翌日。

マイは自宅に帰った途端、制服も脱がずにベッドに横になった。

今日学校で、些細なことでアヤと言い争いになったのだ。

何故そんなことになったのか、思い出せない程些細な理由だった。


2人が険悪な雰囲気になったので、慌ててユイが間に入って事なきを得たが、マイは今でもムカついて仕方がなかった。

――あいつ、マジでハブってやろうか。

――ああ、ムカつく。けど、アヤなんかのせいで、気分悪いまま過ごすのも嫌だし。ゲームでもしよっと。

マイはポケットからスマホを取り出した。


***

――ちょっと。待ってよ。私またこっちに来ちゃったの?

――嫌だ。もう帰りたい。帰ったら、もう絶対スマホ見ない。

――あ、でも駄目だ。あっちのあたしは、こっちのこと全然覚えてなかった。

――そしたらまたスマホ見ちゃうよね。

――どうしよう。昨日どうやって出たんだっけ?

――そうだ。バッテリー切れそうになったんだ。

――あ、でも結構充電残ってたっけ。どうしよう。


マイがそんなことを考えている時、1つの浮遊物が体に触れた。

――なにこれ?グループラインじゃん。ハブマイ?

マイは恐る恐る中身にアクセスしてみた。


アヤ:じゃじゃん。新しいグループライン立ち上げまーす。

ユイ:なになに?

アヤ:マイの奴をハブるラインでーす。

ユッキー:おもしれー。マイ、マジムカつくからハブっちゃおーぜ。

ヨーコ:それ受ける―。

アヤ:でも急にハブると、ぎゃあぎゃあ騒ぎそうじゃん

ユッキー:いえてる。いえてる

ユイ:ほいで、どうすんの?

アヤ:だからさー。本人気づかないように、徐々にハブろーぜ

ヨーコ:それ受けるー

ユイ:賛成

ユッキー:サンセー

アヤ:気が付いたらハブられてましたーとか

ユイ:あいつ結構嫌われてっから、あたしらがハブると友達いないくなるんじゃね?

ユッキー:自殺したりして

アヤ:そんなん、こっちの知ったこっちゃねーわよ

ヨーコ:それ受けるー


・・・

アヤ:あいつ今日なんて言ったと思う?

ユイ:なになに?

アヤ:スマホになって、1日中TikTok見たいんだって

ユッキー:バカじゃねえの

ユイ:マイは疑う余地のないバカだと思います

ヨーコ:それ受けるー


・・・

アヤ:段々マイも気づき始めたかな?

ユイ:今日険悪だったもんね

ユッキー:あんた何で止めたん?

ユイ:もうちょい、いたぶりたいじゃん

ヨーコ:それ受けるー


・・・

――何よこれ?どういうこと?

――あいつら、寄ってたかってあたしをハブろうとしている訳?

――ぜってー許さん。明日学校行ったら、アヤの奴、ボコボコにしてやる。

――それより、このライングループ入れないかな?

マイは自分に纏わりついたものを、あちこち触ってみる。

すると、どこからか声が聞こえた。


「※※アプリが、あなたの位置情報へのアクセスを求めています。許可しますか」

――なにこれ?許可だ。許可。

すると突然漂流物の手ごたえが変わり、マイはそれの情報にアクセスできるようになっていた。

――やったじゃん。アヤの奴。見てろ。


・・・

マイ:おまえら、あたしに隠れて好き放題やってくれてんな

アヤ:なにこれ?

マイ:アヤ、てめえ、小学生の時にあたしにボコられたの忘れた?

アヤ:何でマイがいんの?バグ?

ユイ:ちょっと、これ変だよ

ユッキー:これやばくね?

マイ:ヨーコ、お前、受けるーって言わねえのか?

(全員沈黙)

マイ:まあ、いいや。明日学校行ったら、全員ボコってやんからよ

アヤ:ちょっと待ってよ。マジでマイなん?

マイ:そうですけどー

アヤ:何で?何でマイ入ってんの?そんなのおかしいじゃん

マイ:うるせえよ。それよりアヤ。明日学校休んでも、お前んちまで行くからな


・・・

「ははは。ビビってやんの。すっきりしたあ」

マイは自分がどこにいるかも忘れて、有頂天になっていた。

しかしその時マイは、自分が地獄に足を踏み入れたことに気づいていなかった。


***

「あれ、ゲーム終わってる。どうしたんだろ?」

「マイ。ご飯よ」

下から母の呼ぶ声がした。

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