第一章 転生
第1話 オオカミ、転生する
うん?ここはどこだ?
目を覚ますと、森にいた。俺は確か、女神とか言う女の子が目の前に現れて……
ああ、転生したんだったか。
辺りを見渡すと木しかなかった。やけに木が高く、見渡しても上が見えないものばかりだった。この森の木、やけにでかいなー。周りの木々を見上げていると俺はそう感じた。
呆然としていたがクゥーと自分のお腹が鳴った。周りに食べ物落ちてないかなぁ。探し初めて俺はふと気がついた。
あれ?俺、今何本足で立っている?何となく気にしていなかったが4本足で立っていないか?
俺は自分の手元を見てみるとその手には動物のような毛皮が付いており、手というよりは前足と言った方が良さそうだった。
「ウォン?(は?)」
そして驚きの声を上げてみたが俺の考えていない声が出てきた。
言葉を話せない?え?しかも、毛皮が付いていて、手というより前足……
俺は、急いで自分が『ナニ』になったのかを確認した。
そうすると種族と書かれている場所にはこう書かれていた。
——ウルフと。
ウ・ル・フ?
え?まさか、今世って人間じゃなくて……
俺はそのショックからしばらく動くことが出来なかった。
今世の自分の種族を知ってそのショックからしばらく経ち俺もようやく立ち直ることができた。
人間じゃなかったのには驚いたがよくよく考えてみれば前世の様に忙しくしなくてもいいのだから人間じゃなくて良かったかもしれないと思った。
色々考えていると空いていたお腹がさらに空いてきたため、急いで食べれるものを探すことにした。
歩いていると、様々な植物を見つけたが、食べることができそうなものは、何一つとしてなかった。少し落ち込みながら探していると、ようやく食べられそうな木の実を見つけることができた。
木の実を食べ終え、その場で一息つこうとした時、何かが急接近がしてくる匂いを察知した。
なんだ!?何がやってくるんだ?俺はとっさに身構えた。
しばらくしてやって来たのはオークだった。でっぷりとした腹、古びた木でできた荒削りの棍棒。濁った目、ゲームとかでも弱い部類の敵だったから俺はつい油断してしまった。
オークがニヤリと気味の悪い笑みを浮かべると、途端に激痛が背中に走った。
—痛い痛い痛い痛い痛い。え?何?何をされた?ふとオークの方を見ると棍棒を振り上げていた。あれで俺を叩いたんだろう。しかし、考えている暇もなく、二撃目が繰り出された。
痛い痛い痛い痛い。そう感じた瞬間、俺は一目散に逃げ出した。しかし、俺が逃げるのが楽しいのか、更に笑みを浮かべ、ゆっくりと追いかけて来た。
怖い怖い怖い怖い。俺の心の中を恐怖が埋め尽くしていた。オークってあんなに怖い奴なのか!?どこかに逃げないと!早く隠れないと!
様々な場所へと逃げた。林へ逃げた。岩場に逃げた。沼地へ駆け込んだ。洞窟に逃げ込もうと………
しかし、その全ては無駄だった。
林や岩場は破壊され、沼地では足を取られたため追うことができなくなっていたが、近くの岩を投擲してきた。洞窟に入ろうとしたらオークが何かを唱えたとたん、入り口が崩壊してしまった。
どこかに隠れる場所は!?
懸命に探してみたが周りにはどこにもなかった。
—終わった、俺が絶望してあいつの方を見ると大声で笑っていた。きっと俺を痛ぶるのが楽しかったのだろう。しばらくすると飽きてきたのか、棍棒を握り締め、今まで以上の力で振り下ろした。
あぁ、俺の二度目の人生はここで終わりか。これからだったんだけどなぁ。
そうして諦めて奴の攻撃を受け入れようとした瞬間—
—バキッ
オークの握り締めていた棍棒が砕けた。
え?
周りを見回して見ると、そこには今までいなかったものがいた。一匹のオオカミがそこにたたずんでいた。氷のような冷たい目、どこまでも黒い漆黒、刃物のように鋭い爪、その目はオークの事を冷たく見下しており、自身がこの場の強者であることを示していた。
オークは、一瞬怯えた表情を見せたが、すぐに気を持ち直し、現れたオオカミへ殴りかかった。
まさに一瞬だった。
オークはその場に倒れ、その胸には鋭く切り裂かれた跡が深く残っていた。
—助かったのか?
そう思った時だった。
オオカミはこちらは顔を向け、
『この程度にここまで追い詰められたのか。我が息子として何とも情けないな。』
は?息子?え、まさか———
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます