンと戦い、進化による強化がどれだけなのかを実感した。


しかし、自分でも思っていた以上に進化による恩恵は凄まじかった。


フォレストグリズリーは俺を振り払おうと怪我をしていない方の腕で俺に殴りかかってきた。


俺は避けながら、魔法を発動させてみようとした。

しかし、何かが出てくることはなく不発に終わった。


ありゃ?【爪撃】みたいに念じるだけだとだめなのか?

まぁ、母さんや親父に後で聞いてみよう。


気持ちを切り替え、俺は【加速】を最大限に発動させ、爪と牙による攻撃を浴びせた。


フォレストグリズリーはたまらず、抵抗をしてきた。

つたを地面に刺すと途端に周りの植物が急成長し、俺のことを襲ってきた。


なんだこれ?

たまらずに俺はフォレストグリズリーから離れ避けながら植物を観察した。

どうやら魔法を使ったらしく、ある程度時間が経つと植物はどんどんと枯れていき、攻撃頻度も減ってきた。


今がチャンスだな。

植物の攻撃を避け続けているとフォレストグリズリーの動きは遅くなり、ついには止まった。


俺は足に力を込め、フォレストグリズリーの元へ一直線に飛びながらフォレストグリズリーの首を噛みちぎった。


【経験値を360獲得しました。】

【経験値が一定まで貯まりました。ナディーのレベルが1→8まで上がりました。】

【熟練度が一定に達しました。スキル〈爪撃〉とスキル〈牙撃〉のレベルが5→8に上がりました。スキル〈疾走〉のレベルが2→5へ上がりました。スキル〈爪術〉とスキル〈牙術〉のレベルが1→4へ上がりました。スキル〈危機感知〉のレベルが1→2へ上がりました。】

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