第6話 予告状 【Chiens】
「ど、どうしてわかるの?」
「それは、」
悠太が答えようとしたとき、悠太のスマホが鳴った。
スピーカーにして私も聞こえるようにしてくれる。
……ジョニーさんからだ。
『やあ、2人とも。今どこにいるんだい?』
「「住宅街です」」
『ああ、そうか。今パトロール中だったね』
「誘拐未遂犯がいます」
『……ええ!?なんだって!?』
さっき起きた誘拐未遂のことを話すと、ジョニーさんはさすがにびっくりしていた。
「2人ともよくやった。近くにいる警察を手配したから、あとは彼に任せて2人は署まで戻ってくれないか」
「は、はい」
「はい」
通話が切れた。
「まさか誘拐犯に出くわすとはね……」
誘拐犯は相変わらず道に倒れている。
いや、誘拐未遂犯だ。
もしかして、さっきの煙、睡眠玉とかだったのかな。
「ここカメラとか無いのかな」
「無いことはないだろ。あの電柱にありそうだけど」
すぐ近くに電柱がある。
たしかにありそうだし、映ってるかもしれない。
少しして、手配された警察官が来て、事情を話した。
そして、署に戻った。
「2人ともお疲れ様。そこに座ってまずは休憩しようか」
ジョニーさんがお茶を用意してくれていた。
椅子に座って、ありがたくお茶をいただく。
「それで、話って何ですか?」
一口お茶を飲んだ悠太がジョニーさんに聞く。
ジョニーさんはタブレットを持って、画面を私たちに見せる。
「……ついに、怪盗Chatsが動き出したみたいだ」
怪盗Chatsという言葉に反応する。
「「か、怪盗Chatsが……!?!?」」
ついに、ついに……怪盗Chatsの仕事だあー!!
って、喜んじゃだめだ。
タブレットを見ると、画面には黒猫のイラストが背景の、1枚の紙の写真が載っていた。
『
By 怪盗
と、書かれている。
これって、挑戦状、だよね!?!?!?
わああ、何だかドキドキしてきた!!!!
あれ、何かとところどころカタカナでフリガナをふってくれているけど、これどういう意図なんだろう。
「これは今日発見されたものなんだ。まず、
城川中央ホール。
駅の近くにある小さなホールだ。。
そこの前に城川中央広場っていうところがあって、野外用のステージや、メルヘンな時計台があって、よく待ち合わせに使われる。
あそこで何かイベントをやっていたんだ……
「そして、気になるのは
「……
すんごい可愛い名前の月だけれど。
月が桃色に変わる夜ってそもそもないし、ありえないよね?
「……スーパームーンのことでしょうか」
「さすが悠太だ」
ジョニーさんが満足そうにうなずく。
「な、何それ」
「地球から見て満月が一番大きく見える現象のことだ。天文用語ではないから統一的な定義はないが、年に12~13回は見られる、と一般的に言われているんだ」
あ、聞いたことあるかも!!
ニュースで見た記憶がある。
あれって、月が一番大きく見える現象のことだったんだ。
つまり満月ってことは、潮位にも関係してくるってことなのかな。
「そして、今月—―4月はピンクムーン。日本語にすると桃色月。つまり、明日のことだな」
悠太がスマホで調べながら言う。
へえ、今月はそういう名前のスーパームーンなんだ……って。
「明日!?!?」
急すぎるよ!!
「3日限定のイベントの最終日、か」
今度はイベントのことまで調べている。
……悠太、作業早すぎない?
「依頼主はイベントの主催者だ。明日の夜は他の部隊も手配して警備してもらうことになった。そして、咲良、悠太。2人も現場に行って警備をしてもらう」
「お任せください!」
「その意気だ。急で申し訳ないのだが、明日のお昼ごろに打ち合わせの予定があるから学校が終わり次第向かってほしい」
「「はい!!」」
ま、まさか本当に依頼が来るなんて思ってもいなかったよ!!
楽しみすぎる。
やっと、本来の仕事ができる……!!
