第4話 オオカミ、狩りをする

 親父に助けてもらった翌日。母さんが住処を破壊してしまったため、住処の移動になった。


『おい、昨日の遠吠えは何だ?二度もしてうるさかったぞ。』


『ごめん、昨日負けたのが悔しくて、次は負けない!って意気込んでた。』


 やはりうるさかったらしく、不機嫌そうに聞いてきた。「ステータスを見てた。」と、正直に話すこともできたが、まだ赤ん坊なのにどうして知っているのか?と怪しまれるため、誤魔化すことにした。悔しかったのは事実だから間違ってないけどね。


『あらぁ、燃えてるわねぇ。お母さん応援するわよ!』


 母さんは応援してくれたが、親父は鼻で笑うだろう。そう思っていたが、


『ほう、ならば移動中にやってくる雑魚どもは全て貴様に任せるとしよう。』


 意外とノリノリだった!全部って、流石にそこまでこないんじゃぁ…‥





『おい、さっそく来ぞ。構えておけ。』


 はっや、まだ話してすぐじゃん。どんだけこの森の魔物物騒なんだよ。

 俺自身でも、匂いで探してみると確かに近くまで来ていた。オークの件もあるし、どんな敵でも油断できないな。

 今度は油断せず構えているとゴブリンがやってきた。どうやら、群れからはぐれてしまったらしく一匹だけだった。親父と母さんに気圧されていたが、俺しか出てこないと分かると、襲いかかってきた。


 オークの時より遅かったため、問題なく避けることができた。攻撃もできそうだったが、俺はこれが初めての戦闘だ。親父の前ではああ言ったが、命を奪うことに慣れてないし、前世の価値観でためらってしまう。


 そのままためらい、避け続けると


『さっさと殺せ、出来ないのなら貴様ごと殺してもいいのだぞ…』


 親父から俺にだけ殺気が向けられた。

 思わず足を止めてしまうと、既にゴブリンが殴りかかっており、避けることができずにくらってしまった。


『この世は弱肉強食だ。弱いものは喰われ、強いもののみが生き残る。お前は何をためらっている?生きたくないのか?死にたいのならそう言え、特別に俺が殺してやろう。…しかし、そうでないというのなら、相手を喰らえ。常に弱者を喰らい続けろ。それだけが生き残る方法だ。常に相手にとっての強者であれ。』


 中々にぶっ飛んだ理論だと思った。けれど、その通りだった。

 昨日、俺は弱いからオークに殺されかけた。そして今も、俺の心が弱いからゴブリンを倒せていない。俺はまだ弱者だ。俺はまだ死にたくない。死にたくない。なら相手を喰らうしかない。相手を喰らい続けろ。強者になるために覚悟を決めろ。


 すると、どうだろう。生き物を殺すのがあんなに怖かった。なのに、今はどうだ?怖くない。むしろ相手を喰らってやる。そんな気持ちしかなかった。


 パンチがあったため、またもや殴りかかってきた。俺は先ほどまでと同様に避けた。しかし、今度は避けるだけではなく隙だらけの腹に噛みつきをお見舞いした。

【牙撃】のスキルも発動させていたため、かなりのダメージが入ったらしく。悲鳴を上げながら転げ回った。

 相手に傷を与えたことに一瞬、次の行動をためらいそうにまだなってしまったが、生き残るため、相手を喰らわなければならないことを意識し、最後にまだ短い爪でゴブリンの心臓を貫いた。


 最初は抵抗していたが、次第に動きが小さくなり、ついには動きを止めた。


【経験値を8獲得しました。】

【経験値が貯まりました。ナディーのレベルが1→2に上がりました。】

【熟練度が一定に達しました。スキル〈爪撃〉・スキル〈牙撃〉のレベルが1→2に上がりました。】

【スキルを獲得しました。スキル〈爪術〉・スキル〈牙術〉を獲得しました。】


 ゴブリンを殺したと確認した瞬間、頭の中に声が響いた。


 レベルアップ!?今、レベルアップって言った?ステータスを確認して見るとレベルの部分が確かに1から2へ上がっていた。

 おお!やったぞ!

 レベルが初めて上がりめっちゃはしゃいだ。


『ふん、ようやく倒したか。我の息子ならばもっと速くやらぬか。』


 浮かれていると、親父から叱責が入った。

 いいじゃん。初めてだったんだから!

 そんな意味を込めて親父を睨んでいると、母さんがいきなり抱きついてきて、頬ずりをしてきた。


『さすが私たちのナー君!カッコよかったわよ!』


 母さんは褒めてくれた。けど痛い!力が込められ過ぎて死んでしまう!


 初めて生き物を殺した。罪悪感は確かにあるが思ったより少なかった。生き残るために戦い、その結果俺が勝った。これで弱者からは一歩抜け出せたと思う。でも俺はまだ弱いままだ。これからもこの世界で生き残るため、俺は相手を喰らい続けていこう。

 この戦いで新たな決意を胸に俺はこれからも生きていく。


 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 名前 ナディー

 種族 ベビーウルフ


 Lv.2


 HP15/15

 MP8/8


 攻撃力.8

 防御力.8

 魔撃力.5

 魔法抵抗.4

 素早さ.12


 ユニークスキル

〈加速.Lv.1〉


 スキル

〈爪撃Lv.2〉 〈牙撃Lv.2〉 〈夜目Lv.1〉

〈逃走Lv.2〉 〈疾走Lv.2〉 〈超嗅覚Lv.1〉

〈爪術Lv.1〉 〈牙術Lv.1〉


 称号

〈転生者〉 〈逃走者〉


 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る