「おい、遊びじゃないからな」
悠太がジト目で言う。
「わかってるよ!」
わかってる。
……けど、嬉しいの。
ひいおじいちゃんが果たせなかったことをやっと私が担当することになったんだから。
私がひいおじいちゃんの代わりに、怪盗Chatsを捕まえてみせるんだから!!
「今までの仕事、頑張ったからじゃないか?」
ジョニーさんがパソコンから顔を上げて言う。
……今までの仕事。
最初は横断歩道。
白い子猫が飛び出して、そしたら少女も子猫を助けようとして、ギリギリで助けることができたこと。
ながら運転をしていた人はあのあと逮捕されたんだって。
そして今日の誘拐未遂。
謎なところは多いけど、犯人は逃げなかったし、女の子も無事だし……ってそういえば!!
「悠太!さっきの話の続き!」
「うわっ!何だよ!!さっきの話?」
あれ、今悠太何見てたんだろう。
見ていたスマホを慌てて隠してたよね。
「何で女の子が無事だったのか分かったのって話!」
「……ああ、あれか」
なぜか苦い表情になる。
「俺もそれ、気になるね。今、無事だったっていう連絡が来たんだけど」
ジョニーさんが興味深そうに言う。
「あー……俺の憶測なので真に受けないでくださいね」
悠太はスマホを操作して、ある画面を見せた。
有名なSNSの投稿だ。
題名は『怪盗Chatsを見つけた!』。
画質が悪い写真が投稿されている。
その下にも同じような投稿がある。
「これが、何?」
「最近怪盗Chatsらしき人物が目撃されているのは知ってるだろ」
今度は拡大した写真を見せる。
画質悪いから全く見えないけれど……見えるのは、頭が金髪で、全身真っ黒。
マントか何かかな?
頭の上に黒いものが2つ乗ってる。
時間帯は夕方みたい。
「これが怪盗Chatsだという証拠は、こいつが走っている場所が家の屋根だということだ」
「屋根!?!?」
拡大していた写真を元に戻すと、本当に家の屋根を走っている写真だった。
「合成とかじゃなくて?」
「これと似た写真が他にもある。どれも写っている家や建物はこの辺りや、隣町だけど、すべて合成じゃないことが分かっている」
本当だ。
どの写真も屋根の上にいる写真だ。
しかも頭は金髪だし、黒いマントも羽織っている。
「えー……」
この前ジョニーさんが記事を見せてくれたけど、まさか本当に屋根の上を走ってるなんて……どんな運動神経なんだろ。
「それと誘拐未遂、どう関係があるんだ?」
「咲良。俺たちが向かった時、煙が急に出てきただろ?」
「う、うん」
「……その時、何か見えなかったか?」
何か見えたか?
うーん、誘拐未遂犯が倒れたのは見えてたけど……
「……あっ!黒い影見えた!!」
「それだ。俺は一瞬だけ見えたんだ。その黒い影が家の屋根にいたところ」
「そ、そうだったの!?」
あ、今思えばあの時の悠太、家の屋根を見ていた。
ちょうど煙も晴れていたし、上が見えるようになってたのかも。
「……なるほど」
ジョニーさんが納得したようにつぶやく。
「実際に被害者からの情報では『いつの間にか誰かに持ち上げられ、屋根にいた。家の場所を聞かれ、教えると本当に家まで家を飛び越えて連れて帰ってくれた』、あるんだ」
「……ってことは……」
「あの煙は怪盗
悠太の声が低くなった。
「ジョニーさん。挑戦状が発見されたのはいつごろだったんですか?」
「4時30分ごろだったはずだ。依頼が来てから君たちに電話をかけたんだ」
「4時半……ジョニーさんから電話が来た数分前だな」
悠太が電話の履歴を見せてくれた。
ジョニーさんから電話が来たのは4時36分だ。
「もしかして、挑戦状を送った直後に女の子を……?」
「十分にあり得る。城川中央ホールからあの住宅街はそこまで遠くない。屋根を飛び越えて行けばすぐに着く」
やってることがわからない。
怪盗
一体、何が目的なのだろう。
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